上 下
519 / 744

着物で花見!

しおりを挟む
「チハルが楽しそうな事をしてるようじゃ。」
「ロイロちゃん戻る?」
 ロイロが言うと、ユーリンが答える。

「そうじゃな、クラータ付いて来るか?」
「え!?」
「メグに挨拶すると言っておったじゃろ?」
「・・・はい、大丈夫でしょうか。」
「エイダン殿が話を付けた、問題無い。」
「・・・はい、御一緒させて頂きます。」
「ロイロ様、姫をよろしくお願い致します。」
「わかっておる、お前達も大人しくしておくんじゃぞ。」
 ロイロは男達に声を掛ける。

「・・・ところで、バンカはどうじゃ?」
「意識が戻りません。」
「ほっとけばそのうち目を覚ます、モートが問題無いと言っておったからの。」
 バンカはモートに連れられ戻って来たが、白目を向いたままピクリとも動かなかった。

「よし、クラータ儂の背に乗れ。」
 そう言うとロイロはドラゴンに変化する、クラータは恐るおそる背に乗ると合図を送る。

『行くぞ!』
 ロイロは大きく羽ばたき浮き上がる、そして王宮に向かった。


----------------


「チハル、来たわよ。」
「いらっしゃいお母様!」
「・・・素敵ね。」
 千春は深い紺に花が散りばめられた着物、春恵は薄い水色に波紋のような模様が入っている、そして楽しそうにマルグリットを迎えた。

「チハルおねえちゃんきれい!」
「んふ~♪ありがとうユラ、ユラの着物もあるんだよ。」
 文恵は千春が小さな頃来ていた着物も持ってきていた。

「状態も良いからユラちゃんも着てみるかい?」
「うん!」
 ユラとマルグリット、付き人のエリーナ、アルベルは文恵に連れられ寝室に向かった。

「あ、来た来た。」
 千春はスマホを見ながら日本に戻ると頼子を迎えに行く。

「やほ~い、きったよぉーん。」
「らっしゃーい。」
「うわぉ!着物じゃん!」
「うん、ヨリも着る?」
「この前の有るんだよね?」
「あるある!」
「着ちゃおうかな!」
 キャッキャと楽し気に異世界に戻る千春と頼子、頼子はそのまま寝室に、ビェリーは応接室に向かいルプ達とキャッキャする。

「ビェリー、アレあるよな?」
「あるばーい、ついでにあっちの酒も持ってきたばーい。」
「でかした!」
「おぉー俺も買って来ればよかったな・・・今から買いに行くか?」
 源治は少し考えながら呟く。

「なに?おじぃちゃんお酒買いに行くの?」
「おう!」
「それなら配達してもらうよ、何が良いの?」
「配達?そんな事出来るのか?」
「できるよぉ~ん。」
 千春はポチポチスマホを弄ると画面を見せる。

「ほほぉ、この日本酒と芋焼酎をお願い出来るか?」
「チハル、ロイロが近づいてる、ウイスキーも頼んでくれ。」
「おっけ~。」
 酒を注文し少し待っているとユラと頼子が戻って来た。

「チハルおねえちゃんどう!?」
「きゃわ!」
 薄いピンクに可愛い花柄の着物を来たユラ、千春はスマホをカメラモードにし、パシャパシャと写真を撮る千春。

「私も撮ってよぉ~。」
 ベージュの生地に沢山の紫陽花が入った着物をぴらぴらと振りながら頼子が言う。

「へいへい。」
 千春は頼子とユラの写真を撮るとLIMEで皆に送る。

「お母様は?」
「今髪の毛結ってたよ、めっちゃビビるよ。」
「へ?」
「千春、メグさん来たわよ。」
 春恵が言うと扉が開かれる。

「うわぁぁお!」
「ね?凄くね?」
「・・・極妻!」
 千春は思わず言葉が出る、紫の着物に散りばめられた赤やピンクの花柄、ベージュと赤の帯、そして真っ赤な髪には綺麗に結い纏められている。

「どう?チハル。」
「綺麗です!」
「凄いわよね、キモノって。」
「いえ、お母様が綺麗です。」
「ありがとう。」
 少し照れながらお礼を言うマルグリット。

「御婆様このキモノの生地って何ですか?」
「これかい?絹だねぇ。」
「キヌ?」
「シルクなら通じるかねぇ。」
「はい、蜘蛛の糸ですね。」
「へ?」
 思わず声が出る文恵。

「こっちの絹って蚕じゃないんですか?」
「カイコ?」
「蛾の幼虫が作る繭なんですけど。」
「繭を作る魔物は居るわ、でも蜘蛛の糸なら取るのが楽じゃない?」
「こっちの蜘蛛ってどんなのですか?」
「えーっと、ユラくらいの大きさで森に大きな巣を作るの、一つの巣でこのキモノ1着分くらい取れるわ。」
「・・・想像しちゃった。」
「サブいぼ出たわ。」
 千春と頼子は腕をスリスリしながら言う。

「高いんですか?」
「高いわね、そこらの冒険者が着る鎧より高いわ。」
「ひぇぇ~・・・って冒険者の鎧値段知らない。」
「ま、千春ならいくらでも買えそうだけどねぇ~。」
 笑いながら頼子が言うと、LIMEの通知音が鳴る。

「・・・ミオ達来るって。」
「ミオとレナ?」
「うん、ソラ達も。」
「みんなで着物パーティーするかぁ。」
「何それ、何するの?」
「・・・抹茶でも飲む?」
 何も考えてなかった千春は適当に答える。

「チハル、仕立て屋を呼んで良いかしら?」
 マルグリットは千春と文恵を見ながら言う。

「着物作るんですか?」
「えぇ、素敵だわ、是非この国にも広めたいの、ダメかしら?」
「良いよね?おばぁちゃん。」
「構わないよ?」
「アルベル。」
「はい、直ぐに。」
 マルグリットは即アルベルに言うと、アルベルは直ぐに動いた。

「チーちゃんお友達も来るのかい?」
「うん!」
「それじゃ皆着物に着替えるんだねぇ。」
「おばぁちゃんも着替えたら?」
「お婆ちゃんはいいよ。」
「えー、みんなで着ようよー。」
 千春は援護射撃をお願いするように春恵を見る。

「お母さん、着ましょ。」
「しょうがないねぇ。」
「おばぁちゃんの着物は誕生日の時に持ってきてたヤツだよね!」
「ついでだから持ってきたけど、まさか着るとはね。」
 まんざらでもない様に文恵は微笑む。

「お手伝い致しますね。」
 サフィーナは文恵を連れ寝室に行く。

「さ~てと、おかぁさん着物でやる事って何があんの?」
「ん~、外でお花見?」
「お花見かぁ、もう葉桜だしなー、アイトネに言えばまた咲かせてくれるかな。」
『呼んだー!?』
「うわぁ!アイトネなんで着物着てんの?!」
『仲間外れヤだもん。』
「ヤだもんって・・・外で花見したいなーって話してたんだけど。」
『任せてー!』
「アイトネ様ぁ、そんなぽんぽん桜咲かせて大丈夫なんですか?」
 しょっちゅう桜を咲かせるアイトネに頼子が心配そうに問いかける。

『大丈夫よぉ~、必要なマナは私が送り込んでるし、この木って世界樹の種で育ってるから他の木とは違うもの♪』
 真っ赤な生地に大振りな花が咲き乱れた柄の着物を着たアイトネは、す~っと庭に出ると魔力を解放する。

『桜ちゃーん咲かせるわよー。』
「は~い♪」
 桜の精、桜が嬉しそうに返事をすると、桜の葉が消え蕾が現れる、そしてあっという間に満開の桜が咲く。

「・・・何でも有りだね。」
「流石女神だねぇ~。」
 千春と頼子は城の屋根ほどある桜の木を見上げながら呟いた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...