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第30話【元勇者、情報の価値に感心する】
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「さて、王都へは約2日ほどの距離だったな。先ほどのギルドでの話だと道中に数か所の休憩ポイントと2か所の野営ポイントがあるそうだがこればかりは現場を見ないと本当に大丈夫かはわからないな」
「ですが、ギルドも金銭を取っている訳ですから信用問題にもなりますし、まるでデタラメの情報ではないと思います」
「とりあえずその情報を元に休憩場所の状態を見て判断するとしようか」
「そうですね」
俺とマリーは並んで御者席に座り、俺は周りを警戒しながら彼女の話を聞いていた。
「そう言えばアルフさんは冒険者として長くされているのですか?」
「ああ、まあこの歳だ。正式に冒険者登録したのが15歳だからかれこれももう13年になるな。ただランクを上げる行動をしてこなかったから最近ようやくBランクになったばかりなんだ」
「そうなんですね。私は商人としての登録は15の時でしたから本当にまだまだ駆出しも良いところですよ」
俺がそう話すマリーを横目でみると少し寂しそうな表情がみてとれた。
「依頼人の内情に踏み込むのはタブーだがひとつ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか?」
「その歳で行商をしなければならない理由ってなんなんだ? いや、答えたくないなら無理には聞かないが君みたいな若い娘が危険を伴う旅行商をする理由が……」
俺はそこまで言って本来あるべき存在がないことに気が回らなかった事を後悔した。
「あ、いや……すまない。深く考えもしないで興味本位のような質問をしてしまった。悪かった、聞かなかったことにしてくれ」
俺がそう言って謝るとマリーはこちらを見ずにただ前を見ながらポツリと話をしてくれた。
「当然気がついてると思いますが私には両親がいません。母は私が小さい頃に病気で亡くなり父は小さな私をこうやって馬車に乗せて行商をして育ててくれました。ようやく職業につける年齢になった私が商人の職についてすぐに父も病に倒れてしまったのです。そのとき父が残してくれた言葉にマイルーン農業国に居る叔母を頼るようにとあったのです」
「なるほど、それで無理な依頼内容で護衛依頼を出したんだな」
「はい。ただマイルーンに行くだけなら乗り合い馬車でも行けますが、父の遺してくれたこの馬車は手放したくなかったので今回のような事になってしまいアルフさんにはご迷惑をかけることになりました」
「迷惑なんてこれっぽっちもかけてないさ。俺もちょうどエンダーラから他の国へ旅がしたいと思っていたところにぴったりの依頼があったから飛びついただけだからな。それに当初は女性を含むグループのみの条件をこんなおっさん一人の護衛で受け入れてくれたんだから俺としては感謝しかねぇって事だからなにも気にする必要はないぞ」
「ありがとうございます。そう言って貰えると助かります」
マリーはそう言って微笑みながら頭をさげた。
「そろそろ仕入れた情報にあった休憩場所になるがどういったところがそれにあたるのかに興味があるな」
「どうしてですか?」
「金になるからだよ。ギルドが商人や旅人に金を出させて売る情報がどの程度なのかが分かれば町間の移動中でも金が落ちているのと一緒だからな。俺みたいなフリーの冒険者は安定した依頼がなければそういったことをして稼がなきゃやっていけない。それに、そうすることによって自分も儲かるし商人も安全に旅出来るとなればやらない手はないだろう?」
正直、勇者をやってた時には考えもしなかった事で、考えればいくらでも稼ぐ手段はあるのだと安心することが出来ていた。
「そうですね。私たち商人もそうやって助けられているのですよね」
「まあ、冒険者なんて金を稼ぐのは下手な者が多いからな。だからこそギルドのランクも上げておかないと信用もないし、信用がなければ情報も買い取ってくれないかもしれないからな。ま、そのへんは持ちつ持たれつでうまくやってくしかないさ」
「そうですね。あ、そろそろ情報にあった休憩ポイントがある場所になるみたいですよ。どういった基準で休憩ポイントと認められるのか気になるところですよね」
マリーはまるで自分のことのように休憩ポイントの情報を見てみたいと言ってくれた。
「――どうやらここのようだな」
そこは街道の道幅が広くなっている場所で、すぐそばを小川が流れている水場が浅瀬になっており馬に水を飲ませるのが容易な場所だった。
「ああ、なるほど。確かにこれならばすぐに休憩ポイントに適していると分かるな。強いて言えば少しばかり木々のせいで見通しが遮られるのが気にはなるがそのあたりは護衛がしっかりしていれば問題無いか」
俺はそう言いながら辺りの気配を確認し、特に危険が無い事をマリーに伝えてからメモにいくつかの特徴を書いていった。
「もともと町を結ぶ街道ですから作るときにいくつかの水場ポイントを経由して作られていると父から聞いたことがあります。野営にしても大抵は盗賊や獣に襲われても囲まれないような場所が選ばれているみたいですね。これは護衛の人も交代で休まなければならないために少ない人数で見張りが出来るようにするためだと聞いてます」
馬に水を飲ませながらマリーは父から聞いた話だと前置きをしながらも商人としての知識を教えてくれる。
「マリーは物知りなんだな。俺なんかは大抵ひとりで野営をしていたから自分の身を隠せる場所があればそれで良かったから安全な場所は何処だという認識は無かったな。まあ、せっかく知り得た知識だからこれからは活用させてもらうとするよ」
俺はマリーにそう言うとマジックバックからあるものを取り出した。
「ですが、ギルドも金銭を取っている訳ですから信用問題にもなりますし、まるでデタラメの情報ではないと思います」
「とりあえずその情報を元に休憩場所の状態を見て判断するとしようか」
「そうですね」
俺とマリーは並んで御者席に座り、俺は周りを警戒しながら彼女の話を聞いていた。
「そう言えばアルフさんは冒険者として長くされているのですか?」
「ああ、まあこの歳だ。正式に冒険者登録したのが15歳だからかれこれももう13年になるな。ただランクを上げる行動をしてこなかったから最近ようやくBランクになったばかりなんだ」
「そうなんですね。私は商人としての登録は15の時でしたから本当にまだまだ駆出しも良いところですよ」
俺がそう話すマリーを横目でみると少し寂しそうな表情がみてとれた。
「依頼人の内情に踏み込むのはタブーだがひとつ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか?」
「その歳で行商をしなければならない理由ってなんなんだ? いや、答えたくないなら無理には聞かないが君みたいな若い娘が危険を伴う旅行商をする理由が……」
俺はそこまで言って本来あるべき存在がないことに気が回らなかった事を後悔した。
「あ、いや……すまない。深く考えもしないで興味本位のような質問をしてしまった。悪かった、聞かなかったことにしてくれ」
俺がそう言って謝るとマリーはこちらを見ずにただ前を見ながらポツリと話をしてくれた。
「当然気がついてると思いますが私には両親がいません。母は私が小さい頃に病気で亡くなり父は小さな私をこうやって馬車に乗せて行商をして育ててくれました。ようやく職業につける年齢になった私が商人の職についてすぐに父も病に倒れてしまったのです。そのとき父が残してくれた言葉にマイルーン農業国に居る叔母を頼るようにとあったのです」
「なるほど、それで無理な依頼内容で護衛依頼を出したんだな」
「はい。ただマイルーンに行くだけなら乗り合い馬車でも行けますが、父の遺してくれたこの馬車は手放したくなかったので今回のような事になってしまいアルフさんにはご迷惑をかけることになりました」
「迷惑なんてこれっぽっちもかけてないさ。俺もちょうどエンダーラから他の国へ旅がしたいと思っていたところにぴったりの依頼があったから飛びついただけだからな。それに当初は女性を含むグループのみの条件をこんなおっさん一人の護衛で受け入れてくれたんだから俺としては感謝しかねぇって事だからなにも気にする必要はないぞ」
「ありがとうございます。そう言って貰えると助かります」
マリーはそう言って微笑みながら頭をさげた。
「そろそろ仕入れた情報にあった休憩場所になるがどういったところがそれにあたるのかに興味があるな」
「どうしてですか?」
「金になるからだよ。ギルドが商人や旅人に金を出させて売る情報がどの程度なのかが分かれば町間の移動中でも金が落ちているのと一緒だからな。俺みたいなフリーの冒険者は安定した依頼がなければそういったことをして稼がなきゃやっていけない。それに、そうすることによって自分も儲かるし商人も安全に旅出来るとなればやらない手はないだろう?」
正直、勇者をやってた時には考えもしなかった事で、考えればいくらでも稼ぐ手段はあるのだと安心することが出来ていた。
「そうですね。私たち商人もそうやって助けられているのですよね」
「まあ、冒険者なんて金を稼ぐのは下手な者が多いからな。だからこそギルドのランクも上げておかないと信用もないし、信用がなければ情報も買い取ってくれないかもしれないからな。ま、そのへんは持ちつ持たれつでうまくやってくしかないさ」
「そうですね。あ、そろそろ情報にあった休憩ポイントがある場所になるみたいですよ。どういった基準で休憩ポイントと認められるのか気になるところですよね」
マリーはまるで自分のことのように休憩ポイントの情報を見てみたいと言ってくれた。
「――どうやらここのようだな」
そこは街道の道幅が広くなっている場所で、すぐそばを小川が流れている水場が浅瀬になっており馬に水を飲ませるのが容易な場所だった。
「ああ、なるほど。確かにこれならばすぐに休憩ポイントに適していると分かるな。強いて言えば少しばかり木々のせいで見通しが遮られるのが気にはなるがそのあたりは護衛がしっかりしていれば問題無いか」
俺はそう言いながら辺りの気配を確認し、特に危険が無い事をマリーに伝えてからメモにいくつかの特徴を書いていった。
「もともと町を結ぶ街道ですから作るときにいくつかの水場ポイントを経由して作られていると父から聞いたことがあります。野営にしても大抵は盗賊や獣に襲われても囲まれないような場所が選ばれているみたいですね。これは護衛の人も交代で休まなければならないために少ない人数で見張りが出来るようにするためだと聞いてます」
馬に水を飲ませながらマリーは父から聞いた話だと前置きをしながらも商人としての知識を教えてくれる。
「マリーは物知りなんだな。俺なんかは大抵ひとりで野営をしていたから自分の身を隠せる場所があればそれで良かったから安全な場所は何処だという認識は無かったな。まあ、せっかく知り得た知識だからこれからは活用させてもらうとするよ」
俺はマリーにそう言うとマジックバックからあるものを取り出した。
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