実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 状況がよくわからないけど、良くない状況だと言うことはひしひしと伝わってきていた。公爵家の当主2人が頻繁に大森林ギルドに来ているということに理解が追いつかない部分もあるが、この様子だとまた来る可能性がかなり高い。

 ってか直々に来ないでよ…普通部下とかでよくない?なんで忙しい公爵家の仕事やりながら空いた時間使って大森林ギルドまでくるの?

 ギルドマスター曰く、近くの高級宿の一室を年単位で借りているらしい…そこに転移の魔法陣を引いてそこから出歩いてるとのことだった。ロンバウトとフィリスティウスが協力関係にあり俺の捜索をずっとしていた、とのこと。いやそんな頑張らなくてよかったんじゃない?死亡届とか出てるもんだと思ってたよ俺は…。



 「金の無駄遣いだなぁ。」
 「いつ帰ってくるかわからないからと引かなかったのだ…手紙を出す、連絡もするからと言ったのだがなぁ…。」
 「そんな頻繁に来てるの?怖いんですけど。」
 「頻繁…早いと3日おきにくるから仕事も捗らん!頼む、頼むからもうどうにかしてくれ…!」



 6年間の時間の使い方じゃない。項垂れるギルドマスターが可哀想だ…そんな頻繁に来ていたことをタサファン達は知らなかったらしく白かった顔が青白くなってしまった。いや、それは俺がなるやつ。

 話を聞いていた保護者達は意外にも冷静で特に興味がないのか俺の背後で夕飯の話し合いをしている。今日はどうやらシチューらしい。シチュー美味しいよね。



 「そんな追い込まれてるなんて知らなかったよ。迷惑かけちゃってごめんな。」
 「いや、私も少し舐めていたんだ…まさかこんな頭のネジが飛び交っているとは思わず…。」
 「こうなったら、直ぐに連絡して俺が頑張って黙らせるからね!手紙出しちゃっていいよ!」
 「本当なら守ってやりたいのだが、私には荷が重すぎたようだ。……あぁ、そうだ、それは持って帰ってくれるか?」



 ギルドマスターが指差した書類の山。なにこれ?仕事手伝ってってこと?俺って事務とか向いてないからね?



 「アル、お前宛の文だ。」
 「………はぇ?この山が?」
 「そうだ!半分以上はジャンクオリアー卿からだ!こんな山が毎年出来上がって…。ううっ…!」
 「泣かないでよアントムさん!」
 「因みに今まで来た手紙は全て封を切らずにお前の家に押し込んでおいたからな…確認したければ帰って見ろ。」
 「いやマジで嫌がらせだよ、ただの…俺の寝るスペースある?」
 「辛うじてある。」
 「一室埋まるくらいあるってこと…そ、そんな…!全部燃やさなきゃ…!」
 「そんなことしてみろ、バレたらもっとトチ狂うからやめてくれ。私の仕事がさらに増える。」




 げっそり、そんな表情のアントムさんから腹の底から出る大きなため息を聞いて、冗談に聞こえず俺の顔色が悪くなる。



 「そんな心配せずともアルディウスはもう十二分に人の領域を超えておる。肉体的な心配はせずとも大丈夫だろう。それより、いつから冒険者として復活するのだ?」
 「いや他人事のように言いやがって…まぁ現状どうしようもないから様子見するか!仕方無い、仕方無い!」
 「……起伏が激しくなったなアル。」
 「諦めが肝心ってこの長いリハビリ生活で学んだからな!」


 
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