泡沫の欠片

ちーすけ

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波状攻撃爆散

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寝たの、2時過ぎ。
清牙と欠食児童に食べさせて片付けて、朝の仕込みして。
そして寝たと思ったら、清牙に起こされる、現在6時。
まあ、これは私が起こして言ったからだけど。
朝御飯、私が用意しないと、子供達が朝御飯食べられないし。
睡眠時間数時間で、元気に走りに行った清牙と夏芽君。
マー君はやることがあると帰宅。
ゆっ君は寝てないらしく、事務所で何やら健吾君と密談。
コーヒー置いて、私は朝から米洗って味噌汁作って、ホウレン草茹でてシラス敢えて、はんぺんのはさみ揚げと、ゴボウと人参と油揚げのきんぴらに、寝かせていた唐揚げ揚げて、おにぎり作っていたら、ゆっ君と塩野君合流。
「清牙におにぎりって、キリがなくない?」
言うな。
それは分かっている。
「数確保して、残りが清牙。足りなければ外に行かせる」
「梅はないんですね」
塩野君の残念そうな顔に、溜息。
「希更、酸っぱいの苦手なのよ。清牙もだし、多分玲央君もじゃない?」
梅はないけど、ツナマヨに昆布に、鮭、肉味噌に、おかかあるし、十分じゃね?
「明太は?」
ゆっ君?
「これ以上は無理」
「ロシアン形式で行くの?」
まあ、3人でそれぞれ握って皿に並べていくので、どこに何が置かれるかは分からない。
それはもう、運として諦めて貰うしかないだろう。
でも、一升炊きのおにぎり。
終わらねぇ。
護衛組が起きてきて挨拶しながら、おにぎりの終わりが見えてきた頃に、少年達が起き、なぜか璃空君が単体現れるのだ。
「カエちゃん!」
おにぎりで手がふさがった私に抱き着くより早く、ゆっ君に蹴り転がされる璃空君。
蹴るというより、軽く足首で巻き込んで、給湯室外迄押し出された。
これ、玲央君もやられた後なんだよね。
だから、給湯室は実に静かな空間を保てていたんだけど。
「いじわるなオジチャンがいる」
「璃空。その人、清牙さん倒せる上に、凄腕のプログラマーだから。現実とネット上で殺されるから」
慧士君の忠告に、実に嘘っぽい泣きべそ顔を浮かべる璃空君。
「カエちゃんのおっぱい」
「清牙さんより手強いんだよね」
玲央君、まだ、諦めてなかったの?
だから、入り口で子供達が煩い。
「ほら、そろそろ希更起こして…ゆっ君も行って。玲央君と璃空君2人だと、希更が大泣き…」
気が付いたら、子供達はいなかった。
それを見ながら、おにぎり作り終えたゆっ君と、慌てた塩野君が動く。
塩野君は慌てて駆けて行き、給湯室出たゆっ君が立ち止まる。
「遅かったみたいだから、制裁しとくね」
笑顔の言葉の直後「みゃああああああ!!」とまたもや奇声が。
叫ぶ前に気付くのはさすがなんですが、もうちょっと、先読みして動いて欲しかったと云うか。
その直後「「いっったあああああ!!」」と、少年達の叫びも。
これで反省…する訳ないよねと、次はウィンナーに取り掛かったのだけど、なんか、今日は…今日も、起こる日だったらしい。
事務所から突如出てきた健吾君に言われ、睡眠待機だった浅見さんと、希更世話係の塩野君が慌てて出て行ってしまう。
何事か分からないまま、小会議室にご飯を運び、大会議室畳や布団を片付けていたら、なぜか、タテ抱えた別所さんと、拓斗抱えた夏芽君が走り込んできた。
「何事?」
タテは抱えられていた筈なのに、全力疾走していたかのように息を切らせており、夏芽君に抱えられていた拓斗は、下ろされた直後に、ぐったり座り込むタテに号泣して抱き着く。
それを見て聞いた子供達が、何事かと近寄ってきて、2人を既に知っている希更が、拓斗を抱え込んでいるタテの背中を撫でる。
その間にも、お水を持って来たらしい健吾君が加わり、それを受け取っても震えるタテは、ペットボトルの蓋も開けられないし、泣きじゃくる拓斗も泣き止まないし話せないしで、大混乱。
泣きじゃくる拓斗を兎に角引き剥がし、抱っこして動き回って宥めてから紙パックのジュースを口へ。
やっと、落ち着いてきたタテが、希更に支えられて水を飲めたところで、清牙が戻ってきた。
だけど、塩野君も浅見さんもいない。
「清牙?」
「シャワー浴びて、もっかい出る。だから、飯は残しとけよ!!」
ああ、なんか、大したことない感じなのか?
