14 / 262
微妙な再開
6
しおりを挟む駆郎君最高。
あんな昔の曲に迄参入とか、彼は凄過ぎる。
毎日毎日聞いていたあの曲のあの部分を、駆郎君がとか…。
最高である。
なにせ、生演奏も聞けた。
本当に尊い。
どうやってお布施したらいいのかと聞けば、ひきつった笑顔で「いりません」と即答されたのは解せぬが、駆郎君は謙虚なのだ。
彼は謙虚で心正しいからこそ、あの方々の曲に参入。
本当に尊いと幸せを享受していた毎日も、何時しか終わりが来るのである。
糞爺や糞婆の暴言やボケっぷりを笑顔で流してきた日々も、許容範囲を超えるのである。
今日は芸能人様ではないが、笑顔な悪魔がっやってきた。
「いらっしゃいませ」
別に来なくていい。
って言うか、さっさと帰れと内心で強く思っていたとしても、定型言語は来店歓迎の言葉である。
「うん。まだご機嫌そう。カエは相変わらず単純だね」
うっさいわ。
幸せに生きて何が悪い。
「はい」
差し出されるのど飴。
それは良い。
だが、その上にある見覚えのあるような無い様なラミネート加工のネームプレート。
「スタッフ証って書かれていますが、落とし物ですか?」
「な訳ないよね。清牙からの召喚状」
止めろ。
恐ろしいモノを私に押し付けるんじゃねぇ。
「借りを返せって」
なんの借りじゃ!
「私、その為に東京まで行ったよね!?」
折角東京まで行ったのに、観光のかの字も見当たらず、フラフラのまま帰って、肌ボロボロにして!
心配してだろう呼び出しに、大人しく従って、真面目に協力したじゃん!!
「本当にね。大人しく打ち上げしていれば良かったのに、清牙のご機嫌損ねるから」
は?
「私、なんもしてないじゃん」
「そうだよね。何もし無さ過ぎ。PV打ち上げで、そのPV見もしないとか、普通有り得ない。アニキ、死ぬほど頑張ってたのに」
いや、ちょっと待て?
「あれは、駆郎君を称える会だった筈」
「そんなもの催した覚えはないね」
あれぇぇ?
「只でさえ我が強い清牙の前で他のVo褒め称えるとか、カエってばカッコイイ」
どうしよう?
全然、嬉しくない。
「そもそもが、カエって清牙の歌、まともに聞いたことないからの反応なんじゃないかって話で、一応の決着をつけたらしいよ?」
そんな決着いらねぇ。
「って云うか、普通に、テレビでもアニメでも、ドラマでも聞きましたが?」
昨日、医療ドラマの番宣始まったし。
「でも、生は違うでしょ?」
それはそうだ。
生ライブは最高である。
何よりの癒しと天国な空間。
だが、しかしっ!
「私、もうチケット買った」
初めて会った日に聞いた、フェスのチケットを。
呪いの召喚状なんていらないのである。
「なんで無駄なことするかな。兄貴か俺に言えば用意したし、今ここにあるし」
その、目の前にあるのものが、一番いらねぇ。
「タダで貰う理由がないってのが一番だけどさぁ、ウチの姪っ子達が拗ねててさぁ」
ここの所清牙達に振り回され過ぎである。
全然顔見に行ってなかったら、泣かれたのだ。
姪っ子達の「嫌いになった?」はキツイ。
忙しさにかまけて蔑ろにしてたのは認めるが、姪っ子達は無条件に可愛い。
遊んでと言われれば遊ぶさ。
ただ、生活の為働かなければならない。
加えて休暇は貴重。
結果、休暇の共有と相成った。
フェスに奴らの好きな韓流アイドルも出てたので。
「1人で行くのもなんだし、一緒に行くことにした」
「清牙を見に?」
「……まあ」
清牙はこっちが望んでなくても自分からやってくるので、どっちでもイイかなとは言わない。
ライブも、急がなくてもその内でいい気がする、とも言えない。
ぶっちゃけ、いつでも聞けるだろうしとかも、言っちゃいけない。
「カエ。今清牙が目の前にいたら、ブチ切れてるよ?」
ですよねぇ。
あの我が儘唯我独尊王子、自分が一番じゃないと気が済まない…アレ?
「もしかして、前回の飲み会で全く構わなかったこと拗ねてるの?」
「もしかしなくても、当然そうだよ」
笑顔で言い切られました。
「まあ、私は勝手に行って勝手に楽しんで来るから、これはお返しします」
そんな恐ろしげなものいらんと、スタッフ証を押し返すが、当然のごとく押し返されて、ストラップの部分で手をグルグルにされる。
「配達押し付けられた上に別再配送受け取れと?」
ですよねぇ?
笑顔が怖い。
「私は子守があるから受け取れません!」
「それは清牙に直接言いなよ」
絶対嫌だ。
そう言えば、最近話してないな?
毎日とは言わんけど、下らん電話がかかってきてたのに、トント…。
「もう、清牙の意識は他所に!」
「カエ。俺は帰るね」
酷い。
ぶった切られた。
振り返りもしないゆっ君に御座なりの「ありがとうございました」を告げて、手に残るスタッフ証を見る。
絶対に呪いの何かである。
だが、呪いの何かである限り、手放すことも難しく?
面倒臭ぇと思いながらもポケットに突っ込むのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる