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第二章 あれれ?王都でドキ?はやすぎない?
ゴジュウイチ
しおりを挟む『天使と魔王』
その昔、魔王は天使であったーー。
美しく、それでいて慈愛に溢れた天使がいた。
彼は誰にでも優しく、その手を差し伸べる。
美しい七色の翼は誰をも魅了するものだった。
七色の翼から落ちた羽は、持っている者を幸運に導き、病さえも治すと言われていた。
常に清浄な気を纏うその羽は、その天使そのものであったという。
その天使には、ただ一人愛する天使がいた。
彼らはいつも仲睦まじく過ごしていた。
彼の愛する天使は天上の光そのもののように金の翼を持っていた。
人々は美しく慈愛に満ちた七色の翼を持つ天使を『慈愛の天使』と天からの光を放つような金の翼をもつ天使を『光の天使』と呼んでいた。
慈愛の天使が全ての者に愛を与え、光の天使は正きものを導き悪しきものに裁きを与える天使であった。
天使二人は深く愛し合い、お互いが伴侶となった。
さらに絆は深く魂に刻まれていた。
ある時、光の天使を良く思わない者たちが現れた。
光の天使は裁きの天使。
公平で悪しきき心を許さぬ天使。
光の天使から慈愛の天使を離そうと試みたが、二人の絆の前ではどんなことをしても崩れることはなかった。
しかし、そんな悪しき心差しのもと人は国を作った。
そう、慈愛の天使だけを崇め大切にする国……いな、慈愛の天使を利用し自分たちだけのものにしようとしたのだ。
その国の王は邪魔な光の天使から慈愛の天使を我が物にしようと目論んだ。
しかし、二人の絆は強く……二人が離れることはなかった。
なぜなら光の天使は、いつも慈愛の天使を守り慈しんでいたから。
光の天使は強く、慈愛の天使に邪な心を持つものは決して近づけることはなかった。
しかし、慈愛の天使は困っている人や苦しんでる人をほっておくことはできない。
『大丈夫、人は優しい生き物だから。人は知恵を持つ生き物、獣ではないのですから。』
『知恵を持つからこそ、危険なのだ。』
優しい慈愛の天使は、人を信じ疑うことを知らない。
光の天使は、思う。獣よりも知恵をもつ人の方が危険なのだと。
人以外を蔑視し、自らを神の代弁者のように語る『人』こそが危険な生き物だと。
ある時、二つの事柄が重なった。
北では光の天使が捌かなければならない者がいた。それも早急に。
それを見越したように、南から慈愛の天使へ助けを求める声がしたのだ。
光の天使は、慈愛の天使に言った。
『私と一緒に北へ行き、その後に南へ行こう』
『いいえ、私は助けを求める声を無視できません。北へは、貴方が。南へは私が向かいましょう。』
『しかし、危険だ。』
『大丈夫、私はまた貴方の元へ戻ります。』
『だが!』
『大丈夫。』
仕方なく、二手に分かれてる天使二人。
それが彼の国の王の謀とは思わずに。
急ぎ裁く事柄を片付け、光の天使は二人の住まいに戻る。
だが、そこには慈愛の天使は戻っていない。
光の天使が南に向かうが、慈愛の天使は戻ったという。
しかし、光の天使は『嘘』を見抜く力をもつ。
問い詰めてると、王に脅されわざと怪我をして、慈愛の天使を呼んだという。
光の天使は、その王のもとにいくが王は会おうとしない。
光の天使は慈愛の天使の気をたどるが……何かに阻まれているのか、気をたどることができない。
光の天使は、城全てを力で読んだ。
すると一箇所だけ読み込むことができない場所を見つけた。
そこは王の寝室。
嫌な予感を振り切り、そこへ。
そこには、変わり果てた姿の最愛の天使が、今なお、男達に陵辱されている姿が!