分からないまま、本当に瞬間で汗流した清牙が、健吾君連れてまた外に。
見送って、そのまま呆然としてても時間の無駄なので、残った皆で小会議室移動してご飯です。
水分取って泣きつかれた拓斗はお眠なので、希更がタオルケットに包んで面倒を見ている。
なんか、まだ震えているタテを無理やり働かせて、味噌汁運ばせて、皆でご飯。
タテは食欲はないらしく、味噌汁一口飲んでから、黙り込んだ。
そんな、初めて見る巨乳の萎れた姿に、悪ガキ2人も大人しい。
いつもなら、その爆乳に、嬉々として絡んでいく筈だが、2人とも基本は良い子だからね。
もそもそ食べる中、清牙戻る。
「楓、俺の味噌汁」
「はいはい」
清牙の味噌汁丼に入れて戻れば、当然のように清牙爆食い。
「清牙落ち着いて食べろ。そして、汚い」
「腹、減ってんだよ」
喋るな。
口から零れる。
そんな、いつも通り過ぎる清牙の姿に、安心したのか気が抜けたのか、子供達も普通にご飯を食べだした。
無くなる前に、健吾君塩野君と浅見さんの食べる分を確保してる傍から、盗られそうになりながらも、すっからかんに。
取り敢えず、食後のお茶を用意していれば、手伝いに来た慧士君と夏芽君。
荷物持ちは任せて、お茶を皆様に配膳。
一口飲んで、やっと落ち着けるかと思いきや、清牙がいつもの戯言を。
「楓。もっと腹にガツンと「出てけ」」
今から話聞くんじゃろ?
空気読めよ。
「夏芽君も足りなければ、清牙財布に食べておいで」
「それが、今、一応厳戒態勢中なんですよね」
健吾君による、外出禁止って、事らしい。
取り敢えず、間違いなくタテ絡みなので、タテを見る。
「ううっ、既に怒ってるし」
あ、なんか、いつもの感じに戻ってきたっぽい。
「少年達。これ、私の同級生で『鈴百合』Vの立山真由良ね」
「おっぱいでっかい」
璃空君、君は大人しいくらいで丁度良いんじゃないかな?
「希更ちゃん、これにその子乗っけるから」
そう言って、夏芽君が持って来た大きなクッションはどこから出てきたのか?
まあ、健吾君だし、深くは考えない。
なんか良く分かっらない通販グッズ、この事務所のどこかに大量に眠っていたとしても、私は驚きません。
そんな、食器類片付けた机の上で、クッションの上で丸まって寝る拓斗。
可愛いけれど、最後に会った時より、ちょっとやつれた感があって物悲しい。
大変だったんだろうなって事が、それだけで分かる。
さてどう切り出すかと思っていたら、軽いノックで、珍しい事に、返事も確認せず、健吾君が会議室へ。
「真由良さん。取り押さえたのは警察に差し出しました。貴方が放り出した荷物は、別働班に確保にも行かせました。警察が抑えている荷物にも、証拠品ではないので、返して貰う手続きは済ませました。後で塩野がまとめて持ってきます」
なんか、清牙見て大したことないと思ってたけど、結構な話なのか、コレ?
警察沙汰、またもや??
「タテ。自分で口開くか? 健吾君に事実ぶちまけられるのか? どっちがいい?」
「うっ、うううっ、きーちゃん!!」
「希更に助け求めんな!!」
「だって、カエちゃん怒ってるし」
「怒られるような事してんのは、てめぇだろうが。この衆人観衆の中、蹴り転がしてやろうか?」
「カエちゃん怖い!!」
「あ゛?」
「カエちゃんが」
「ぶっ」
そこで腹を抱えた、ゆっ君が、コンビニデザートシリーズ持って登場。
「立山も、相変わらずだね。カエに嘘泣きしてどうすんのさ」
「嘘じゃないもん! 涙出てるもん!」
「涙出てるけど、涙が出るほど悲しいとか、怖い訳でもないでしょ。どう言い訳しようか考えてるんなら、素直にそう言いなよ。カエが余計に怒る」
「平田弟、久しぶりに会ったんだよ! もうちょっと」
「はい、デザート選んで良いよ」
「優しさの意味が違う!!」
「マユちゃん、たっ君起きちゃう」
希更のダメ出しに、これ以上は無理を悟ったのか、素直にチョコクリームカップ選ぶ当たり、タテはタテだ。
「希更も選びな」
ゆっ君が差し出すコンビニ袋に、希更は首を傾げる。
「朝ご飯、食べたばっかりだよ」
「立山の所為で、あんま食べられなかったでしょ。食べた気もしなかったんじゃない? 甘いモノ食べて、元気出さないと、これからトンデモ話、聞かされるんだし」
ゆっ君の笑顔に、スポンジ生クリームカップ選んだ希更。
「カエは、モンブランで良いよね」
まあ、それは有難く貰うんだがね。
「ゆっ君、なんか知ってるの?」
「買い物ついでに、ちょっとお話聞いてきたから」
誰から?
まあ、それも突っ込まない。
そして、残ったプリンを抱えて座るゆっ君。
それを見て、永遠の欠食児童清牙が、不貞腐れる。
「ユキさん、俺のは?」
「男甘やかしてどうすんの?」
まあ、そう云う奴だ。
「はい! 僕子供です!」
璃空君の自己主張にも、にっこりバッサリ。
「後で、ちゃんと、相手してやるから。兄貴が」
そうか、そこも丸投げなんだね。
「ジャイゴ、説明宜しく」
そこも丸投げなのかと、集まる視線の中、健吾君は溜息を吐く。
「真由良さんは今、非社会的組織に、付きまとわれています」
「タテ?」
お前、なにやった?
思わず見れば、コレは本気らしく、ぷるぷる首を振る。
「私の所為じゃない! 気が付いたら売られてたの!!」
だが、内容が酷かった。
タテの話解読するよりはと、健吾君を見れば、また溜息。
「真由良さんが歌っていたバーのオーナー店主は、かなりのギャンブル依存症で、借金があり、その債権を老舗の暴力団体に売られ、当然膨れ上がった馬鹿みたいな金額に。その利子として、真由良さんの枕営業を強制させようとしました。ですが、それに気付いた真由良さんが、即時警察に駆け込み、逃げ回っていたようです」
すげぇ、話だな。
それこそ、ガンマンとか、そのレベルの時代の話の様な…。
血縁関係一切ない、保証人になった訳でもない、バーで歌ってただけの歌手に、そのオーナーの借金肩代わる理由も無ければ、返済責務も義理もない。
一応、ここ、法治国家の筈だけど?
何がどうなって、そんな話になるのか…。
「最後の挨拶行ったら、なんか、スポンサー候補を紹介してやるとか言われて、乗り気な振りして、なんとか後日回しにして、急いで、何もかも放り出して、拓斗抱えて警察に逃げ込んだ。だけど、音合わせとか、テレビ出演の準備とかあるし、私、一応芸能人として扱われて、女性シェルターには行けないって話になっちゃって。取り敢えず、そのヤクザを警察がなんとかしてくれるまで、逃げ回るしか出来なくて」
警察行政が秘密裏に女性を匿う施設、入れるならそこがまあ、安全なんだろうなって事は分かる。
相手はヤクザで、何時解決するかも分からない訳で。
だけど、タテ…テレビ出てるようなのを匿うのは、ちょっと無理なんだろうなって事も、まあ、分かる。
出入りがどうしても、悪目立ちするだろうし。
「拓斗だけでも、元旦那に預かって貰おうとしたんだけど、あっちにも、既に人が行ってて、むこうのお義母さんすごい剣幕で」
まあ、そら、暴力団が押しかけてきたら、怖かっただろうし、パニックにもなるだろう。
即警察沙汰にするにしても、その時はもう一日仕事。
警察が駆け付けるまで、気が気じゃなかっただろうし、追い返しても、警察の事情説明や、ご近所様への謝罪周りに…色々。
その日はそれで何とか出来ても、また来るかもしれない。
固定財産である一軒家持ちの、逃げ隠れ出来ない、決まった人間関係の地域中で起きた騒ぎだ。
周りは永遠に、それを言い続ける。
他人事なので、それはもう、面白おかしく好き勝手に。
そんな周辺関係の崩壊さえあり得る事態が、元嫁の所為ともなれば、その可愛くも思えない孫の所為で、これからも…とかなれば、叩き出されるのも、二度と顔見せるなと言われるのも、仕方がない訳で。
元旦那様にも、自分の息子の危機的問題でもあり、もう少し頑張って欲しかった所ではあるのだけれど。
結局は、自分の仕事だってあって、自分が子供の面倒、見れる訳じゃない。
そんな状態の自分の母親と、懐かない息子の精神負担を天秤にかけると…。
懐いているって云う、家事能力一切ない父親が頑張って、どうにかなる問題では、絶対にないし。
ましてや、実家に暴力団…そうなれば、自分の職場周りにも出てる可能性もある訳で、その周辺が安全とは言い切れない。
旦那自身が、そっちの対応で動かなければならない可能性が極めて高い。
そうなれば、社長の肩書のある元旦那は、親だ子供だのは言ってられないほど、忙しくなる。
当然、芸能人、事務所、その辺りで何とかしてくれる問題なんじゃないの…かと、まあ、思うわな。
もう離婚しているんだし、そっちで何とかしてくれって。
言いたくなる気持ちは、良く分かる。
つーか、だ。
「健吾君、連絡は?」
「真由良さんの歌ってたバーは、評判が宜しくない上に、経営も芳しくない。早々に、こっちから手切れで挨拶も終わらせていたので、そこで完結した話だと油断しておりました。やっぱり、業界歴が浅くて、足元見られていたようで、申し訳ありません」
まあ、健吾君は悪くないと思う訳だよ。
本当に、つい最近、業界で力をつけ始めた、二十代半ばの経営者。
見た目だけでも舐められてアレなのに、その本当の実績は、ちっさなバーのオーナーレベルでは、計り知れないだろうし。
何で、そんな場所で歌っていたのかとか、そう云う危ない話になってるんなら、なんでサッサと言ってこないのか、とか。
なにがどうあれ、全部、タテの責任である。
言ってやろうかとしたら、ゆっ君がやんわりと首を振る。
「カエの部屋がストーカーに襲われた事で、遠慮しちゃったか。今は希更もいるって? 立山、馬鹿だね」
ゆっ君、その通りだけど、オブラート。
言われる意味は分かっても、状況的に、責任の全くない希更が、困った顔してんじゃん。
「仕方ないじゃん! カエちゃん、なんか大変そうだし、厳戒態勢で外出られないって云うし! その上希更ちゃんも、私に曲書いてくれた所為で大変で、嗅ぎ回られてるんでしょ? どうして良いか分かんなかったんだもん! 警察があんなに、何もしてくれないとは、思わなかったんだもん!!」
警察が、助けを求めたら守ってくれるって言うのは幻想です。
警察は、助けを求めたら一応、駆け付けてはくれますが、それは連絡後、対処移動時間含めてなので、まあ、察する範囲です。
対処してくれるのは、その日その時、それだけ、限定です。
自分達は好き勝手、脅迫まがいに呼び出し強要するのに、こっちが緊急通報しないと、次はありません。
継続して動いてくれるのは、知名度がある権力者、有名な金持ち…等々、マスコミ動かせるか、警察上層部に圧力掛けられる大物だけ、です。
だから、犯罪者保護の関連だと、何かあればマスコミが煩いので、自分達の失態言われない様に、全力で継続的に匿います。
ですが、なんの知名度もなく、マスコミが動いてもいない一般人でしかない被害者如きでは、警察は継続警護なんて致しません。
マスコミ世間の注目が、すぐに次に移るどころか、報道すらされないだろう一般人は、その場限りで終了です。
下手すると、書類だけは書き残して、何かやった痕跡だけ残して、何もしてくれません。
酷い警察官だと、さっさと帰りたいと、忙しいをごり押ししてきます。
話もろくに聞かず、相手には言っておくからで終わりとかも、平気でやります。
犯人を捜そうとする事から、また犯罪を犯さないように警戒する事も、パトロール強化すらも、一切、してくれません。
その仕事を、マスコミが一切取り扱ってくれないので、頑張ってする意味が、無いんですねぇ。
何かしらやった、実際駆け付けた記録さえ残れば、それで終わりです。
書類書いて、署名貰えば、それでお仕事終了です。
毎秒ごとに通報あって対応しなければならないお巡りさんは、とっても忙しいのです。
誰かに叩かれ…職務怠慢として事件沙汰になる危険がある仕事以外は、基本、後回し。
後回しという名の時間放置。
全ての事件、事細かにやっている暇なんざ、到底ありません。
刑事さんになると、大物有名人に、マスコミ追っかけ案件が最優先で、他の事までやってる暇がありません。
話すら聞かずに、他部署に回されるだけならまだマシ。
追い出されて終了です。
一般人が追い出されたと騒いでも、マスコミはよっぽどの事が無い限り相手にしないのも、警察だって良く知っているので。
タテも芸能人枠なのですが、健吾君に頼らなかった為、マスコミが動く事は無く…。
ヤクザ関連でもある為、マスコミが飛びつきそうな…ものではある。
だけど、マスコミは無音。
でも、知名度無いし、自分達も存在全く知らないし、自称歌手の可能性が高く?
取り合えず、書類仕事だけで様子見。
公の捜査しなくとも、情操圧力の欠片も無いので、コレ、ほっといても大丈夫じゃね?
そのまま、警察が動く事は無かった、と。
被害者タテも、ただ逃げ回って雲隠れしており、知名度もあまりないので、マスコミにバレる事も、大騒ぎされる事も無く。
健吾君すら聞かされない、分からないままになっており、大きな動きも被害もなく、小さ過ぎる騒動として、静かに、面倒な話に膨れ上がっていった、と。
「だから言ったじゃん。警察に期待するだけ無駄。ストーカー被害で助け求めても、その場限り。次の日のパトロールさえ組み込んでくれないんだって。女性シェルターに組み込もうと努力してくれただけでも、その警察官、頑張っていたと思うよ」
普通のお巡りさんなら、被害届だけ書かせて終わりの筈だ。
いや、タテは芸能人枠なので、上司に確認くらいはして、担当の部署の連絡先くらいはくれたかもしれない。
その日その時で上司のサインも確り貰い、責任追及者を明確にはしていただろう。
自分は悪くない、言う為に。
それ以上の何かをする事も、有り得ないけど。
ひったくり事件ですら、被害者が一般人だと、警察捜査、全くしないからな。
何か他の事件で捕まったとかの犯人が、関連で分かったとかで、1年以上経って、被害者に急に連絡してきて「今すぐ来い」言うような組織だし。
こっちが仕事中とかお構いなし。
警察に協力するのが一般人の義務とか平気で言うのだ。
自分達は捜査すらしてくれなかった癖に。
何かの序に捕まえた結果でしか、ない癖に。
その上、1年以上経っている犯人の顔、服、髪型、明確に覚えてる筈ないじゃん。
断言、出来る訳ないじゃん。
髪型変わって、整形でもしてた日には、最早別人だろ?
