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第二章 あれれ?王都でドキ?はやすぎない?
ロクジュウ
しおりを挟む所構わずキスされたくはないので、口が開かないように手で軽く蓋をしつつ、兄抱っこで運ばれ中のハノエルです。
まだ、パーティーは始まりませんが、どうやら主催者はすでにいるみたいです。
後からパッパラパーンって、ラッパの音と登場じゃないんですねえ。
一際、人だかりが出来て賑やかな所が目下目指している場所のようです……行きたくないのこころ……。
しかし…視線が痛いな。……怖いです。
うちの兄も姉も素敵ですから仕方がありませんが、そんな目で見ないでくださいね?どんなに素敵美人さんでもあげませんよ?
しつこく言いますが、絶対に兄はあげません!
姉もあげたくありません。
そうですねえ、姉は兄以上な人だったら考えてあげます、だって可愛いんだから!
って、あれ?
兄以上な人物っていなくない?
じゃあ、姉は嫁にはあげられないなあ……。うん、あげない。
でも大丈夫!
兄と俺で養ってあげたらいいと思う。
だって、もうもう両思いなシスコンブラコンだもん。
ちなみに父と母は、恋愛結婚です。
まあ、身分がつりあったから変に反対はなかったらしいけど、どちらもモテモテだったから、お互い嫌がらせ的なことはあったんだよーって言ってました。
なので、姉は姉が好きな人ができるまでは結婚しろとは言わないって言ってるからね、姉が本当に好きだって人ができるまでは兄と俺が姉を大切にしてみせるよ。あげたくないけど。
大丈夫、体は虚弱でも頭がいいハノエルくんだもの。多少劣化したかもしれないが、俺ってこんなに頭よかった?って思うくらい、勉強できるんですよ!すごいね。
俺が読んでも脳味噌はハノエルじゃない、だから、読んでそのまま記憶されるんだよね。
まあ、だから貴族を覚えることができたわけだけどもね。
でも、さすが劣化型。覚えよくても、どうでもいいことだとすぐ忘れます!
だから、姉のためには頭脳でなんとかしますよ?
ね?お姉様。
それにしても……。
なんなの!
ざわざわコソコソと周りで声がする。
嫌な感じー!
いいたいことがあったら言ったらいいのに!
……って、そんなことをしたら不敬で捕まってしまうか!
あはは。じゃ、コソコソは仕方ないかもね。
だって、うちは公爵家……それも血筋からすると王族だからねえ。
あ、父様がね。
ちなみに母様だって伯爵家の令嬢なんだよー。それも代々騎士の総帥的な方を生み出してきた最強の家です。
だから、兄は血筋的にも強いんだよね。
王族は魔力が多くて、母の血は剣技の才能がある。そう、ぶっちゃけ我が家で一番強いかもしれないとか……。
それを両方兼ね備えたスペシャルな高いスペックで、イケメンの父と美女の母から美しさまで受け継いだ兄は、世界最高と言える男なんです!
わかった?
あばたもえくぼだと?
なまいっちゃいけないな?
お嬢さんたち?
マジでうちの兄にかなう男はいないのだよ!
兄と比べたら月とスッポンどころじゃないのだ!
神とみじんこ程の差がある。
それくらい兄は素敵なのですよ。
フンスッフンスッ、とつい脳内で興奮してしまった。
「我が弟よ、よくきたな。」
「はい、お招きありがとうございます。陛下。」
「えー、昔のようにお兄様と呼んでくれないのかい?」
「……お戯れを。」
公式の場では無理ですよ?いくら父様でもそんなことはしないと思うぞ?
「ケチだなあ。」
ケチとかそーゆーことじゃないんじゃないかなあ。
そこへすかさず、母様が口を挟む。
なんとなく、陛下の父を見る目が気持ち悪いからかもしれないなあ。
もしかして?とかおもうよね?
「陛下、本日はお招きいただきありがとう存じます。今日から娘もデビューいたしますわ。リオーラ、ご挨拶を。」
「はい、国王陛下。リオーラにございます。」
「初めてではないのだから、そんな堅苦しいのはいらんのに。伯父様とよんでほしい。お義父様にはなりそこねたが、呼んでくれてもいいのだぞ?」
さらに無理です。
このオヤジは何を考えてるんですかね?何度も言いますが公式の場です。もし、姉がそんなことをしたら、『まあ、流石は悪役一家よ?挨拶までアレなんて。とんだわがままですわね?陛下の冗談も通じないなんて。』と噂が広がり、姉の評判が下がるじゃないか!
それに結婚する気がないのに義父呼ばわりはできないだろう?
したくないですよね。
もちろん、姉は笑顔で否定してます。にっこりと氷の微笑は母様譲りですね?素敵です。
でも、絶対に向けらたくはありません(ガクブル)。
「ふふ。陛下、冗談もそれくらいになさいまし?皆が困っていますわ。」
王妃様(だよね?)ナイスフォローです!でも、目は笑ってないよね。
「……じゃあ、公式の場じゃなければよいか?良いな。うん。明日はまた登城しなさい。」
馬鹿なの?
