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ガルド城の秘密

第104話-甘い香り-

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「助けて頂いてありがとうございました。どうしてここに私たちがいるのが分かったんですか?」

 私たちがここに来ていることは誰にも伝えていない。なのにここにガルド公が来たことが不思議だった。

「結果から言うと偶然じゃな」
「偶然? 散歩でもされてたんですか?」
「いや、お主たちが庭に出たことを警備の者から聞いておってな。何か見つけたのかと思って向かって行った方向に来てみたら、岩のところに入り口のようなものを見つけて入ってみたと言うことじゃ。驚いたのぉ」

 笑いながら語るガルド公は楽しそうだ。

「そしたらガルド公でもここが何かは知らないと言うことですか?」

 改めて辺りを見回す。広い空間が上下に広がっている。城の方向にも伸びている空間、そちら側には明かりがないので暗くて見えないが、ここと同じ空間が続いているのだろう。

「知らんな。だから驚いとる」
「バレルさんは城からの脱出路じゃないかって予想してたんですが、どう思いますか?」
「可能性は高い。道も城の方に続いておるしな。妻ならば何か知っておったかもしれん」
「奥様ですか」
「儂は嫌われておったのかもしれん。良き夫として振る舞っていたつもりだが、ダメじゃったんだろう。前にも言ったが儂は婿入りじゃからな、秘密事を話すに値しない人間と見られていたのかも知れん」

 さっきとは逆に寂しそうな口調で話す。
 フォローすることはできる。だけど、そのフォローに効力はあまりないだろう。私は奥さんを知らないし、二人が今までどうやって過ごしてきたから知らない。だから私は一言「そうでしたか」と言うことしか出来なかった。

「しかしそれ故にここには何かあるかもしれん。儂は期待しておるよ。ここの奥には行ったのか?」
「いえ、まだです。行った所で魔法信者に襲われましたので」
「そうかそれは大変じゃったな。しかし、魔法信者か。ややこしいやつらが入ってきておったか」
「本当に。でも一概に皆んながややこしい人でもないとは思います」

 バレルさんの事を思い出す。元魔法信者だって言ってたけど、身体を張って私たちを助けてくれた。そんな人までややこしいとは一括りにはできない。

「ふむ。そうかも知れんな。これは失言だったか。儂も名乗ってはおらんが、『魔法』があることには期待しておるしな」
「そう言われたらそうですね。私も同じかも知れません」

 二人で笑いあった。確かに『魔法』がある事に期待しているのは魔法信者も私たちも変わらない。

「そしたら今から奥に行くのであれば儂も一緒に行ってもよいかの? 気になって仕方なくてな」
「もちろんですよ」
「ありがたい。所で話は変わるのだが、お主少々香水をつけすぎではないか。振りかけすぎるのも如何なものかと思っての。適度が一番じゃ」
「えっ!? 私ですか!? 香水なんて付けてないですよ。むしろ私もガルド公が付けているのかと」

 お互いの言葉に困惑する。

「お年のわりに甘い香りのする香水で決めてるなぁと思ってたんですが……」
「儂もてっきりお主がパーティーに向けて決め込んでおるのかと……」

 自分の腕を嗅いでみる。それでも特に香りはしない。鼻に飛び込んでくる香りは私の身体からではない。この空間に漂っているような感じがする。
 ガルド公も自分の身体を嗅いでいる。だけど、帰ってきた反応は首を横に振る否定のジェスチャー。
 と言うことは別の要因が原因になる。この香りが強かったのはガルド公が来たあたりからだったはず。だから私はガルド公の香水の匂いだと思った。
 となると私はもう一つの要因に目を向けた。それを顔の近くまで持ってきて嗅いでみた。

「これですね。この香りの原因」

 私の手にある鞘だ。鞘の中からこの甘ったるい香りが漂っている。
 
「なんじゃ、鞘に香水でも付けとるんか」
「さっき戦ってた人は剣に火をつけてたんです。その時に鞘から出した際に火をつけてたのでその仕掛けのせいかも知れません」
「変わったことをしよるの」

 鞘をよくみると一部が指で押せるようになっている。試しに押してみると鞘の内部で水が出るように粘性の液体が飛び出る。
 多分この液体が剣に火をつけるための役割をしてたんだろう。そしてこの甘ったるい酔いそうな香りの原因でもあった。
 そうこうしているうちにユリがバレルさんを入り口まで送って帰っきて、カルロスさんも奥で倒れていた男を抱えて戻ってきた。
 男三人を糸で拘束して私とユリとガルド公はさっき行けなかった奥へ。カルロスさんは入り口の見張りへと向かった。
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