上 下
176 / 418
騎士と派閥と学園生活と

第146話-二人の思惑-

しおりを挟む
「いらっしゃい。もし良かったら私のお昼を少し食べてみない? とってもおいしいのよ」

 私の対面に座るエルンさんのお昼は可愛らしい箱に入った具沢山のお弁当に小さなパンがいくつか詰められた2段弁当だった。見かけによらず結構食べるタイプなのかも知れない。
 ただこの世界に来て未だにお弁当だけは見慣れない。何故ならお弁当に米がないからだ。米は有るがそれをあまり食べない食生活なのだと、私はホリナとの生活の中で聞いた。

「流石に悪いのでお気持ちだけ頂いておきます。ありがとうございます」
「そう。残念」

 いつものメンバーと違うお昼にやっぱり調子が狂う。
 エルンさんの隣ではジェフさんが少しのパンに紅茶を合わせて飲んでいる。この部屋に入るなり「お茶はいるかな?」と聞かれて困惑したけど、話を聞く限り紅茶が好きらしい。
 そして目の前の光景にこの2人のお昼は普通逆じゃないかと心の中でツッコミを入れていま。

「遠慮することはない。お茶も必要になれば言ってくれ。美味しいのを淹れるから」
「ありがとうございます」

 招かれる側というのも気を遣われすぎてしんどい。

「さて、お昼を食べながらですまないが、本題に入ろう」

 来た。意外にも口火を切ったのはジェフさんからだった。今朝からの空気だとエルンさんの方がそう言う役割が向いてそうに思えたからだ。

「フランソワさん。君は昨日リオル総長に呼ばれていたと聞いてね。恐らくだが、派閥に入らないかと言われなかったかい?」

 まるで昨日の会話を聞いていたかのような質問だ。ただ、その質問の意図が読めなかった。

「えぇ。まぁそんな所です」
「単刀直入に聞くが、君は入るつもりはあるかい?」
「悩んでいます。私はあまり……その派閥に興味がないので」
「まぁ、それが普通だろうね。一般生徒からしたらあまり関与しないものだ。それに1年なら尚更」
「すみません。私からも質問よろしいでしょうか?」
「あぁ、勿論だ。気になる事はなんでも聞いてくれ」

 ジェフさんの答えにとなりでエルンさんが少し笑った。

「では私も単刀直入にお聞きします。今日のお話と言うのは私にお二人の派閥からのお誘いですか?」

 私の質問に二人は顔を見合わせて笑った。

「笑ってしまって申し訳ない。その質問に対しての答えは『違う』になるね」
「ジェフ、貴方の答えは言葉が足らないわ。『何故私も含めて笑ってしまったのか』から答えないと失礼になるわ」
「そうだった。悪い所が出てしまった」

 二人は仲が良さそうに夫婦漫才のような受け答えが目の前で繰り広げられる。

「それじゃあ、何故笑ってしまったかと言う答えを私からも説明するわね。それは貴方が『二人の派閥』と言ったからよ」
「お二人の以外にも勿論派閥の方はいらっしゃると思いますが、ただお二人が代表をしているのかと言う意味で言ったのであって……」
「私達二人しかいない派閥って言う意味じゃないことくらいは分かっているわ。そこじゃないの」
「そこじゃない?」
「ねぇ。貴方からは私達がどんな関係に見えているのかしら?」

 エルンさんの問いかけはどこか艶かしく、年相応とは言えない雰囲気が醸し出されていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:4,215

この部屋はお兄ちゃん絶対王政だからな!

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

愛し合えない夫婦です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:594

そう言うと思ってた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:921

睦月の桜が咲き誇る頃

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

薔薇の寵妃〜女装令嬢は国王陛下代理に溺愛される〜完結

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:709

勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:4,669

還暦記念

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...