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第2章
74話 方針の決定
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「方針はかなり決まって来たわね。じゃあ、ロレンツォ殿下には私が話付けとくわね。シリルがロレンツォ殿下に頼まれて私達をアデリートへ行かせる、なんて話になったら…王様がシリルの心象を悪くしちゃうでしょ?だから、私がロレンツォ殿下と仲良くなって、夏休みに遊びに行きたいって話になったって事にするわ。」
「……カレン、いいのか?前回、お前を攫った者達かもしれないんだぞ。」
カレンの提案に、僕は心配になったが。
「大丈夫よ。上辺は取り繕える人だし。話を聞くに、男子より女子に対しての方が当たりもマシでしょう。前回もそうだったし。協力するって言ってあげるんだから、無体は出来ない筈だわ。」
カレンはまかせて。と自身の胸に拳を作って叩いてみせた。
「分かった。すまないが、よろしく頼む。」
「うん。」
カレンは改めて頷いてくれた。
「カイト。君は出来れば、王宮の騎士達の傷を癒してやってくれ。信者を増やすんだ。そうすれば、いざという時しっかり守ってくれる。」
「大丈夫、もう何人か救済の力で治してて、めっちゃ視線が来るから。怖いくらい。」
喜んでくれるのは、まぁ良いんだけどね。
と、カイトは渇いた笑いをしていた。
その様子に、僕はカイトが王宮暮らしを嫌がっていたもう一つの要因に納得した。
男だらけで常に訓練でも傷を負う騎士団や近衛騎士達等にも、もちろん救済の力を施していたのだろう。
そうしたら、かなり強く感謝感激された様で、その圧が怖かった様だ。
不安要素は王太子だけじゃなかったんだな。
大変だなぁ。と他人事の様に思いつつ、僕は隣のテオにも言った。
「テオ。お前には、すまないがロレンツォ殿下の母君の件を調べて欲しい。どういう経緯でアデリート王に冷遇されるに至ったのか。あと、殿下の周囲の状況とか。僕は、フローレンシアの内情を少し調べてみる事にする。」
「分かりました。お任せ下さい。…ご下命下さって嬉しいですよ。ですからどうか、すまないだなんて仰らないで下さい。俺は貴方の従者ですから。」
ですから、もっと命じて頼って下さい。と…。
テオはにっこりと笑ってくれた。
そうだ。
テオは常に僕の見方をしてくれた。
シルヴィアの時には、時々我儘を言って買い物に付き合わせたりして、面倒くさそうにしていた時もあったけど。
それでも、いつも味方になってくれた。
僕の従者でいる事を誇りにしてくれていた。
それは、僕が公爵家の人間だという以前に、僕という人間そのものを僕以上に大事にしてくれた。
前回は、死ぬ事に戦々恐々としながら日々を過ごしていたのに、いざとなるとすんなり受け入れた。
心の何処かで諦めていたからだ。
そんな時でも、最期の瞬間まで、テオはそんな僕を想ってくれていた。
それなのに、僕はそんな彼の忠心を蔑ろにしてしまっていたんだな。
今度は、大事にしたい。
だからこそ、協力して欲しい。
「ありがとう。……頼りにしてる。」
僕は眉を垂れ下げてそう言うと、テオは泣きそうな顔をして笑ってくれた。
「……カレン、いいのか?前回、お前を攫った者達かもしれないんだぞ。」
カレンの提案に、僕は心配になったが。
「大丈夫よ。上辺は取り繕える人だし。話を聞くに、男子より女子に対しての方が当たりもマシでしょう。前回もそうだったし。協力するって言ってあげるんだから、無体は出来ない筈だわ。」
カレンはまかせて。と自身の胸に拳を作って叩いてみせた。
「分かった。すまないが、よろしく頼む。」
「うん。」
カレンは改めて頷いてくれた。
「カイト。君は出来れば、王宮の騎士達の傷を癒してやってくれ。信者を増やすんだ。そうすれば、いざという時しっかり守ってくれる。」
「大丈夫、もう何人か救済の力で治してて、めっちゃ視線が来るから。怖いくらい。」
喜んでくれるのは、まぁ良いんだけどね。
と、カイトは渇いた笑いをしていた。
その様子に、僕はカイトが王宮暮らしを嫌がっていたもう一つの要因に納得した。
男だらけで常に訓練でも傷を負う騎士団や近衛騎士達等にも、もちろん救済の力を施していたのだろう。
そうしたら、かなり強く感謝感激された様で、その圧が怖かった様だ。
不安要素は王太子だけじゃなかったんだな。
大変だなぁ。と他人事の様に思いつつ、僕は隣のテオにも言った。
「テオ。お前には、すまないがロレンツォ殿下の母君の件を調べて欲しい。どういう経緯でアデリート王に冷遇されるに至ったのか。あと、殿下の周囲の状況とか。僕は、フローレンシアの内情を少し調べてみる事にする。」
「分かりました。お任せ下さい。…ご下命下さって嬉しいですよ。ですからどうか、すまないだなんて仰らないで下さい。俺は貴方の従者ですから。」
ですから、もっと命じて頼って下さい。と…。
テオはにっこりと笑ってくれた。
そうだ。
テオは常に僕の見方をしてくれた。
シルヴィアの時には、時々我儘を言って買い物に付き合わせたりして、面倒くさそうにしていた時もあったけど。
それでも、いつも味方になってくれた。
僕の従者でいる事を誇りにしてくれていた。
それは、僕が公爵家の人間だという以前に、僕という人間そのものを僕以上に大事にしてくれた。
前回は、死ぬ事に戦々恐々としながら日々を過ごしていたのに、いざとなるとすんなり受け入れた。
心の何処かで諦めていたからだ。
そんな時でも、最期の瞬間まで、テオはそんな僕を想ってくれていた。
それなのに、僕はそんな彼の忠心を蔑ろにしてしまっていたんだな。
今度は、大事にしたい。
だからこそ、協力して欲しい。
「ありがとう。……頼りにしてる。」
僕は眉を垂れ下げてそう言うと、テオは泣きそうな顔をして笑ってくれた。
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