実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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そして出会う俺とお前

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 「おおおぉ……いてててて……。」



 俺の怪我なんて気にした様子もなく目一杯の力で抱きつかれて俺はうめき声を出した。いくらマーニアムの加護で小さな怪我と神経系の毒を解毒したとしても、右肩の怪我は痛いのである。

 マーニアムの加護はロンバウトが触れた瞬間に消え去ってしまった。是非ともこの悪魔から助けてほしかったな…。

 痛みに耐える俺に気づいて力は弱めてくれても離れるつもりは更々ないらしい。ロンバウトは熱に浮かされたようなドロッとした目で俺を見つめてくる。

 いや、お前そんなキャラじゃなかったじゃん…。嫌味タラタラいじめっ子キャラだったじゃん…。俺はあからさまなキャラ変を望んでいないよ。



 「怪我をしているんだねアルディウス。直ぐに治してあげるから。」
 「………いやいや、触るなって。ってかお前なんて知らないし!やめて触るなって!」
 「お願いだから逃げないでアルディウス!頼む、暴れないでくれ!」




 他人のフリをしようと思ったけど駄目だった。向こうも俺がロンバウトや兄弟を認識したのをわかったようでにじり寄られ逃げ場がない。

 ロンバウトは相変わらずギュッとしてくるから痛いし、真顔で何を考えているかわからないエリンティウスは俺の右肩をずっと擦ってきて気持ち悪い。

 フィリスティウスは無言だが眉間に大きなシワを寄せて怖い顔。怒ってんのかな?身長と合さってかなり怖いのだが。



 「あぁ、アルディウス…こんな立派になって…。」
 「おい!変なところ触るな!変態、エッチ!!」
 「怪我を確認しているだけです。大人しくしていなさい。……無事で本当によかった…。」



 うわあああぁっ!やめろ!胸を弄る必要はないはずだぞロンバウト!エリンティウスも止めろ!ムチムチと揉んでも気持ちよくないだろうに!

 力が入らないのをいい事に好き勝手するロンバウトを引き剥がそうとするも全然勝てない。かなり体力を消費しているせいもある。撫で回されるボディは鳥肌まみれだ。




 「……とにかく、一旦ここから離れましょう。先程の特攻も一時しのぎにしかなりませんでしたね。」
 「よし、ではアルディウスは私が……って、おい!フィリスティウス!その役目は私のだぞ!」
 「………そんな決まりはない!行くぞ。」




 ずんむ、と首根っこをフィリスティウスに掴まれ担がれた。俺も中々に身長が高いはずなんだが……こいつ2m弱ありそうだもんな…。ぐえっ、肩がお腹に食い込んで潰れたカエルのような声が出る。

 びくっ、とフィリスティウスは驚くと同時に今度は大事に抱え込んだ。やめろ、やめてくれ。まさに幼稚園児が母親に抱きかかえられるような体勢に俺は死にたくなった。



 「なんだこの体勢は!降ろせ!」
 「お前は怪我をしているのだ。大人しくしていろよ?一気に抜けるぞ。」



 フィリスティウスがそう言った瞬間にぐらりと視界が歪み強風が当たる。フィリスティウスが走り出したのだと気づく頃には魔物なむれから抜け出していた。

 エリンティウスが認識障害の魔法を唱え姿を消し、上級の魔物を避けつつ森を抜け出す頃には辺りは静かになっていた。




 「ここまでくれば取り敢えず問題なさそうだな。エリンティウス、アルディウスの怪我の様子を見てくれ。」
 「右肩の腫れが酷いですね。早急に治療しましょうねアルディウス。幹部をよく見せてみなさい。」
 「はぅっ…あ、そんな装備をはぎ取るなど破廉恥な!アルディウスの肌がみっ、見えてしまう…!」
 「お前は何を想像してんだ!そう言いながら凝視するな!怪我も放っとけば治るから!撫で回す必要ないだろ!や、やめろってば!」



 
 
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