光の天使は、怒りに我を忘れたように男達を光の剣で切りつけた。
欲に溺れていた男たちは逃げ惑う。
全ての男達を処分する。
『見ないで!』
『私の最愛の天使。』
『もう、私は天使ではない。』
慈愛の天使の七色の翼は無残にも根元から切断されていた。
美しい桃色の髪も短く切られていた。髪と羽には天使の力が宿るというのに。
それを無残に取り上げられて、さらには首に、足に、腕にと隷属の枷すらされている。
翼は、天使の命。
髪は、天使の力。
何という暴力。
光の天使は変わり果てた最愛の天使を抱きしめる。
だが、光の天使は全てを屠ってはいなかった。
ただ一人、王が生き残り光の天使に刃を向けた。
せつな。
光の天使を慈愛の天使が庇い、光の天使に向けた刃は深々と慈愛の天使の胸元にささっていた。
『わ、私が、悪くない、私のせいじゃない、わ、私じゃ、ぎ、ぎゃあああああああーーーーーーーー!』
光の天使の光の炎が王を焼き尽くし、その城さえも炎に飲み込まれた。
『逝かないで、逝かないで。私の唯一………。』
『……だいじょうぶ、…たしは、ま………の、も…………。』
ワタシハマタアナタノモトヘ……。
慈愛の天使の最後の声は、光の天使のもとに届いたのか、わからない。
『許すまじ、許すまじ、許すまじ、許すまじ、許すまじ、許すまじ……。』
天使は神の使徒。
命が消えた瞬間、すべては泡沫に消える定めをもつ。
慈愛の天使はその身を泡に変え、全てが散った。
光の天使のもとに残ったものは憎悪。
光は闇にかわる。
光輝いた翼は闇色に変わった。
金に輝く髪はカラスのように闇色に。
血の涙に濡れた瞳は赤く不気味に光出す。
光と闇は表裏一体。
そして慈愛の天使を失った光の天使は………。
光の天使はそこにはいない。
いるのは愛を失った闇色に染まった天使……否、魔王が誕生した瞬間だった。
魔王の人への報復が始まる。
全てが終わると魔王は自らも、闇へと身を投じた。
全てを滅亡に導き、世界は消滅え、そしてまた……世界は始まる。
それを見た神は嘆く。
天使を憂い。
人を憂い。
愛をなくした魔王すら、憂いた。
そして、神は魔王の魂と慈愛の天使の魂を新しい世界へと結ぶのだった。
いつか、巡り合い愛し合えるように願いを込めて…………………。
ある月の輝く夜、人は見たという。
七色に輝く光を闇を纏う金の光が追うのを。
二つの光はジャレ合うように東の空に消えていったという。
『愛しているわ。私のあなた。』
『愛しているよ。私のきみ。』
そんな声を聞いたという者もいた。
いつか、巡り合うその時……世界は光輝くのか?
それとも…闇に沈むのか?
……それは誰にもわからない。
これが史実であるのか、それとも妄想なのか………。
私は願う。
どうか二人が幸せになれるようにと。
ふう。
何というか……悲しい話。
でもこれはデッドエンド?
ハッピーエンド?
俺には区別できない。
だって、いつか出会うかもしれないし。慈愛の天使と光の天使の絆は切れていないのだから。
でも、結局は……人の愚かな欲が災いを招いたってこと?だよね?
なんか、引っかかる話だった。
翼とか魔王とかね。
読み終わり俺は、本を閉じて目を閉じた。ほんの余韻に浸りたくて。
すると、背中が熱く痛み出す。
痛い!
うぅ、と唸り始めてしまう。
「ハル!どうしたの!」
「い、たい。痛い、痛い。」
俺は背中の激しい痛みにのたうちまわることになった。
兄は、すぐにアズリアを呼びにいかせる。
何?なんなんだ?
肩甲骨のすぐ下を皮膚を引き裂くような痛みが襲う。
苦しくて痛くて、もがき苦しむ。
だが、兄以外が俺に触れることさえ出来ずにいたことを俺は後になって聞いた。
七色の光が俺を包み、誰をも拒んだという。
ただ一人、カレイド以外は。
一体、このゲーム世界に何が起きているんだろうか?
ハノエルにこんなことが、起きていたのかはわからない。
なぜなら、まだゲームは開始されないから。
こんなひどいことも起きていたなら、一言言いたい!
どんだけハノエルに試練を与えるゲームなの?
試練は、ヒロインに与えてください。と。
あ、二言以上だったわ。
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