全てを諦めた公爵令息の開き直り

第２章

６６話 共有

僕は、お前との恋なんて心配なぞしていなかったが、王太子の牽制して来る様な視線が滅茶苦茶恐ろしかったんだぞ。
僕を盾にしやがったな、コノヤロウ。

僕のむかっ腹なぞ知る由もないカイトは、あっけらかんとしたまま続けた。

「俺はカレンと違って、あの話の主な登場人物はコマーシャル……まぁ、広告とかで知ってたけど、話の中身までは知らなかったからさ。取り敢えず対象者に目を付けられるのを回避してエンディングを迎えられればいいかとしか思ってなかったから。」

だから、カレン以上に救済に奔走して、対象者からは極力距離をとって。
本来敵である筈のシリルとは疎まれながらも段々仲良くなって、ただただ楽しかったと話す。
カイトにとって僕は心のオアシスだったそうだ。
僕は生きた心地がしなかったがな。

「やたらひっついて来ると思ったら、そういう事だったのか。」
「でも、普通に楽しかったよ。王太子との事が無かったとしても、シリルと居るのが一番気心知れて良かったし。」

屈託のない笑みを向けられると。
文句も言えなくなってしまうじゃないか。
色々思う所はあったが、それでもやっぱりカイトはカイトだ。
しょうがないな。と思ってしまう。

「でもまぁ、話は大体理解出来た様に思う。お前達の世界では、ここは物語の世界だが、その物語通りに話は展開していない。と言う事だな？」
「そう。舞台だけがそのままで、事件も人間関係もまるで違う。だから、私達のゲームの知識は……使えないわね。」

ゲームの知識をそのまま使えれば、事前に危機を回避する事も可能だが、それが出来ないとカレンは残念がったが。

「だが、僕らには前世の記憶がある。僕もシリルとシルヴィアとで、起こった出来事が全く違うから、またそのまま同じ事が起こるとは限らないけれど、参考に出来る事もあるんじゃないか？」
「……そうね！今回はお互いに話を共有出来たんだもの。」
「協力すれば、きっと解決出来るよ！」
「頑張りましょう！」

僕らはそれぞれに誓い合った。
一緒に協力して、必ずより良い未来を迎えよう。
絶対に、乗り越えてみせよう。…と。