泡沫の欠片

ちーすけ

文字の大きさ
3 / 262
再会確保

しおりを挟む



そして到着、オサレなカフェ風。
飲み会だよね?
お説教だよね?
芸能人様がいると、こういう店じゃないとダメなの?
でも、その芸能人様が吉野家で牛丼食べてたんだけど?
まあ、ギャラリー一切気にしてない感じで、実際、やりたか放題っぽいんだけどさあと思っていたら、芸能人様も不服だった模様。
「俺、甘いモンより、がっつり食って飲みたいんっすけど」
「心配すんな。食うもんは運んでる。ただ、此奴の所為で、込み合った話するんなら、他が全く入れない店にしただけだ」
「それこそ「黙れ」」
後日にはならないんですね。
そうですよね。
今更ですよね…と思っていたら、きっちり締まっていたカフェの扉が開き、見たことある顔が手招きする。
「ホントにカエじゃん。久しぶり」
「本当にな」
「兄貴に捕まるとか災難だよね」
「本当に「はよ、入れ」」
蹴り入れられかねない勢いに、渋々中に入れば、細い階段から顔を出した男の子が一人。
「清牙ぁ。本当にナニやってんの? マサさん、本当にすみませんでした」
そして直立直礼。
「匂いが甘ったるい」
「そら、ケーキメインのカフェだし。大丈夫、上に、たっぶり刺身も揚げ物用意してるから」
「よっしゃあ」
「よっしゃじゃないだろ! 清牙!」
細い階段を2・3段越しに駆け上がる姿は若い。
「確か、まだ、十代だったよね?」
「アイツは、永遠の5歳児だ」
ああ、ナル。
「兄貴もカエも、さっさ上ってよ。鍵かけらんない」
ゆっ君の言葉に促され、階段を上がれば、でっかいテーブルに食べ物が山盛りになっている。
8割が揚げ物だけど。
「匂いが重い」
「カエは刺身とサラダあるよ。酒も各種用意してます」
にっこり笑うゆっ君は、まー君によく似ている。
まー君はにこやかどころか、眉間にシワ寄せて睨んでいるが。
「相変わらず、似てない双子だよね」
「お前だけだ、そんなン言うの」
「だよねぇ。ウチの最初の嫁、俺と兄貴間違ってベッドに誘って兄貴ぶちキレちゃってさぁ」
「笑い事か!?」
「そのまま罪悪感とか責めながらチクチク調教して、兄貴襲わせてから寝取りとかしたかったのにさぁ」
「忠幸!!」
突如始まった双子の喧嘩に、昔を思い出す。
良くあった。
行き当たりばったりの享楽主義の忠幸は、要領が良くド変態。
真面目で堅物の器用貧乏の忠正は、忠幸と間違えられ責められ、尻拭いをし、謝り倒し叱り倒し、忠幸の胸ぐら掴んで説教を繰り返す。
される忠幸は笑顔ではいはい笑って聞いちゃいねぇ。
仲は悪くないのだが、まあ、衝突は多かった。
そして、黙って静かにしていると、周りからすると、双子の見分けはし難いらしい。
今は見間違う事はなさそうだけど。
忠正は黒髪を軽く後ろに流して眼鏡かけたかっちりスーツ。
忠幸はグレーに上部だけ跳ねて下側は刈り上げ、なんかゴチャゴチャ付属が付いた服を着ている。
今の2人なら、顔立ちがとても良く似た兄弟くらいにしか見えないだろうなぁと思う。
そんな双子の喧嘩より先に、ガン見で刺さる視線が2つ。
「あ、無関係者が申し訳ない。双子の幼馴染です。とっ捕まって連行されました」
「ああ、あの、ウチの清牙が迷惑かけませんでしたか?」
黒髪がフワフワした男の子が心配そうに聞いてくる。
なに、これ、可愛い。
「大丈夫」
「ああっと、SPHYのドラムの舞人です」
「御丁寧にありがとうございます。一般人の楓です」
こっちはガタイのいい落ち着いた感じのお兄ちゃん。
清牙ほどのきらびやかさはないけど、やっぱり整った顔立ち。
「芸能人様様だねぇ」
「じゃあ、観衆もいなくなったし、おっぱい揉んでイイ?」
「ちょっ、清牙!?」
「清牙、マサさんの関係者は止めろ。健吾が倒れる」
ああ、どこでもこんな感じなのね。
「清牙君。こんなんにまで盛んなくても、お外で可愛いの釣ってくればイイだろうに」
「お外で手当たり次第は止めれって言われてるんすよ。相手は決めろ。ゴムはつけろ。毎月検査しろって。酷くないっすか?」
