実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 「はぁーっ…はぁーっ…!!」




 全然減らねぇーっ!なんならどんど増えてるぞ!さすがダンジョン3段構え!種類の違う魔物が我先にと俺に向かってくるのを、必死に蹴落とし拳を叩きつける。

 最初は良かったんだ…いいペースだな、くらいで意外と余裕があると思いこんでいた。まさか、一気にこちらを殲滅しにくるとは思わなかった……ダンジョンの中にいるリーダーがそう命令を下したんだろうな。

 スタンピートを起こすのに邪魔していることを理解している。だから排除しようと一斉に俺に向けてありとあらゆる魔物が襲ってくる。苦手とするワームまで大量に襲ってくるとなると逃げ場がない。

 飛び出してくるワームを反射的に叩き潰すしか狩る方法がない。上空に逃げようにも飛び回るワイバーンが照準を定めこちらを狙ってくる。それとは別に小物といえど魔物に群がられるとたまったものじゃないや…。

 かすり傷ですら神経系の毒が含まれているのかジクジクと酷く痛む。自己回復を促すバフを体にかけているが、痛いものは痛い…!神経を直接えぐるような痛みが断続的に襲ってくる。集中力が続かなくなってきた。



 「たかが小物魔獣って舐めてたのは俺の方か…。」



 人工的に造られた魔素溜まりから生まれた魔獣達が、自然界で生まれたものと全く同じではないと予想はしていた。しかし、ここまで違うとは思いもしなかったな…。

 まさか1匹1匹に神経系を侵す毒持ちだなんて誰が想像するんだ。擦り傷だけでこんな酷く痛むだなんて…下位の冒険者には荷が重すぎる。残党刈りですら上位任務じゃないか、これでは…。

 一旦ここは引いて現状をギルドマスターに話さなければ。今になって少し冷静になってきたよ…いくら強くなったって、それを活かせる状況じゃないと意味がないね。意地でどうにかなる問題ではなかったんだ。

 しかし、逃げる隙を与えてくれないから逃げようがないな。さて、どうしたものかな…上空から急降下してくるワイバーンの背に飛び乗りながら考える。どうやって逃げ出そうかな…。

 少しでも魔物を殲滅するつもりがダンジョンから限なく生み出されるってわかったからここに長居する必要ないしな。

 ぐらり、ワイバーンが暴れ振り落とそうとしてくるのを必死に耐える。ここで落ちたら流石に死ぬかもなぁ…。



 「……って、死ぬわけにはいかないよな~。」



 俺を振り落とそうとワイバーンが大暴れしていると、暴れているワイバーンの背中に強襲してきた別のワイバーンによる体当たりがぶつかってきた。

 反応に遅れた俺はまともに食らってしまった。まじか!こいつら味方にも攻撃してきた!俺は吹き飛びながら驚愕したのだった。




 「や、やばい…やばいぞ……!」



 ひゅるるる~、なんて可愛い落ち方ではなかった。俺と一緒に体当たりされたワイバーンと下にいた魔物共々叩きつぶされた。なんてこった…。

 痛む体をなんとか立たせた頃には、周りは大小様々な魔物に取り囲まれていた。先程の攻撃で右肩を負傷したのか腕が動かなくなっている。

 転移魔法をしようにも、自己回復を促すバフに魔力を使いすぎたのか魔力に余裕が無くなっていた。そんなことにも気づかなかったとは……俺、マジで死んじゃうかも……。



 
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