泡沫の欠片

ちーすけ

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微妙な再開

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ルンルンで、どこを歩いているのかも良く分からなかったが、さっさと乗ったタクシーに運ばれて、見覚えのあるカフェへ。
ですよねぇ。
未成年いるし、表立って飲めねぇし。
そのまま会場に上がれば、なぜか、メグさんとゆっ君がいる。
いや、ゆっ君の店なので、いてもいいんだけど、マー君はいない。
「メンバーが不振?」
「兄貴は今ヘロヘロだろ」
なぜに?
「一昨日撮影終わって、今日打ち上げするから形だけでも完成させろとか、無理難題ぶっ飛ばした我が儘王子がそこにいるから」
ああ、なるほど。
清牙の所為か。
確かに撮影終わった二日後ではラッシュも出来てない筈である。
ドンだけ無茶振りさせたのか?
まあ、それで説教免れてラッキー。
だって、撮影押したから、撮影後の説教が現在迄のびのび。
そのままなぁなあになってしまえ。
「それより、楓ちゃん、本当に、肌荒れっていうか、それ、病気?」
そこまで言わんで下さい。
「化粧品の成分の何かに過剰反応しているだけで、皮膚自体は丈夫なんですよ」
医者には化粧をするなとは言われるが、完治しないなどと言われたことはない。
現に、洗剤各種で荒れた試しはないくらいに丈夫だ。
なんでか、化粧品にだけ過剰反応する私の特殊な肌性質。
意味が解らん。
「私、どこぞの大学と有名化粧品メーカーに特別サンプルとして皮膚データが保存されてるんですよね。有名化粧品メーカーには、貴方に合う化粧品は作れませんって最終通告迄受けましたけど」
どこぞのお家エステでなんだっていう時に、無料なんちゃら会で、お試しした結果、そう言われたのだ。
御大層な分厚い封筒で。
なんか成分色々書いてあったけど、素人に分かる筈もない。
流し読みの結論として、貴方の肌に合った、貴方の為だけの化粧品を作りますとか銘打った奴では作成不可能と相成ったんだと、思われる。
そのままあれよあれよと、大学研究サンプル迄話が流れていった摩訶不思議。
「まあ、薬塗って一週間すれば復活するんで、化粧しなければ終わる話なんですけどね」
「終わらないよね? 役者として致命的じゃん」
ゆっ君や。
笑いながら言うな。
「致命的程まではないよ。舞台も週一ならなんとかなるし、映画も、撮影スケジュールでどうにかなる」
「でも、メインは出来ませんよね?」
そら、出ずっぱりだからな。
皮膚休ませる暇がない。
序に言うなら、自分で撮影スケジュール組めるぐらいでないと、映画でも無理。
普通の映画製作の厳密スケジュールじゃ、先ず対応出来ません。
出番が多い役は映画でもドラマでもなんでも、到底、無理なのである。
「前の上司がな、話が分かる人でさぁ。ズブの素人同然なのに、好きにさせてくれたおかげだよね」
「「カエさん(楓ちゃん)?」」
2人の憐れむような視線は見ない。
当然笑い転げるゆっ君も見ない。
「今はスーパーのおばさんだから関係ないし」
「関係なくない?」
ゆっ君、貴方の笑顔が煩いです。
「それよりも、だ!」
本日のメインは間違いなく駆郎君です。
「駆郎君。お二人のお話を詳しく!」
「え? 詳しくとか言っても、収録も2‥4回くらいですよ?」
すげぇ。
ホンモノがいる。
「つまり、私が聞いてるアレは、駆郎君の演奏?」
「アレがドレ?」
それこそ、私が知りたい!
「曲名、言いますか?」
「うぎゃあああ!」
どうしよう。
超、興奮してきたんですが!?
「駆郎君、サイン下さい!」
「は?」
「今更?」
「ぶふっ」
なんか色々声が聞こえるけど気にしない。
「父の方が詳しいんですけどね。仮とかで、結構呼ばれてるし」
どうしよう!
目の前に、憧れの演奏者がいる。
そのお父様は根深く製作にかかわった関係者。
「尊い」
「おい、本気でいい加減にしろよ?」
清牙、本当に、今日は煩い。
いや、いつも煩い。
「私は今、駆郎君の存在が最重要!」
「いや、待って。コレ、PV完成の打ち上げで、その結果が最重要だよね? 何がどうして駆郎がモテてんの?」
「知るか!!」
だから、清牙煩い!
「駆郎君、貴方はいつもギターを持ち歩いてましたよね? もしかして、今、演奏を再現とかしちゃったりなんたり?」
「え? 弾きますか?」
「うぎゃああああ!」
「カエ壊れたね」
「えっと、もう、PV、どうでもよくなってない?」
なんか色々言ってるけどもう知ら…ん訳に行かないのか。
清牙ってばお子様だから。
「清牙。勝手に食べて始めてて。私は駆郎君に構って貰えばそれでいいから」
「あ゛?」
「んじゃ、とにかく乾杯乾杯」
酒さえ入ってモノを食べれば、清牙は大人しくなる。
それが揚げ物のように腹にガツンとくるものならまた良し!
私は駆郎君にお話聞けて大満足。
それで完璧。
今日の飲み会、超楽しい。
その時はまあ、それで良かったのだけど、後日大変後悔することになるのを私は知らない。
まあ、その時何がどうあったとしても、私の今日の行動に大差なかったとは、言い切れるのだが。
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