魔王の花嫁の護衛の俺が何故か花嫁代理になった経緯について

和泉臨音

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第一章

5話

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「その後、数十人もいた暴漢たちをカデル様があーっという間に一掃してしまわれたのです。もう、とてもお強くて驚きましたわ」
「息子がお役に立てたようで良かったです、クリスティア姫」

 うららかな日差しの昼下がり、クリスティア姫は身振り手振りを加えてうちの両親に昨日の出来事を話している。

 クリスティア姫やめてくれ……その目の前でにこにこしている父さんは俺なんかより数十倍強いんだ。俺の力なんて大したことないんだ……。

 楽し気に談笑しているクリスティア姫と両親をみつつ、ぐったりと肩を落とす俺には誰も気づかない、というか興味がないんだろう。
 楽しそうな会話の腰を折る必要もないのでとりあえずそのままにしながら、俺は紅茶を静かに飲んだ。

 あのあと予定よりも少し遅くなったが、無事にリベルタース領ヘルデのうちの屋敷に到着した。
 到着が夜半となったため、翌日に父さんたちリベルタース伯爵夫妻とエスカータ国クリスティア姫の挨拶が行われることになった。

 まあそれが今なんだが。

 なんだかすごくフレンドリーなただのお茶会になってるけどいいんだろうか、相手は一国のお姫様だぞと不安になる。

「あ、あの、そのリベルタース夫人、私はその、姫の従者でして、その」
「お気になさらないでメリーさん。クリスティア姫は勿論ですが、エスカータ国からいらした姫のお供のお二人のことも、客人としてもてなすようにとオルトゥス王より言われていますから。サヴィトさんもおかわりはいかがかしら?」
「いえ、結構です」

 母さんは基本的に人の世話をするのが好きな人だから、大喜びでお茶だの焼き菓子だの用意して勧めている。
 今日のティーセットは母さんのお気に入りのものだ。エスカータ国では有名な工房の物らしい。金の縁取りに細かく小さい花の柄が可愛らしい逸品だ。
 それだけで母さんの力の入れようが判るんだが、どんな良質な茶器でもてなされようと、そりゃ、侍女が主と一緒に座ってお茶を飲むなんて、居たたまれないだろう……サヴィト殿も居心地が悪そうだ。

「……えっと、この後の予定ですが明日、魔法転移の塔で手続きをおこない準備が出来次第、それを使い王城のあるウェスペルへ行きます」
「魔法転移の塔?」

 取りあえず話題を変える、というよりは話を進めてこの場を早く解散した方がいいと判断した俺は今後の予定を三人に伝えることにした。
 俺の説明にクリスティア姫が首を傾げる。瞳は好奇心でキラキラ輝いていた。

「魔法転移の塔はアエテルヌムの主要な街にある施設の名前ですよ。魔法にて塔の間をつなぎ、そこを通ることで移動期間の短縮と安全を確保しているわけです」

 父さんがクリスティア姫の質問に答えて、魔法転移の塔について説明する。

「使用するには皆様の魔力の認識が必要となるので手続きをしていただき、準備が整うまで我が家にてお待ちいただくことになります」
「まあ! エスカータでは聞いた事が無い移動手段です。大変便利そうですのになぜないのかしら?」
「使用するには魔力が要りますゆえ、魔族の国アエテルヌムにしかないのでしょう」
「それなら納得ですわ。魔族の皆さまは魔法の才能をお持ちですものね!」

 魔族は魔法と呼ばれる自然の理に干渉する術を生まれながらに会得している。
 ヒト族にもその力を持つ者もいるが、持たない者の方が圧倒的に多いため、魔法を使えるヒト族は魔族と同じような扱いを受けることがある。

 ヒト族は異端を排除する力が強い。
 個人主義で実力主義の魔族と違い、群れで生活をするヒト族では仕方のないことかもしれないけど。

 魔力に対して嫌悪感を持つヒトは多いが、クリスティア姫は瞳をキラキラ輝かせてサヴィト殿やメリー殿にすごいですわね! と同意を求めていた。

 もしかしたら姫はヒト族の国より魔族の国の方が肌に合うのかもと、ちょっと思った。
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