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続編2 手放してしまった公爵令息はもう一度恋をする
5話 やっぱり変わらないんだな
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「只今戻りました。…あら、ロレン様!」
庭園でのささやかなパーティーを楽しんだ後、ソフィア様と共にベルティーナ様のお部屋へと戻ってきたら、殿下達も居座っており。
その彼を見つけると、ソフィア様は嬉しそうに駆け寄って行った。
「おかえり、ソフィア。中庭に行ってたんだって?」
「えぇ。ヴィオラ様が誘って下さったの。この前ご卒業されたご友人方を招いてパーティーをされていらして。私の事を皆様に紹介して下さったんです。」
「あー、ヴィオラが……。楽しめたか?」
「はい!」
まだ幼さの残る笑みで楽し気に笑う彼女に、殿下は優しい目をして話を聞いていた。
そんな二人の仲睦まじい様子を母ベルティーナ様もまた同じ優しい眼差しで見守っている。
「それで、途中でシリル様も来られてご一緒して下さったんですよ。あの巫子様の親友という事で、皆様興味津々だったご様子で。とても喜ばれてらっしゃいました。」
「あ。そうらしいな。よくあんなトコ飛び込んでったなぁ…。話聞いてビックリしたぞ。」
ソフィア様の話に、殿下は驚いた様子で僕の方に話を振って来る。
「軽く顔出ししてご挨拶させて頂いただけですよ。ソフィア様もいらっしゃいましたし。」
「でも俺、お前はあーいうトコ嫌いなんだと思ってた。」
「確かに慣れてはいませんが、避けてばかりもいられませんからね…。ソフィア様のお陰で皆様に良くして頂きました。ご一緒下さりありがとうございました。」
彼女にニコリと笑みを向けると、変わらぬ笑顔で返して下さる。
「こちらこそ。ふふ。皆様に羨ましがられて、私も鼻高々でした!」
「え?そうですか?」
「はい!是非またご一緒して下さいな。」
「それは構いませんが、僕より殿下とご一緒された方が……」
喜んでおられる理由がよく分からないが、臣下と一緒より、そういうのは夫と一緒の方が良いのでは?
僕が首を傾げると。
彼女はやれやれと言った様で、その夫の方を見やった。
「……ですって、ロレン様。」
「う“…っ。じゃあ、今度。」
「もう!絶対ですからねっ!」
怒った様に言いながらも、彼女はすぐにクスクスと笑い出した。
殿下のこの反応は想定内だったのだろうか。
仕方ないんだからぁ~。といった様子で笑っておられる。
そんな二人の微笑ましいやりとりは、見ていてほのぼのとはするが。
それからソフィア様は女性同士、ベルティーナ様とまた話に花を咲かせておられ。
男性陣は側妃様の部屋を後にした。
殿下の部屋へ戻って来た僕らは、いつものソファーへ腰掛ける。
「シリル、ありがとうございました。妹に付き添って下さって。」
「ううん。僕の方こそお世話になって。学園生活中は、結構個別授業が多かったから、あんまり生徒同士で交流する機会も余裕もなくてさ。でも、これからの事を考えたら見知っておいた方がいいもんね。ソフィア様と王女様が間に入って歓迎して下さって助かったよ。」
「少しでも馴染まれた様で良かった。」
「……ただ、ちょっと気になる事があって。————殿下。」
隣のサフィルは僕を優しく気にかけてくれて、僕も笑顔で応えたが。
スッと表情を切り替えて、対面に座る殿下の方へ向き直ったら。
殿下はキョトンとした顔で目を丸めて、崩していた姿勢を少し正された。
「ん?何だ?」
「殿下はソフィア様の事、大切に想ってらっしゃいますよね?彼女を守りたいと。」
「………もちろんだ。当たり前だろ。何でそんな事…」
「だったら、やっぱり態度を改めて頂く必要がありますね。このままでは、我々はともかく、ソフィア様まで被害を受けられるのは必至ですよ。」
急に深刻な顔で言葉を零す僕に、殿下だけでなく、隣のサフィルも、殿下の後ろに立つジーノも顔色を変えた。
「それってどういう事だよ。」
「どうもこうも。殆ど皆様良い方々でしたが、さっきのパーティーで陰口を言っていた者達も居たんです。」
「へー。どいつだよ、それぇ?」
面白がっている様な、湧き上がる怒りを抑えている様な。
悪どい顔で嗤う殿下に、僕は努めて冷ややかな目線を送る。
「ソフィア様に対しては、悪感情よりも若干憐れむ様な嫌味でしたけどね。陰口の原因はロレンツォ殿下……貴方ですよ。」
「ハッ!おもしれーじゃん。なぁ、シリル。もったいぶってねーで教えてくれよ?誰なんだ、この俺に陰でコソコソ言って来る卑怯な連中は?」
なぁ?と、僕の瞳の奥に映る、目に見えない敵を挑発する様に。
殿下はゾッとする様な笑みで尋ねて来るが。
昔の僕ならいざ知らず、この横暴で傍若無人な殿下の人となりを、身をもって知っている今となっては、ある意味これこそ殿下らしいとすら思える。
「マッジ伯爵令嬢、ハイメス伯爵令嬢。……そして、サンマルティーニ伯爵令嬢です。」
「……ハハッ!ヴィオラの取り巻き伯爵令嬢3人組じゃねーか!おもしれーじゃん。どう仕返ししてやろうかな。」
「お言葉ですが、するべきでは無いと思いますけどね。」
「…………何だって?」
敵を睨み付ける様にギロリと見つめられて。
隣のサフィルは、見るからに警戒して僕を庇う様に前のめりになってくれたが。
僕は彼の膝をポンポンと軽く叩いて表情を和らげると、彼はどう表情を返せばいいか戸惑っていた。
そんな、自分の上司より恋人の僕を守ろうとしてくれる彼に向けた柔和な笑みを消し、対峙すべき問題児へと毅然とした態度で向かい直す。
「彼女らの行動は、決して褒められたものではありませんが、あんな冷笑を零してしまうのも致し方ない所もございますからね。……殿下。先日、彼女のお父君を罵ったでしょう?無理矢理乗り込んだ、彼が主催なさるパーティーの、それも…大勢の人が見つめるその中で。」
「ん?……あぁ、サンマルティーニ伯爵か。あの醜い豚ね。」
「————やっぱり人の本質って変わらないんだな。」
庭園でのささやかなパーティーを楽しんだ後、ソフィア様と共にベルティーナ様のお部屋へと戻ってきたら、殿下達も居座っており。
その彼を見つけると、ソフィア様は嬉しそうに駆け寄って行った。
「おかえり、ソフィア。中庭に行ってたんだって?」
「えぇ。ヴィオラ様が誘って下さったの。この前ご卒業されたご友人方を招いてパーティーをされていらして。私の事を皆様に紹介して下さったんです。」
「あー、ヴィオラが……。楽しめたか?」
「はい!」
まだ幼さの残る笑みで楽し気に笑う彼女に、殿下は優しい目をして話を聞いていた。
そんな二人の仲睦まじい様子を母ベルティーナ様もまた同じ優しい眼差しで見守っている。
「それで、途中でシリル様も来られてご一緒して下さったんですよ。あの巫子様の親友という事で、皆様興味津々だったご様子で。とても喜ばれてらっしゃいました。」
「あ。そうらしいな。よくあんなトコ飛び込んでったなぁ…。話聞いてビックリしたぞ。」
ソフィア様の話に、殿下は驚いた様子で僕の方に話を振って来る。
「軽く顔出ししてご挨拶させて頂いただけですよ。ソフィア様もいらっしゃいましたし。」
「でも俺、お前はあーいうトコ嫌いなんだと思ってた。」
「確かに慣れてはいませんが、避けてばかりもいられませんからね…。ソフィア様のお陰で皆様に良くして頂きました。ご一緒下さりありがとうございました。」
彼女にニコリと笑みを向けると、変わらぬ笑顔で返して下さる。
「こちらこそ。ふふ。皆様に羨ましがられて、私も鼻高々でした!」
「え?そうですか?」
「はい!是非またご一緒して下さいな。」
「それは構いませんが、僕より殿下とご一緒された方が……」
喜んでおられる理由がよく分からないが、臣下と一緒より、そういうのは夫と一緒の方が良いのでは?
僕が首を傾げると。
彼女はやれやれと言った様で、その夫の方を見やった。
「……ですって、ロレン様。」
「う“…っ。じゃあ、今度。」
「もう!絶対ですからねっ!」
怒った様に言いながらも、彼女はすぐにクスクスと笑い出した。
殿下のこの反応は想定内だったのだろうか。
仕方ないんだからぁ~。といった様子で笑っておられる。
そんな二人の微笑ましいやりとりは、見ていてほのぼのとはするが。
それからソフィア様は女性同士、ベルティーナ様とまた話に花を咲かせておられ。
男性陣は側妃様の部屋を後にした。
殿下の部屋へ戻って来た僕らは、いつものソファーへ腰掛ける。
「シリル、ありがとうございました。妹に付き添って下さって。」
「ううん。僕の方こそお世話になって。学園生活中は、結構個別授業が多かったから、あんまり生徒同士で交流する機会も余裕もなくてさ。でも、これからの事を考えたら見知っておいた方がいいもんね。ソフィア様と王女様が間に入って歓迎して下さって助かったよ。」
「少しでも馴染まれた様で良かった。」
「……ただ、ちょっと気になる事があって。————殿下。」
隣のサフィルは僕を優しく気にかけてくれて、僕も笑顔で応えたが。
スッと表情を切り替えて、対面に座る殿下の方へ向き直ったら。
殿下はキョトンとした顔で目を丸めて、崩していた姿勢を少し正された。
「ん?何だ?」
「殿下はソフィア様の事、大切に想ってらっしゃいますよね?彼女を守りたいと。」
「………もちろんだ。当たり前だろ。何でそんな事…」
「だったら、やっぱり態度を改めて頂く必要がありますね。このままでは、我々はともかく、ソフィア様まで被害を受けられるのは必至ですよ。」
急に深刻な顔で言葉を零す僕に、殿下だけでなく、隣のサフィルも、殿下の後ろに立つジーノも顔色を変えた。
「それってどういう事だよ。」
「どうもこうも。殆ど皆様良い方々でしたが、さっきのパーティーで陰口を言っていた者達も居たんです。」
「へー。どいつだよ、それぇ?」
面白がっている様な、湧き上がる怒りを抑えている様な。
悪どい顔で嗤う殿下に、僕は努めて冷ややかな目線を送る。
「ソフィア様に対しては、悪感情よりも若干憐れむ様な嫌味でしたけどね。陰口の原因はロレンツォ殿下……貴方ですよ。」
「ハッ!おもしれーじゃん。なぁ、シリル。もったいぶってねーで教えてくれよ?誰なんだ、この俺に陰でコソコソ言って来る卑怯な連中は?」
なぁ?と、僕の瞳の奥に映る、目に見えない敵を挑発する様に。
殿下はゾッとする様な笑みで尋ねて来るが。
昔の僕ならいざ知らず、この横暴で傍若無人な殿下の人となりを、身をもって知っている今となっては、ある意味これこそ殿下らしいとすら思える。
「マッジ伯爵令嬢、ハイメス伯爵令嬢。……そして、サンマルティーニ伯爵令嬢です。」
「……ハハッ!ヴィオラの取り巻き伯爵令嬢3人組じゃねーか!おもしれーじゃん。どう仕返ししてやろうかな。」
「お言葉ですが、するべきでは無いと思いますけどね。」
「…………何だって?」
敵を睨み付ける様にギロリと見つめられて。
隣のサフィルは、見るからに警戒して僕を庇う様に前のめりになってくれたが。
僕は彼の膝をポンポンと軽く叩いて表情を和らげると、彼はどう表情を返せばいいか戸惑っていた。
そんな、自分の上司より恋人の僕を守ろうとしてくれる彼に向けた柔和な笑みを消し、対峙すべき問題児へと毅然とした態度で向かい直す。
「彼女らの行動は、決して褒められたものではありませんが、あんな冷笑を零してしまうのも致し方ない所もございますからね。……殿下。先日、彼女のお父君を罵ったでしょう?無理矢理乗り込んだ、彼が主催なさるパーティーの、それも…大勢の人が見つめるその中で。」
「ん?……あぁ、サンマルティーニ伯爵か。あの醜い豚ね。」
「————やっぱり人の本質って変わらないんだな。」
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