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全方位多忙
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しおりを挟むあまりにもごねて煩い清牙を引き剥がす苦労を諦めた健吾君が、長谷監督コト先生に頭を下げる。
当然SPHYの打ち合わせは、時間をずらして貰う我が儘ぶり。
結果、会議室には、大量のケータリングが並べられている。
モクモク食べる清牙を優し眼で見て頷く先生。
穏やかそうに見えて、結構な腹黒だけに、まあ、色々思うところはあるが、悪い人ではないのだ。
穏やかに笑顔で、突拍子もない無茶振りしてくれるだけで。
清牙が食べる横で差し出された脚本を流し読み。
そして溜息。
「先生。これ、普通にAIじゃダメなんですか?」
モテない男が、会社の飲み会でイイ感じになった女の子と何とか進展しようとして、AIに相談するコメディ。
そしてなぜかの、AI役。
電脳に感情はあるのかないのか論争に、係わる気はない。
最早、人間でもなくなってる演技とは、如何に?
「スポンサーに、是非にと見せて貰ったんですが、全く、人間に見えなかったんですよね」
まあ、言いたいことは分かる。
人間にしか見えないのに、人間ぽくない、的確なようでいて、的を外した発言を当たり前に告げ、それに振り回される主人公が、結局は自分でぶつかって砕ける話なので。
AIは結構重要。
最終的に、「お前でいいや」発言で終わる、空しいブラックコメディである。
美人で細身で、上手い、同時期で被らない人、監督、捕まえられなかったんだろうね。
監督、日本では実績あるけど、世界的知名度ないから、実力大御所取り合いになったら負けるだろうし。
特にコレ、連ドラではなく、ドラマはドラマでも、地上波じゃないし。
スポンサー各社のロートルの、未だに映画界が上って認識、改変出来ないんですかね?
映画に時間と金掛けるぐらいなら、ネットで早送りって人が大多数な世の中ですよ?
そんな、私の現実逃避無視して、本日も先生は、穏やかだった。
「機械的に、でも、穏やかに人当たり良く、淡々と。行けますよね?」
相変わらずの、事前説明もない無茶振りだけど。
台本(仮)はあったけど、それだけだよね?
現場この時点で、それ云う?
まあ、やれと言えばやりますよ?
っていうか、コールセンターのあの感じ出せば、多分普通に行ける。
楽しい、楽しい、お仕事ですもの。
「それで、その次の話なんですが」
次ってナニ?
その私の反応より、辺り一面べちゃべちゃに汚している清牙が早い。
「先生。楓は俺の専属。なのに、散々先に持ってかれて、こっちも順番待ちさせられてんだけど?」
「勿論、清牙君の後でイイですよ」
「イイとかじゃねぇ。PV作らいないと、曲売れねぇんだよ」
別に、私無しでPV作ってくれてもいいのに…とか言ったら、清牙暴れだしそうだな。
っていうか、決め顔しても、見て取れる今の現状に、台無しである。
何時になったら、清牙ちゃんは自分で綺麗にご飯を食べられるようになるんだろうか?
「本当に。簡単に、永井君に持って行かせないで下さい。彼女は私の女優でもあるんですから」
「だから、俺のだって」
「いやあ、やっぱり、監督名乗るなら、自分の専属女優って、言ってみたいですよね」
「だから、俺の! 貸し出してんの!」
本当に、何言ってるんだろうか、この人達。
「映画ではないですが、少数での3本撮りなんで、スケジュールきっちり開けて貰いますけど」
だからなんで、既に決定事項?
私、これから契約するんですよね?
まあ、契約云々は健吾君と清牙が握っているので、そっちがOK出しちゃうと、私にはどうしようもなく?
そっちがOK出している以上、私にも文句はないのは、まあ、現状、仕方ないんですけど。
そんな中でも、話は進行中。
ドラマが立て続けで…結局4本?
私、ここにいる?
「勿論、待ちますよ。こっちは脚本から手掛けてるので、妥協したくないんで」
だが、きっちり拘束するからな…って、事ですね?
まあ、私が化粧出来ないんだから、拘束上位条件確保は、仕方がない訳で。
上位確保も何も、週一確保されると私は他に行きようもない訳で。
「私、なんか、忙しくない?」
そこ押さえられると、他に行きようもないと云うか?
ミーに便乗してこっちに来るにしても、日常の、時々忘れた頃に、SPHYのPV出て、依頼があれば、芝居するくらいの感覚だったんですが?
なんか、次々スケジュールが抑えられていく。
っていうか、コレ、派遣先、変えるかなんかしないと、不味い気がするんですが?
「ですから、何度も言ってますが、清牙の許可さえ取れれば、仕事は結構あるんです」
あれ、清牙の世話押し付ける為の言い訳じゃなかったんだ。
最初から大人しく存在消していたけれど、社長事健吾君もいたりして。
「ぜってぇ、条件は下げねぇ」
清牙、だからねぇ。
って云うか、健吾君の話を聞く限り、前提条件以上の篩が、清牙の中にある模様。
健吾君は清牙が正明広大に出している前条件を軸に仕事を振っているのだ。
条件云々であれば、清牙に話を通す前に終わっている。
そこに更なる特殊裁定の上での仕事斡旋となれば、当然清牙の所為である。
「でも、楓君を説得さえ出来れば、ですからねぇ」
「先生も、大概にしとけよ? 貸し出さねぇからな」
「あはは。言っただけ。言っただけ」
なんか、私、モテ期再来?
打ち合わせと云うより、雑談でほぼほぼ終わり。
それ以上に、なぜか詰まった、私の予定の数々に、心身共に震える。
どう考えても、これ、週に2日ぐらいしか、シフトは入れないじゃん。
元々そうなったら辞める形の話をしていたんだけど、急過ぎない?
慌てて派遣元に連絡とって、派遣先に連絡とって、それからのシフト調整に、今後の話し合い。
どう考えても、継続は無理でした。
先生、出来れば半年は押さえたいとか恐ろしい事言ってくるんだよ?
まあ、清牙が怒鳴り散らかしたので、そこまではないと信じてる。
その結果を経ての、またの仕事探し。
不安は残るけど、役者仕事するなら仕方がない。
週2日のパート契約と、事務所雑用業務。
先生のネットドラマの方は先に話を聞いていたので、スケジュールは空けていた。
そこからの、清牙の「早く」攻撃に煩いと怒鳴り返しながら、派遣先の仕事を終える。
こんな急に辞めてとか散々嫌味言われたけど、そう云う契約だったじゃん。
感じ悪いまま、派遣先の仕事を強制終了。
そのまま派遣会社の登録も切りました。
いや、切られました。
まあ、致し方なく?
思っていた以上に忙しい、こっち側生活が始まったのだった。
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