生まれ変わっても変わらず好きでいてくださいね

ななな

文字の大きさ
4 / 14

あげたいなって思った時でいいんだよ

しおりを挟む
僕には前世の記憶があった。
優雨に初めて出会った時からずっと記憶が残ってる。何度出会って、何度別れたのかは数え切れない。流石に全部細かく覚えている訳じゃないけど、どれも幸せな記憶ばかりだ。

 初めて出会ったのは多分一度目の人生。
色々な人と付き合ったけど、好きだとか分からなかった。それが相手に伝わっていたんだろう。付き合った人全員に振られた。
でも、優雨は違った。

「好きになれないかも」

付き合う前にそう伝えたけどずっと側にいてくれた。僕が好きじゃなくても別に気にしないという感じで

「その分、俺が好きになるから」

そう言ってくれた。
きっと、人生で一番欲しかった言葉だ。
その後もずっと欲しかったものを当たり前かのようにくれた。

「僕ばっか貰ってて、何も返せてない」

「そんなの要らないよ。だって見返りが欲しい訳じゃないし、葉月があげたいなって思ったときだけでいいんだよ」

「僕、もう、優雨以外好きになれないかも」

「葉月だっていっぱいくれるじゃん。俺が欲しいもの」

「そうだといいけど」

好きになれないくせに愛して欲しいとかおかしい話だけど、あの時は振られ過ぎて僕もきっとおかしくなってたんだ。
優雨はその時見返りを求めない愛を教えてくれた。心が満たされた。
すごく好きだった。
でも、別れが早過ぎた。
好きも愛してるも分かったのに、伝える相手がいないなんてこんなにも悲しくて、辛いなら知らなきゃよかった。
優雨は飲酒運転をした車に轢かれて死んだ。優雨を殺した相手を憎む気にもなれなかった。憎む気力も生きる気力も全てが消え去った。優雨がいないと生きていけないよ。そう毎日思っていた。
優雨が一度、夢に出てきた。
生きていた頃によく言っていた海に二人でいた。夕陽に優雨の薄茶色の髪が反射していた。優雨に手を引かれて波打ち際に行く。波の音は聞こえない。

「俺以外のこと好きになったら、振っていいからね」

言葉が出ないまま、優雨は一人、海に落ちかけた夕陽の方へ歩いて行く。
どんなに走っても近づけず、見えなくなってしまった。
まるで死んだ優雨が自分を忘れろって言ってるようで、寝た心地がしなかった。
あれは優雨のことを好きになる前にした会話だ。付き合って間もない頃の、僕が馬鹿だった時の話だ。そんなはずない。忘れろなんて言わないでよ。まだ、こんなに好きなのに、勝手に決めないで、お願いだから僕が死ぬまで、好きでいさせてよ。

一度目の人生は後悔ばかりだったけどそれよりもあの一瞬の幸せが僕を形作ってくれた。だから、忘れないよ。
優雨がそれを忘れてても、僕の気持ちは変わらない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

【本編完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する

とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。 「隣国以外でお願いします!」 死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。 彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。 いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。 転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。 小説家になろう様にも掲載しております。  ※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~

蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。 転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。 戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。 マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。 皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた! しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった! ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。 皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。

処理中です...