「そこまで言わせてるお前がな」
「ちょっ、清牙! 女性の前でそういう話は止めろって!!」
「ええぇぇ。勿体無くねぇ? あのおっぱい、10歳以下限定とか言ってるんだぜ? 気持ち良くなれば、10歳以上でも大丈夫とか教えたくならねぇ?」
「何を教える!? なにをしようとしてる? 本当に、大人しくしろ。明日には戻るから、誰か呼ぶなり行くなりすればいいだろ。そっちは仕舞え!」
「姐さん、男で嫌な目にでもあったんっすか? そのおっぱい使わないのは勿体無いですって。清牙と一緒に俺も頑張りますけど?」
「舞人まで止めろ! 本当に、一般人の方にご迷惑をかけないっ!!」
「んん。でも、マサさんが、この人こっち側つってたけど?」
「なら良いじゃん。3Pしましょう」
「ええぇぇ。舞人いらねぇ」
「俺も、お前がいらねぇよ」
「清牙! 舞人!!」
なんか、にぎやかだねぇ。
「まー君。このままだと若い子達におっぱい揉みしだかされそうなんで、始めてイイかな?」
「カエ、恥じらいを拾ってこい! 女のお前が率先して下ネタ広げんな!!!」
「ああ、はいはい。皆お腹空いてるんだよ。始めるよ! 好きな酒勝手にとって」
自由過ぎな飲み会だなと思いつつ酒を探そうとしたら、清牙君がビールを投げてきた。
そして当然私は取り損ねてビールが派手に転がる。
辺りが静まり返った瞬間だった。
そこから気を取り直したまー君が、でっかい溜息吐きながら一言。
「清牙。カエに運動機能が必要なことをさせるな。被害が広がる」
それを受け、ケラケラ笑うゆっ君。
「カエねぇ。運動神経切れまくってるから」
お綺麗な芸能人清牙様は、当然の様に言い放つ。
「おっぱいが邪魔で?」
「おっぱい育つ前からだね」
「おっぱいおっぱい連呼すんな!!」
「兄貴がしてる」
「マサさんが言ってるじゃないっすか」
訳知り顔の舞人君。
「やっぱ、おっぱいあると運動しにくいんですよね。どんなアスリートもおっぱいないしな」
そして真面目なのか心配症なのか、もう一人の子が頭を下げている。
「ほんと、すみません! ウチのメンバーが申し訳ありません」
ホント、にぎやか。
でも私は言いたい。
「飲食物を投げてはいけません」
「まあ、正論だね」
そう言って、ゆっ君がご丁寧に、ビールを運んできて膝をつき、恭しく手を下から支えて上に置いて下さいました。
「こちらで宜しいですか?」
「ごめーん、その・・・」
可愛い子とは言いにくくて名前の知らない男の子を見れば、キョトンと自分を指をさす仕草。
やっぱり、可愛くないっすか?
「そいつは駆郎。俺のギター」
どしてそこの冠言葉が「俺」なのかはともかく、だ。
「そこのビールとって」
そう、私が指さしたのは、私が手にしたものと同じ銘柄のビール缶。
「あの、もう1本、あった方が良いんですか?」
そんなに飲む気満々?
そう思われたんだろう。
まあ、それは否定はしないが、な。
「この私の手にあるビールは間違いなく、思いっきりシェイクされております。ねえ、ゆっ君?」
そうにこやかに見れば、立ち上がった奴は舌を出す。
「えぇ。濡れ衣。酷くない?」
「じゃあ、お前が飲め」
「俺、ビールより甘いお酒が好きなんだよね」
その言葉に確信を持った私は、まー君にビールを渡す。
「後日、奴の車にばらまいておく」
「止めて! 兄貴が言うとシャレになんない!!」
「本気だからな」
「なお悪いわ!!」
そんなグダグダから、駆郎君は大人しく新たなビールを差し出してくれる。
「ありがとう」
「いえ、あの」
「んじゃあ、行方不明なカエも見つかったし、フェスも決まったしで、頑張っていきましょう、乾杯」
「え?は? 行方不め…乾杯?」
真面目なんだろう駆郎君だけがオロオロとしつつ始まった飲み会。
そう言う名目に私を混ぜ込むなよと思った私は悪くないと思うんだが、カオスはここから始まるのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...