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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
51話 離れても繋がってる
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「ホントにマジで色々端折りまくったわね。」
自室に戻ると早々に、侍女二人を引き入れたシルヴィアがじとぉ~っとした目で彼女らに唸った。
「いやぁ~、元々魔力の無い公爵ご夫妻にあんまり込み入った事を言わない方がいいと言われて。まぁ、魔術を使えるシリル様の存在はご存知ですから?ご夫妻にとって本当に差し障りの無い範囲にしといたんですよ。」
「どぉだか!」
「も~、シルヴィア様ぁ~そんなにご機嫌損ねないで下さいよぉ~。あのネオの魔術を解いてしまうなんて、それだけでもうビックリしちゃって。私達だって、内心ドッキドキのバックバクだったんですからぁ~。」
拗ねてそっぽを向くシルヴィアに、レイラは子供が親兄弟から許しを請う様に慣れ親しく言い訳を言い連ねていた。
それでもまだ不満げにへの字に口を曲げるシルヴィアと目が合ったミストラルは、レイラと違って凛とした空気を纏いながら、彼女にしては柔和な笑みを向けて来た。
「私は貴女様とは初対面でしたね。改めまして、ミストラルと申します。レイラからの伝手で、このお屋敷でご厄介になっております。お嬢様方が元の世界へ戻られてからは、私は純粋にここでの仕事を気に入って、ネオ……ええと、ゼルヴィルツとの事は関係なく、ただ普通に勤務させて頂いていたのですが……この様な事態になってしまって……。シルヴィア様がまたこちらの世界へと望まれたのは、シリル様の事で…ですか?」
叔父様達への説明もあり、色々話は二転三転してしまったが、僕の最初の疑問点にミストラルが戻してくれる。
ミストラルの話にハッとなったシルヴィアは、僕の方を見ると、ガッと両手を掴み迫られた。
「そうよ!お兄様!大丈夫だった?!心配したのよ?それまで異世界で離れてても何となく感じていたお兄様の穏やかな気配が急に消えかかって。だからゼルヴィルツに念じまくったの。本当は今年、受験で忙しくなると思ったから来年ゆっくり遊びに来る予定だったんだけど、お兄様の危機とあらばそうはいかないわ!だから、奴の夢枕に出てやる勢いで念じまくって、やぁっと来れた訳なんだけど……」
「そ、そうだったんだ…。勉強で忙しいのに、なんか心配かけたみたいでごめんね?」
「そんなのいいの!お兄様のピンチに比べればどうだって…。」
「さっき、レイラとミストラルの話を聞いて、ようやく合点がいったよ。救世の巫女も一緒だったのは、それでなんだね。」
酷く心配してくれるシルヴィアに、何度もお兄様と呼ばれて、段々そうなんだと実感が湧いて来て。
そして、僕らから少し離れた所で僕らの顛末をオロオロと見守っている巫女達に目をやると。
カレンとカイトと呼ばれた双子の姉弟は、ようやくパッと表情を綻ばせた。
「うわぁぁん!そうだよぅーシリルぅ!なんかよく分かんなかったけど、シリルがヤバいってシルヴィアから聞いて駆け付けたんだからねぇ!そしたらシリル、急に変な事言うしっ」
カイトという名のもう一人の巫子である少年が、半泣きになりながら馴れ馴れしい様子で寄って来る。
それがなんとも違和感しかなく、ギョッとなってしまって、つい、テオの後ろに身を隠そうとしてしまい。
その僕の行動を目にしたカイトは、ショックを受けた顔をして、また泣きそうになる。
隣のカレンもまた、同じ様な顔をしていた。
その様子を目の当たりにしたテオは、僕の肩に触れ、優しく気遣ってくれると、そっと僕を庇ってくれて。
そして、巫女達に向き合い、僕の事を説明してくれた。
「巫子様、シルヴィア様。すみません、全ては俺の不徳の致すところです。先日、アデリート王都ヴェネトリアで起きた事件に巻き込まれてしまわれたシリル様は、マルシオに捕まり、その際に記憶を失われ、カイト様と出会う前までの事しか覚えておられないのです。」
「そんな……っ!」
「マルシオ?!それって、前回に私と女装したお兄様が潜入した娼館で捕まえた、トレント男爵の子分のアイツ?!」
