病原菌鑑定スキルを極めたら神ポーション出来ちゃいました

夢幻の翼

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第5話 中級ポーションの作成

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「昨日は美味しかったわね。素材も予定どおりに採取出来たから今日は中級ポーションを完成させるわ」

 唐揚げ料理を堪能した私は依頼されている中級ポーションの作成を本格的に再開するとのことで私は工房のテーブルに素材を広げて準備をしていた。

「では、私はいつものように家事をしていますので用事があれば声をかけてくださいね」

 ロイルはそう言うと部屋から出て自分の仕事に向かう。

 私はテーブルに並べられた素材から必要なものを取り分けて分量を計り調薬用のガラス容器へと入れていく。

(前回は品質はもうひとつだったけど成功はしたのよね。後は経験値をためて成功率と品質の向上をはかればいけると思うんだけどな)

 そんな事を考えながら容器に手をかざしてスキルを発動させるとスキルに反応した素材液が青からピンクへと変化をする。

(これ、前回と同じ色に見えるけど少しは良くなってるのかな?)

 私はそう思いながら薬品鑑定装置を取り出して出来たポーションを確認する。

【中級ポーション:低品質】

「やっぱり同じか……。まだまだ錬金の経験値が足りないんだろうな」

 私はそう呟きながら出来たポーションを別の容器に移し替えてから再度調薬を続けるもそれからは幾度となく失敗が続いた。

「うーん。とうとう中級ポーションにもならなくなってきちゃった」
 
 幾度となく失敗を重ねているうちに中級ポーションを作っているはずが低品質を通り越してポーションとしての効果を有しないただの液体が出来てしまう。

(さすがに根を詰めすぎたかな。これ以上続けても素材を無駄にするだけね)

 私は出来た失敗作にため息をつきながらそう思い少しばかり休憩をすることにした。

「ロイルいる?」

 工房を出て厨房に顔を出した私はロイルの姿を探す。

「あら、サクラお嬢様。そのお顔は行き詰まっているようですね。何か甘いものでもご用意いたしましょうか?」

 ロイルは私が行き詰まっている事を一目で察すると直ぐに気分転換を提案してくれる。

「そうね。それが良いかもしれないわね。お願いするわ」

 私はそう言って隣の食堂へと向かい、椅子に座って彼女を待った。

「お待たせしました。急だったので凝ったものは出来ませんでしたがパンケーキになります。こちらの蜂蜜をかけて召し上がられてください」

 そう言って私の目の前に出されたのは大好きなパンケーキでそれも禁断の五段重ねだった。

「ロイルありがとう!」

 私は彼女にお礼を言うとナイフとフォークを使い一口サイズに切り分けたパンケーキを頬張った。

「んー! 美味しいわ! ロイルの作るパンケーキは最高ね」

「ありがとうございます。それで調薬の方はどこで躓かれたのですか?」

「うん。それが始めこそ低品質ながらちゃんと中級ポーションになっていたんだけど途中からだんだん出来なくなって来たの。経験を積めばどんどん上手くなる筈だったのにどうしてだろ?」

 出されたパンケーキにフォークを刺しながら私が愚痴をこぼすとロイルは「これは以前サクラお嬢様のお父様から聞いた話なのですが」と前置きをしてから話をしてくれた。

「スキルを使うと確かに経験値が蓄積量されてより上位の物を作れるようにはなりますが成功率は本人の状態によって変わるものだと言われてました」

「あの人が? どういうことよ?」

 父親に対してあまり好印象を持っていない私は気乗りしない態度で続きを促す。

「お嬢様の中で魔法とはどんなもので、さらにスキルとどう違うか理解されていますか?」

「え? スキルは持って生まれた先天的な能力で魔法は知識を有して使うことの出来る後天的なもの……かな?」

「そうですね。スキルに関しては遺伝的な要素が強く先天的に発現する事が多いそうですが魔法は発現の理を理解して詠唱文字と魔法陣を扱うことにより使う事が出来るそうです。ただ、どちらも個人の精神力――私たちは分かりやすく『魔力』と呼んでいますがこれが少なくなると正常に発動しなくなるそうです」

「つまり、今の私の状況は精神力の低下――つまり『疲れているから失敗した』ということなのね」

「そうなりますね」

 ロイルはそう言って香茶のおかわりを注いでくれた。

「じゃあ、甘いものを食べてしっかり休んだらもう一度試してみるわね」

「それがよろしいかと」

 ロイルの言葉に私は頷くと突き刺したパンケーキを頬張った。

 ◇◇◇

「それじゃあもう一度挑戦してみるわね」

 気分転換と休憩を挟んで集中力の戻った私は今日何度目かとなる中級ポーションの作成を始めた。

 素材の調整も初めの頃より手早く正確にこなせるようになってきているようで準備は予定よりも早く済んで最終段階となる。

「今度こそ……」

 しっかりと集中した私の手には薄っすらと汗が滲んでいたが構わずに作業を続けるとじわじわと液体に変化が現れてくる。

「いい感じね、このまま最後まで行ければ……」

 ――シュワッ

 泡の発生音があり液体に目をやるとピンク色に変化していた。

「あっ。これ、前回よりもピンク色が濃い気がする」

 私はそう呟くと薬品鑑定装置に出来た液体を垂らして確認する。

【中級ポーション:中品質】

「やっぱり! この色の濃さで品質が変わるのね! 出来れば高品質のものが良いけれど、今の私にはこれが精一杯ね」

 ようやく納品に耐えられるレベルのポーションが出来た事に私は安堵の息をついたのだった。
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