実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 今日は少し曇っていて肌寒い。しかしそんな天気とは打って変わって相棒の籠手はしっかりフィットし、うっすらとマーニアムが放つ白い光を纏っていた。不思議と不安が無くなり地にしっかりと足がついて前を見る事ができた。

 西の森から嫌な雰囲気が漏れ、間もなくスタンピートが始まるだろうと直感した。そんな森の目の前で、俺は一人で立ち尽くす。



 「………よしっ!」



 俺は気合を入れて森へと足を踏み入れる。スタンピートが始まる前に少しでも魔物を殲滅する為に、周りに被害が出ないよう一人で行動する。

 いつもは小鳥の鳴く声がする穏やかな森も、今は薄ら寒く下品な魔獣の鳴き声が遠くから聞こえる。すでに魔素溜まりを中心に活発化した魔獣が繁殖しているのだろう。前に探索した時よりも数増えているのは明確だった。

 気配を消して森を突き進み、小型の魔獣を倒しつつ3つのダンジョンが立ち並ぶ中心地へとつくと、明らかに大型のダンジョンからうじゃうじゃと魔物が湧いて出ていた。

 ………どうやらあの1番大きなダンジョンがリーダーのようだ。あの中に司令塔となるボスがいる。直感でわかる。

 リーダーのダンジョンの両隣には側近のように立ち並ぶ一周り小さなダンジョンが2つ。一周り小さいと言っても大型ダンジョンには変わりない。自然に起こり得る魔素溜まりではあり得ない光景に、自然とゴクリと喉が鳴った。

 一旦その場を離れて少し開けた場所で一息つく。別に恐怖を感じているわけじゃない、緊張しているんだ。あんなものと戦えるなんて…高揚感に心臓が激しく鳴るのがわかった。



 「保護者達が来てから強くはなったが力を使う機会がなかったしな。調度いい、鬱憤晴らしを含めた大暴れだ。」



 制御していた力を開放して体にエネルギーが巡る感覚に背筋に鳥肌が立つ。快感に近い体中をかけ走る力の源を感じながらブルッと震えた。

 忘れてはいけない、俺はαだ。支配するものである。共にいる仲間ではない者には容赦しない。魔物となれば意思など関係ない、蹂躙するのみだ。

 隠していた気配を開放し、辺りに湧き続ける魔物が俺に気づいて飛び掛って来る。ぶっ殺してやる。



 「うおおぉぉぁあああーっ!!」



 腹の底から雄叫びのような威嚇の声を出せば敵と見做され魔物が次々と自分に襲い掛かってくるのがわかった。俺は興奮したまま両腕に力を込めて魔物を薙ぎ払う。

 手に馴染むアムの神籠手はうっすらと紫電を帯びており俺の魔力と良く馴染んで自由自在に操れるようだ。マーニアムの髪が蔦のような柄になった影響か、紫電は蔓のようにも扱えとても靭やかだ。雷を纏ったムチのようにも見える。

 これならば広範囲の攻撃も力任せにしなくてもいいな。無駄に破壊しなくて済む。これはとても有り難い。マーニアムはやっぱ最高だな。

 暫くは同じ場所で魔獣を狩り、ある程度数が減ったのを見計らって徐々に移動していく。満遍なく魔獣を刈狩っていればいつの間にか真夜中だった。マーニアムが籠手に加護を付けた影響か夜目がとても効く。

 これならまだまだ戦えそうだな。俺はマーニアムに感謝しながら魔物狩りを続けるのだった。



 
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