「え“…。何やってんの、僕。」
自身が守り切れなかった事や僕が記憶を失った事を話したテオに、カイトもカレンもまたまたショックを受けて言葉を詰まらせたが、犯人の名前に反応したシルヴィアが口にした内容に、今度は僕が唖然として、それぞれにテオへと視線が集中する。
「え、あー、まぁ、そうなんです、シリル様。あの頃はアデリートでの生活にも慣れて来られて余裕が出来た分、結構行動的になられていましたから、そんな事も…。ただ、そういう訳で、すったもんだして捕まえたそのマルシオですが、数ヶ月程前に別の収監所へ移送途中に脱走してしまい、騎士団達もかなり捜索していたのですが見つからず…。王都で行われた軍の式典後の警備が手薄になった所を狙われて、街中で王女様の馬車を暴走させた挙句、間違ってそこに居合わせた令嬢が攫われたのを追い、共にシリル様が捕まってしまわれました。以前の様な強力な魔力の開放で居場所を特定出来た為、シリル様を発見出来ましたが、長い昏睡状態から目覚められたら、この様な事態に……。」
「そんな事になっていたなんて……。」
「それで、記憶を失ってたから、カレンにあんな事を…」
テオの話を聞いて、ようやく状況を把握出来た巫子とシルヴィアだったようだが。
しゅんとして俯くカレンに、テオの背から顔を出した僕は、まだ怖々ながらも頭を下げた。
「その……カレン、さっきはすまなかった。お前がまさかシルヴィアと和解していたなんて、思ってもみなかったんだ。酷い事を言って……すまなかった。」
「!……ううん、ううん。いいの、誤解がとけたなら。私もシリルがそんな事になってたなんて知らなくて……。大変、だったんだね。」
「そう…なのかな。覚えてないから何とも…」
「そっか……。」
ぎこちないながらも先程の非礼を詫びた僕に、カレンは怒る事無く、涙目で笑ってくれた。
そして、こんな僕を心配してくれる。
でも、やっぱり何も思い出せない僕に、巫子達二人はとても寂しそうな顔をしていた。
気を取り直してお茶にしましょう!と提案してくれたレイラの計らいで、皆でお茶を飲みながらお喋りに花を咲かせていたが、やはり記憶の無い僕には分からない空気感で、無理に笑って見せたけれど、内心ではどうにも馴染む事が出来なかった。
自室に戻ると早々に、侍女二人を引き入れたシルヴィアがじとぉ~っとした目で彼女らに唸った。
「いやぁ~、元々魔力の無い公爵ご夫妻にあんまり込み入った事を言わない方がいいと言われて。まぁ、魔術を使えるシリル様の存在はご存知ですから?ご夫妻にとって本当に差し障りの無い範囲にしといたんですよ。」
「どぉだか!」
「も~、シルヴィア様ぁ~そんなにご機嫌損ねないで下さいよぉ~。あのネオの魔術を解いてしまうなんて、それだけでもうビックリしちゃって。私達だって、内心ドッキドキのバックバクだったんですからぁ~。」
拗ねてそっぽを向くシルヴィアに、レイラは子供が親兄弟から許しを請う様に慣れ親しく言い訳を言い連ねていた。
それでもまだ不満げにへの字に口を曲げるシルヴィアと目が合ったミストラルは、レイラと違って凛とした空気を纏いながら、彼女にしては柔和な笑みを向けて来た。
「私は貴女様とは初対面でしたね。改めまして、ミストラルと申します。レイラからの伝手で、このお屋敷でご厄介になっております。お嬢様方が元の世界へ戻られてからは、私は純粋にここでの仕事を気に入って、ネオ……ええと、ゼルヴィルツとの事は関係なく、ただ普通に勤務させて頂いていたのですが……この様な事態になってしまって……。シルヴィア様がまたこちらの世界へと望まれたのは、シリル様の事で…ですか?」
叔父様達への説明もあり、色々話は二転三転してしまったが、僕の最初の疑問点にミストラルが戻してくれる。
ミストラルの話にハッとなったシルヴィアは、僕の方を見ると、ガッと両手を掴み迫られた。
「そうよ!お兄様!大丈夫だった?!心配したのよ?それまで異世界で離れてても何となく感じていたお兄様の穏やかな気配が急に消えかかって。だからゼルヴィルツに念じまくったの。本当は今年、受験で忙しくなると思ったから来年ゆっくり遊びに来る予定だったんだけど、お兄様の危機とあらばそうはいかないわ!だから、奴の夢枕に出てやる勢いで念じまくって、やぁっと来れた訳なんだけど……」
