77 / 85
【第8章】転生して、ようやく“本当の私”になれた
77 北方への旅路――少数精鋭の騎行
しおりを挟む
翌朝、まだ夜が明けきらないうちから、学園正門の前に馬車と騎馬兵が集結した。アレクシスが信頼する近衛騎士を中心に、わずか十数名ほどの小隊が編成されている。
大規模な軍を動かせば、第二王子派も本気で対抗して内戦になりかねない。アレクシスは“あくまで視察と護衛”という名目で、この最小限のメンバーを率いることにしたのだ。
セレナは戦闘力こそ高くないが、魔法の素養と社交術を心得ている。さらに“転生者として神殿遺跡に対峙する”という意志を胸に、鎧の代わりに動きやすい貴族風の旅装を纏った。
アレクシスは黒い軽装鎧を身につけ、鋭い眼差しでメンバーを見回している。雰囲気はもはや“王子”というより、小隊を率いる騎士団長そのものだ。
「セレナ、無理はするなよ? いざ戦闘になっても、護衛がついている。絶対に俺より前に出るな」
開口一番、アレクシスはそう念を押すが、セレナは小さく笑う。
「わかってる。私が前に出ても、足手まといになるだけだもの。何かあれば回復魔法とサポートに徹するわ」
そう、セレナも多少の魔法なら使える。転生前から魔法少女アニメを好んでいたこともあり、“勉強”を欠かさなかった結果、ささやかながら回復と防御魔法を会得している。攻撃手段には乏しいが、この旅の役には立つかもしれない。
一方、アレクシスは剣術に秀で、前線で戦うのが得意だ。ノエルがいない今、その分の負担を王子が被る形になるが、周囲の騎士も勇猛な者が揃っているから、ある程度は大丈夫だろう。
雲が薄く朝日を透かし始める頃、一行は馬車と馬に分乗して出発した。
北方への道のりは長く、最低でも数日はかかる。その間に第二王子派がどこまで遺跡を掌握してしまうか――気が急くが、無茶な駆け足はできない。
セレナは馬車の中で、アレクシスと共に地図を広げ、ノエルが残した断片情報をもとにルートを再確認する。
「……どうやらこの山脈を越えた先が神殿遺跡らしいけど、途中には魔物が出るという噂もあるわ。気を抜けないわね」
「そうだな。兵が少ない以上、魔物に足止めされるのは避けたい。最短ルートで遺跡まで行き、ノエルと合流して状況を把握する。――それが最善だ」
アレクシスが強い調子で言い切り、セレナは頷く。――リリィとの闘いも激しかったが、今回は“戦争”の可能性すらある。考えるだけで不安が増すが、王子と共にいる限り、心は折れない。
馬車が徐々に街道を離れ、荒野の道へと入っていく。木々が増え、草木が色濃く生い茂る景色へと変化していくのを、セレナは窓から眺めながら決意を強くする。
(転生して得た第二の人生、リリィや第二王子派に壊されてたまるものですか。私の未来は私が選ぶ。絶対に譲れない)
大規模な軍を動かせば、第二王子派も本気で対抗して内戦になりかねない。アレクシスは“あくまで視察と護衛”という名目で、この最小限のメンバーを率いることにしたのだ。
セレナは戦闘力こそ高くないが、魔法の素養と社交術を心得ている。さらに“転生者として神殿遺跡に対峙する”という意志を胸に、鎧の代わりに動きやすい貴族風の旅装を纏った。
アレクシスは黒い軽装鎧を身につけ、鋭い眼差しでメンバーを見回している。雰囲気はもはや“王子”というより、小隊を率いる騎士団長そのものだ。
「セレナ、無理はするなよ? いざ戦闘になっても、護衛がついている。絶対に俺より前に出るな」
開口一番、アレクシスはそう念を押すが、セレナは小さく笑う。
「わかってる。私が前に出ても、足手まといになるだけだもの。何かあれば回復魔法とサポートに徹するわ」
そう、セレナも多少の魔法なら使える。転生前から魔法少女アニメを好んでいたこともあり、“勉強”を欠かさなかった結果、ささやかながら回復と防御魔法を会得している。攻撃手段には乏しいが、この旅の役には立つかもしれない。
一方、アレクシスは剣術に秀で、前線で戦うのが得意だ。ノエルがいない今、その分の負担を王子が被る形になるが、周囲の騎士も勇猛な者が揃っているから、ある程度は大丈夫だろう。
雲が薄く朝日を透かし始める頃、一行は馬車と馬に分乗して出発した。
北方への道のりは長く、最低でも数日はかかる。その間に第二王子派がどこまで遺跡を掌握してしまうか――気が急くが、無茶な駆け足はできない。
セレナは馬車の中で、アレクシスと共に地図を広げ、ノエルが残した断片情報をもとにルートを再確認する。
「……どうやらこの山脈を越えた先が神殿遺跡らしいけど、途中には魔物が出るという噂もあるわ。気を抜けないわね」
「そうだな。兵が少ない以上、魔物に足止めされるのは避けたい。最短ルートで遺跡まで行き、ノエルと合流して状況を把握する。――それが最善だ」
アレクシスが強い調子で言い切り、セレナは頷く。――リリィとの闘いも激しかったが、今回は“戦争”の可能性すらある。考えるだけで不安が増すが、王子と共にいる限り、心は折れない。
馬車が徐々に街道を離れ、荒野の道へと入っていく。木々が増え、草木が色濃く生い茂る景色へと変化していくのを、セレナは窓から眺めながら決意を強くする。
(転生して得た第二の人生、リリィや第二王子派に壊されてたまるものですか。私の未来は私が選ぶ。絶対に譲れない)
35
あなたにおすすめの小説
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる