実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 久しぶりの我が家はギルドマスターが言っていたように、部屋の中が手紙で埋もれてた。律儀にキッチンにはフィリスティウス、リビングはロンバウト、寝室にエリンティウスと分けられていた。

 ロンバウトからの手紙はフィリスティウスの3倍近くあった。見た瞬間に鬱になるかと思った。だから一番広いリビングが保管場所になってんだなこれ…。

 いや、本当に床見えないくらい手紙きてんだけど!なにこれ、全部の中身確認したほうがいい!?絶対に嫌なんだが!送り返しちゃおうかな。

 計6年分の無駄紙である。一筆かいて亜空間魔法を掛けた封筒に無理に押し込んでしまおう。簡単に「迷惑です、二度と送らないでください。」と、1文をそえた手紙も同封しておく。出来れば二度と会いたくもないしな。

 とにかく、ここは生活空間なんだから無用な紙切れは必要ない!俺は直ぐに大量の手紙をそれぞれ魔法を掛けた封筒に吸い込ませにかかった。

 ずぞぞぞぞーっ!と、まさに掃除機がホコリを吸い取るように手紙が封筒の中に消えてゆく。量が多いので時間はかかったものの、ちゃんと最後まで片付いた。間に合ってよかった~!



 「しっかし、とんでも無い量だな…異様な力を感じるぞ。」
 「これは~、……なんというか、……ん~と、あれだ。怨念みたい、だね~?」
 「怖いこと言わないでコハク…。」
 「だがなぁ、微量だがそれぞれの手紙には力が篭っていた。魔法ではなく、力そのもののような…。」
 「人間は~、意志の力が強い子が多いでしょ~?だから~、これはきっと~無意識の賜物だね~!」
 「アルから聞いていたような人間ではなかったと言うことだな。うっ、…一つの封筒に纏めたら力が増大している!」
 「一つの呪いになっちゃったかな~?」



 コクヨウとコハクがまじまじと封筒を見て呟く。そう言われてから自分も封筒を見たら、なんかモヤってるから、あれが呪いなのか…と、納得してしまった。

 だって醸し出されるオーラが気味悪いんだもん。賜物って表現したコハクにはどう見えたんだ、この封筒…。



 「このまま送り返すと、呪い返しになっちまうぞ?いいのか?」
 「いや、いいでしょ。こんなもん送るのが悪い。」
 「すご~い、普通の人間だと魂歪んじゃうかもね~。でもまぁ~、自分から出たやつだし~、大丈夫かな~?」
 「受け取った際に呪い返しより強い意志があればなんとかなるだろう。…しかしまぁ、長く人間を見てきたが、ここまで強い意志の塊は久方ぶりに見たな。」
 「コハクはこんな強いの初めてみたよ~!純粋な気持ちがここまで来ると呪いになるなんて~、知らなかったもん~。」
 「普通はならんのだ。アルへの執着は本物ということだな。……さて、掃除をするか。」
 「そうだね~、埃いっぱいだしね~。」



 話を切り上げて掃除を始めるコクヨウとコハクだが、頼む待ってくれ!そんな怖いものここに置いたままにしないでくれよ!徐々に気味悪いオーラが消えて、ただの手紙のような見た目になったが、これただ中に封印されただけなのでは……。



 
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