全てを諦めた公爵令息の開き直り

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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする

66話 世迷言

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「貴方がもし本当に子供を望むなら、僕は……貴方の隣に居る座を、他の女性に明け渡す事も、受け入れるよ……。」

最愛の人が意を決して、涙ながらに口にするその言葉に。
初めは誰の事を言っているのか分からなかった。

けれど、紡ぎ出されるその言葉を耳にする程に、シリルのいじらしいまでの心が明かされていく。

……ドウシテ、ソンナ事ヲ?

決して別れを望んでいる訳ではないのは分かるのに、彼の言う意味が分からない。
ワカラナイ。

私はぐるぐるとかき回される記憶を辿ろうとして、急に目の前が開けた。


『貴方が浅ましいと嘆く衝動も、その全てが愛おしいよ。』

あの日の夜、浅ましい愚かな自分を嘆く私に、シリルは慈愛に満ちた顔で微笑み、囁いて。

醜いと隠したかった己の昏い情欲も、全て受け入れてもらえた気がした。
取るに足らない、こんな下らない自分なんかに、全力で愛を示してくれる存在に。
本当に、嬉しかった。
幸せだと思った。

『ありがとう、正直に話してくれて。嬉しい。そんなサフィルが好き。大好き。……あぁ、好きなんて言葉じゃ足りないくらい、愛おしくて。嬉しくて。』

あの時感じた想いは、確かだ。
これ以上とないくらいに嬉しくて、幸せで。
本当に、どうなってもいいとすら思えて。

『はぁ…。嬉しい……私も。こんなにも想ってもらえて。未だに、夢みたい。』

本当に、夢の中に居る様な心地だった。
夢なんかよりも強烈にその存在を感じるのに、幸せ過ぎて。
現実と夢の狭間に居た自分は、我を失って、どんどん幸せな夢へと溺れていって。

『あ“っ!ひ…っあぁっ!好き、サフィルぅ!』
『は。あ、シリル!シリルッ!』

そうして、ただ二人、快楽の波に呑まれて。
ただ。
好き。愛おしい。
それだけが頭の中を支配していた。

『あひっ……うん…うんっ…!気持ちイイ、からっ!!』

好きにしていい、と言う彼の言葉に遠慮も無いまま。
無我夢中で彼の中を穿って貫いたのに、愛おしい彼は、ただ嬉しそうに笑った。

『は…あっ、わ。すごっ……ここ、サフィルの入って、お腹ぽこってなってるぅ!』

無遠慮に穿ち過ぎて、彼の薄い腹を己のモノが外からでも分かるくらい突き上げている様が、垣間見えて。
それをえげつないと恐れるどころか、愛おしそうに外から膨れた腹を撫で付けられて。

もう、とうに限界は超えていた。

馬鹿になった頭で、うわ言を口にしていた。

『ま、またそうやって煽って!あーもう、なんて可愛いんです。シリル、好き!愛してるっ……このまま私の子種受け止めて、孕んでよ。』


——————…。

思い出した。
今になって。

媚薬の効果で頭が沸騰していたとは言え、馬鹿になった頭で、何も考えず口にした、その言葉は。
閨での興奮の呼び水でしかない、戯れの言葉であったとしても。
それを叩きつけられたシリルは、絶望したにほかならない。

同性である所為で、共になる事をも躊躇い、涙すらした彼なのに。
そんな彼に、私は。
どう足掻いても出来もしない事を、悪びれも無く。
実に簡単に、面白おかしく口にしてしまった。
何の考えも無かったのに。

「…思い、出しました…。確かに、口にした……。可愛すぎて…つい、“孕んでよ”って。言った事も忘れていたくらい、なのに。あ、あんな馬鹿な私の世迷言の所為で、貴方をあそこまで苦しめてしまったのですか……私はっ?!」

愕然と呟く私に、シリルは大きく首を振ってみせた。

「違うよ!僕の所為なんだ!僕が、貴方を煽って、媚薬まで飲む様に仕向けてしまって。サフィルは止めようとしてくれたのに。正常な判断が出来ない状態にしちゃってたのは分かってた!……だって、サフィルはいつも僕を大事にしてくれるから、遠慮させたくなくて…!貴方が恥じている奥底の気持ちを無理矢理暴きたい訳じゃなかったけど、知って触れたいとは思ってたんだ。もっともっと知りたくて。でも、それが……アレだったなら…僕は…」

また泣きそうになるシリルを前に、どうすればいいか分からない。
そんな、言った事も忘れる様な世迷言で、本気で苦悩させてしまったなんて。

そもそも、貴方を苦しめてしまうだけなら…貴方と共に居られないのなら、なんの意味も無いのに。
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