「無理ですわ。」
にっこり、でもはっきり告げる姉は強いです。
「陛下。私どもにも予定がございますの。」
母様の絶対零度微笑炸裂!
おっと、王様、目を逸らしました!
「……さて、カレイドが抱っこしているのが、ハノエルだね。
赤ん坊の時に見て以来だが……実に可愛らしい。なぜ、今まで連れてこないのだ?全く、出し惜しみしおって。ハノエル、今日は城に泊まりなさい。おじさんと遊ぼう。」
「嫌です。」
即答しちゃったあ。
だって、つい答えちゃった。
だって、気持ち悪いんだもの。
ショーガナイヨネー。
「陛下、ハル、ハノエルは、私の婚約者ですし、体を壊す恐れのある場所になどおきません。ハノエルは体がよわいのですから。」
「安心してよい。城には優秀な医師がおる。」
だから、なんだと?
いやでござる。
「この子にはアズリアがついていますから。それにアズリア以上にハノエルを診れる医師はいません。」
そうそう。
アズリアには大変お世話になっているのです。
それに、ハノエルは兄がいないと生きていけないのです。
「しかし、本人は城にいたいかもしれないじゃないか?なあ?……ハノエルは、城にいたいだろ?」
えっ?俺、嫌だって言ったよね?
言葉通じてないの?
マジ嫌なんです!
「お家に帰ります。」
キッパリといった。
もちろん、兄にはしがみついたけど!
だって、なんか怖いし。
「いろんなものを買ってあげるし。そうだ!我が息子と結婚するのはどうだろう?」
キモい!
怖い!
いや!
「嫌です。」
兄にギュギュウッとさらにしがみつく。なんだ、このオヤジしつこい。
兄以外の男なんてお断りだ!
「陛下、ハノエルはすでにカレイドの婚約者です。他の男性の元にはおいていきません、たとえ陛下であっても!」
父がしっかりはっきり言い切る。
「だが、まだ結婚したわけではないだろう。」
いやいや、と首を振りながら兄にさらにしがみつく。
なんか、本当にこのオヤジがいやだ。
もう、すでに帰りたい。
離れたい。
ここに痛くない。
気持ち悪い。
「大丈夫、ハル。私がそばから離さないから。」
俺をギュッと抱きしめて、髪に何度もキスをくれた。
すでにハノエルの身体が震え始めていた。
「さて、挨拶は終わった。向こうでドリンクでももらおう。」
父が俺たちを連れて行こうとすると。
「王命を出してもいいのだぞ?」
「陛下?本気ですか?」
ヒュンッと会場の温度が下がった。
父と兄からものすごい冷たい魔力が漏れている。
あ、かなりご立腹の父様だ。
「いや、その。じょ、冗談だ。」
王様がかなり焦っている。うちの父様は怖いんですよー。
「……言っていい冗談と悪い冗談があります。この子たちに何かしたら、私の命をかけて後悔させて差し上げます。」
「わ、わかった。」
父と兄の魔力に会場は水を打ったように静かになった。
……さすがですね。
みんなガクブルじゃないですか!
でも、この二人を敵に回したら国が終わるんじゃないのかね?
父の私兵は強いし。
たぶんだけど、母の実家は父を好いているらしいし、俺たちのことがかかるなら国すら相手にするような実家なんですよね。
たまーに、濃いじーさまとばーさまが遊びにくるんだよ。
二人からも俺たち兄弟は溺愛されてるんですよ?
一度、俺が目の前で攫われかけたら……思い出すだけでちびりそうなくらい……でした。
というか、あの二人の私兵とレイズ伯父とか……国最強系がみんなアドレイド家に与するわけでしょ?
国王様、負けるよね?
まあ、国の王が腐ってるならいらないけどねー。
まあ、なんだ。
父と違って好色そうだったし、もしかしてハノエルの変態ホイホイに引っかかっちゃった?
だって、いくら後継が必要でも奥さん五人もいらなくない?いるんだよ、あの王様は。あ、一人幽閉されたから四人か。一応、第一王妃は母の友達だからマシな人かもだけど。母は、自分の友達だからって信用してはダメよ。と言っていたから……なんか含むものがあるのかもね。
でも親がそんなオヤジじゃ、ディンゲルみたいのができるんじゃないの?
あー、やだやだ。
ちなみに父は母様一筋です。
あ、音楽が鳴り始めた。
始まるのかなあ。
『それでは本日は、花の宴。春の宴にございます。各テーブルには宮廷料理人による花に因んだ料理、庭には花をライトアップした可憐な花園を銘々お楽しみくださいませ。
開始ご挨拶を陛下より賜りたいと思います。』
「皆のもの、楽しむがよい。今日、社交へとデビューする若き紳士淑女を暖かく迎えようではないか。では、乾杯!」
王様は気を取り直して、挨拶してました。
《《かんぱーい!》》
えっと、挨拶って乾杯の挨拶かよ!
って思う俺なのでした。
マジで宴会か?
宴……まあ、宴会かあ。
いや、なんかちゃう……。
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