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第15話:風雲児VS星帥皇
#00
しおりを挟む四年前、キヨウ皇国大学キャンパス―――
九月のキヨウは進学・卒業、そして入学の季節である。
まだ蝉が鳴き、夏の残り香がする晴れた日。初めて本格的にキャンパスを訪れたノアは、あどけなさの残る顔で、はぐれた友人を探していた。友人と言っても、ひと月ほど前、ミノネリラ宙域からこの皇都惑星キヨウに来て、入学の準備期間に知り合ったばかりの同じ一年生の女子だが。
戸惑い顔で辺りを見回すその姿は、如何にもな新入生そのものだ。少し離れた木陰には、護衛役のメイアとマイアがさりげなく立っているが、危険な場合以外は、極力口出ししないよう命じているため、友人の居場所を知っていても二人から教えてはくれない。
「きみ、新入生?」
不意に背後から掛けて来た聞き慣れない男性の声に、少し驚いて振り向くノア。
「は…はい」
そこに立っていたのは、身なりが良く、育ちの良さそうな、金髪の同年代の青年だった。胸元に付いているバッジの色を見ると、エメラルドグリーン…三年生である。それでも“いきなり初対面の女性に後ろから声を掛けて来るなんて…”と、ノアは警戒の光を瞳に帯びさせた。すると青年は、ノアのそんな瞳の光に気付いたらしく、「ああ、突然ごめん」と苦笑いで詫びを入れ、言葉を続ける。
「僕はルディル・エラン=スレイトン、次元物理学科三年。今日は新入生の案内係をしてるんだ。きみが何かを探してるように見えたから、声を掛けさせてもらったよ。でも、驚かせたみたいで申し訳なかったね」
スレイトンと名乗った青年は、左手の手の平を掲げて見せた。小さなホログラムがその手の平の上に立ち上がる。それを見ると学生課発行の新入生案内係証であった。立ち居振る舞いと丁寧な物言いは、貴族の子弟であろうか…そして自分と同じ次元物理学科の上級生。少し緊張気味にノアは応じる。
「ありがとうございます。こちらこそ失礼致しました。私はノア・ケイティ=サイドゥ、お言葉の通り新入生です。実は友人とはぐれまして―――」
▶#01につづく
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