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Time can only move forward
第267話-夢の終わり-
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身体に違和感を覚えた。目を開けるとそこは見知った部屋が広がっていた。
部屋の間取りにしては大きなテレビ。読みかけの雑誌の山。ベランダから見える外は真っ暗だけど、所々灯りのついた建物が夜を感じさせない。
目の前にはノートパソコンが一台メモ帳を開いている。メモ帳に打たれているのは適当な文字の羅列。規則性もなければ、日本語にも変換されていない。
身体の違和感の正体は腕にあった。キーボードを枕に寝ていたのか、腕にはキーボードの痕跡が残されている。
「寝ちゃってたんだ」
まずは乾いた喉を潤すためにノートパソコン奥に置いてあったペットボトルのお茶を開けた。いつも飲んでる安物のお茶の味が久しぶりに感じた。
ぬるいお茶が喉から身体を潤していくと意識がはっきりとしてきた。
「そうか。小説書こうとしてたら、そのままうとうとしてて」
明日が休みだからと気張って夜更かししながらでもシャバーニの二次創作小説を書こうとしていたのが思い出された。
「でもやけにリアルな夢だったなぁ」
自分がフランソワになってゲームの世界を冒険していた。そんなことありもしないのに。どこまで私は白銀の騎士団が好きなのかと自分で笑ってしまう。
「ホリナの料理美味しかったなー。レシピ聞いておけば良かった」
思い出されるのは五感の中でも一番楽しみを感じられると言っても過言ではない味覚。
ホリナの料理だけじゃない。アリスのお弁当もアンとユリィのお弁当も美味しかった。
「ヤンとかも実物見るとやっぱすごいなー。フランソワは美人だし」
自分の目から見たそれぞれのキャラクターは想像していたよりもかっこよく、可愛く見えた。もちろん夢だからと言ってしまえばそれだけなんだけど。
「夢……すごいなぁ」
語彙の無さに泣きながらも今の自分が言える最大限の言葉で気持ちを表した。
「夢……なんかじゃないよ。あんなの。現実だよ。本当の魔法」
本当の感想を呟いた。それを言い切る前に既に目頭は熱くなって、目からは涙が溢れていた。
悲しいからじゃない。すごい体験をしたことを夢で終わらせようとした自分に対する情けなさから涙が溢れた。
悔しさもあった。騎士団が揃ったのを見れなかった事、もうあの人達に会える事はないのだと言う事実。
色んな感情が混ざり合って私をぐちゃぐちゃにしている。
顔を抑えて漏れそうな声を遮断した。そうじゃないと夜中に思いっきり泣いてしまいそうになったから。
「そうだ」
思いついた事をそのまま行動に移した。
一度メモ帳を消して、再度立ち上げる。
そこに言葉を入れた。
「これで良し。ちょっと落ち着こうかな」
台所へと向かって牛乳を注いで電子レンジで温めてホットミルクにして飲んだ。
さっきまで色んな感情が混ざり合っていたのが嘘の様に落ち着いていた。深呼吸がここまで気持ちのいい事だと思ったのは生まれて初めてかも知れない。
「忘れないうちに出来るだけ」
ノートパソコンの前に座り直して、さっき私が少し打ち込んだメモ帳にカーソルを合わせた。
そこに映し出されているのはさっき思いついた長い様で短いタイトル。だけどこれ以上の言葉を思いつかなかった。
『悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました』
部屋の間取りにしては大きなテレビ。読みかけの雑誌の山。ベランダから見える外は真っ暗だけど、所々灯りのついた建物が夜を感じさせない。
目の前にはノートパソコンが一台メモ帳を開いている。メモ帳に打たれているのは適当な文字の羅列。規則性もなければ、日本語にも変換されていない。
身体の違和感の正体は腕にあった。キーボードを枕に寝ていたのか、腕にはキーボードの痕跡が残されている。
「寝ちゃってたんだ」
まずは乾いた喉を潤すためにノートパソコン奥に置いてあったペットボトルのお茶を開けた。いつも飲んでる安物のお茶の味が久しぶりに感じた。
ぬるいお茶が喉から身体を潤していくと意識がはっきりとしてきた。
「そうか。小説書こうとしてたら、そのままうとうとしてて」
明日が休みだからと気張って夜更かししながらでもシャバーニの二次創作小説を書こうとしていたのが思い出された。
「でもやけにリアルな夢だったなぁ」
自分がフランソワになってゲームの世界を冒険していた。そんなことありもしないのに。どこまで私は白銀の騎士団が好きなのかと自分で笑ってしまう。
「ホリナの料理美味しかったなー。レシピ聞いておけば良かった」
思い出されるのは五感の中でも一番楽しみを感じられると言っても過言ではない味覚。
ホリナの料理だけじゃない。アリスのお弁当もアンとユリィのお弁当も美味しかった。
「ヤンとかも実物見るとやっぱすごいなー。フランソワは美人だし」
自分の目から見たそれぞれのキャラクターは想像していたよりもかっこよく、可愛く見えた。もちろん夢だからと言ってしまえばそれだけなんだけど。
「夢……すごいなぁ」
語彙の無さに泣きながらも今の自分が言える最大限の言葉で気持ちを表した。
「夢……なんかじゃないよ。あんなの。現実だよ。本当の魔法」
本当の感想を呟いた。それを言い切る前に既に目頭は熱くなって、目からは涙が溢れていた。
悲しいからじゃない。すごい体験をしたことを夢で終わらせようとした自分に対する情けなさから涙が溢れた。
悔しさもあった。騎士団が揃ったのを見れなかった事、もうあの人達に会える事はないのだと言う事実。
色んな感情が混ざり合って私をぐちゃぐちゃにしている。
顔を抑えて漏れそうな声を遮断した。そうじゃないと夜中に思いっきり泣いてしまいそうになったから。
「そうだ」
思いついた事をそのまま行動に移した。
一度メモ帳を消して、再度立ち上げる。
そこに言葉を入れた。
「これで良し。ちょっと落ち着こうかな」
台所へと向かって牛乳を注いで電子レンジで温めてホットミルクにして飲んだ。
さっきまで色んな感情が混ざり合っていたのが嘘の様に落ち着いていた。深呼吸がここまで気持ちのいい事だと思ったのは生まれて初めてかも知れない。
「忘れないうちに出来るだけ」
ノートパソコンの前に座り直して、さっき私が少し打ち込んだメモ帳にカーソルを合わせた。
そこに映し出されているのはさっき思いついた長い様で短いタイトル。だけどこれ以上の言葉を思いつかなかった。
『悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました』
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