「そ、そうだったんだ…。勉強で忙しいのに、なんか心配かけたみたいでごめんね?」
「そんなのいいの!お兄様のピンチに比べればどうだって…。」
「さっき、レイラとミストラルの話を聞いて、ようやく合点がいったよ。救世の巫女も一緒だったのは、それでなんだね。」
酷く心配してくれるシルヴィアに、何度もお兄様と呼ばれて、段々そうなんだと実感が湧いて来て。
そして、僕らから少し離れた所で僕らの顛末をオロオロと見守っている巫女達に目をやると。
カレンとカイトと呼ばれた双子の姉弟は、ようやくパッと表情を綻ばせた。
「うわぁぁん!そうだよぅーシリルぅ!なんかよく分かんなかったけど、シリルがヤバいってシルヴィアから聞いて駆け付けたんだからねぇ!そしたらシリル、急に変な事言うしっ」
カイトという名のもう一人の巫子である少年が、半泣きになりながら馴れ馴れしい様子で寄って来る。
それがなんとも違和感しかなく、ギョッとなってしまって、つい、テオの後ろに身を隠そうとしてしまい。
その僕の行動を目にしたカイトは、ショックを受けた顔をして、また泣きそうになる。
隣のカレンもまた、同じ様な顔をしていた。
その様子を目の当たりにしたテオは、僕の肩に触れ、優しく気遣ってくれると、そっと僕を庇ってくれて。
そして、巫女達に向き合い、僕の事を説明してくれた。
「巫子様、シルヴィア様。すみません、全ては俺の不徳の致すところです。先日、アデリート王都ヴェネトリアで起きた事件に巻き込まれてしまわれたシリル様は、マルシオに捕まり、その際に記憶を失われ、カイト様と出会う前までの事しか覚えておられないのです。」
「そんな……っ!」
「マルシオ?!それって、前回に私と女装したお兄様が潜入した娼館で捕まえた、トレント男爵の子分のアイツ?!」
「え“…。何やってんの、僕。」
自身が守り切れなかった事や僕が記憶を失った事を話したテオに、カイトもカレンもまたまたショックを受けて言葉を詰まらせたが、犯人の名前に反応したシルヴィアが口にした内容に、今度は僕が唖然として、それぞれにテオへと視線が集中する。
「え、あー、まぁ、そうなんです、シリル様。あの頃はアデリートでの生活にも慣れて来られて余裕が出来た分、結構行動的になられていましたから、そんな事も…。ただ、そういう訳で、すったもんだして捕まえたそのマルシオですが、数ヶ月程前に別の収監所へ移送途中に脱走してしまい、騎士団達もかなり捜索していたのですが見つからず…。王都で行われた軍の式典後の警備が手薄になった所を狙われて、街中で王女様の馬車を暴走させた挙句、間違ってそこに居合わせた令嬢が攫われたのを追い、共にシリル様が捕まってしまわれました。以前の様な強力な魔力の開放で居場所を特定出来た為、シリル様を発見出来ましたが、長い昏睡状態から目覚められたら、この様な事態に……。」
「そんな事になっていたなんて……。」
「それで、記憶を失ってたから、カレンにあんな事を…」
テオの話を聞いて、ようやく状況を把握出来た巫子とシルヴィアだったようだが。
しゅんとして俯くカレンに、テオの背から顔を出した僕は、まだ怖々ながらも頭を下げた。
「その……カレン、さっきはすまなかった。お前がまさかシルヴィアと和解していたなんて、思ってもみなかったんだ。酷い事を言って……すまなかった。」
「!……ううん、ううん。いいの、誤解がとけたなら。私もシリルがそんな事になってたなんて知らなくて……。大変、だったんだね。」
「そう…なのかな。覚えてないから何とも…」
「そっか……。」
ぎこちないながらも先程の非礼を詫びた僕に、カレンは怒る事無く、涙目で笑ってくれた。
そして、こんな僕を心配してくれる。
でも、やっぱり何も思い出せない僕に、巫子達二人はとても寂しそうな顔をしていた。
気を取り直してお茶にしましょう!と提案してくれたレイラの計らいで、皆でお茶を飲みながらお喋りに花を咲かせていたが、やはり記憶の無い僕には分からない空気感で、無理に笑って見せたけれど、内心ではどうにも馴染む事が出来なかった。
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