それを使えねぇって、溜息吐くんだぜ、奴ら。
自分勝手も甚だしい。
警察何ぞ、どうしても困った時の、その場その時追い払う為に使うだけの、時間稼ぎ。
解決してくれるなんて夢空言は、ファンタジーだ。
そもそも、期待しない。
利用して、税金払ってる分使ってやる認識くらいで、丁度いい。
まあ、用もないのに呼ぶのはダメだけど。
それこそ、自分達は犯罪者すら探してくれない癖に、どうでも良いことで自分達は被害者だって、犯罪者に仕立て上げるの、大得意だし。
「一応、警察の立ち寄りホテル紹介して貰ったし、女性保護団体や暴力団追放団体や、その被害者の会も紹介して貰った。けど、そっちに匿って貰うとかした場合、私、一切歌手活動出来なくなっちゃうって言うし」
まあ、言われるだろうね。
露出してるから狙われる。
大人しく隠れろって。
他の、言われるままに隠れているしか出来ない人と、テレビ露出している人を、怖くて一緒に出来ないのは、当然の話だろう。
「だからなんで、私がダメなら、健吾君に言わないのっ」
ウチの社長。
所属ミュージシャン。
報連相、必須じゃん!
「だって、なんか、この子怖いんだもん!!!」
タテに思いっきり指さされて、呆れたように溜息吐いた健吾君。
まあ、そうだね。
腹黒いし、計算高いし、敵には容赦なく、何をしてでも、負債はきっちり回収する現実原理主義。
そう云うの、感じ取っちゃったか。
そう云うところがもう、清牙と同じなんだよねぇ。
「無駄な、野生の本能、な」
「身内には一応優しいのにね、ジャイゴ」
その、私とゆっ君の言葉に、健吾君はまたもや溜息。
「あなた方、本当に、同類の危機感の無さですね」
え?
そこで、私を含んじゃうの?
「流石に、ヤクザ屋さん来たら、健吾君に言うよ」
「その前に、あんな場所に、住まないで下さい」
その話盛り返すの止めて。
「楓、なんか食べたい」
だから、清牙!
「そんなに言うなら、俺が作ってあげるよ」
にっこり笑うゆっ君に、清牙が嫌そうに首を振る。
「絶対に、辛い奴だ! 俺が食えないの知ってて、辛いの作ってくる!!」
「辛いラーメン、美味しいのに」
まあ、美味しいね。
たまに食べると。
だが、辛子高菜を食べられない清牙には、無理である。
あっちのラーメン知らずに注文して、他の人に泣いて交換して貰ったとか何とか、馬鹿な話をしていたくらいなので。
まあ、店に寄るんだけど、清牙ってば、よりによって、辛子高菜が激辛で有名なところで頼むから。
「楓」
ああ、もうっ、面倒臭い!
「ああ、ちょっと待って。どうせ、子供達は出せば食べるよね?」
「あるなら食べるけど、結構、真面目な話じゃないの、コレ」
玲央君の真っ当な言葉に、溜息。
「清牙がピーピー煩いから、作りながら、食べながらに、する」
それを見越して、昨日ホットプレートまで買っておいたからね。
て云うか、今日の昼に困ると思ったので、先行投資である。
実用早過ぎな、気がしないでもないけど。
「ちょっと準備してくる。タテ手伝え」
「ううっ、カエちゃんと2人はちょっと…」
「シバキ倒すぞ」
「ああ、はいはい。俺も行くから、仲良くするのは後」
ゆっ君に促されて、取り敢えず給湯室に移動することにした。
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