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第15話【元勇者、護衛の依頼を聞く】
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「早速なんだけど隣国へ向かう商隊なんかの護衛依頼ってないか?」
「護衛依頼? しかも隣国へ向かう商隊とか、もう街を出るつもりなのか?」
「ランクアップ試験を受けさせて貰ってすぐには少しばかり気が引けるけどちょっと訳ありでね。もともと各地を旅してたから一箇所に留まるのは性に合わないんだよ」
俺は街を出る理由を旅をしていたからとでまかせを言いゴタゴタに巻き込まれる前に国から出たかったに他ならない。
「むう、そうか。確かに今は魔王軍との戦いに勝利して冒険者の仕事、特に討伐依頼が減っているからな。しかし他国への護衛か……あったか? そんな依頼」
マッハは横にいた部下にそう聞いてみるとあっさりと答えが返ってきた。
「ちょうど良いのがあるではないですか。条件が厳しくてとても受けてくれる人なんて居ないと説得しても取り下げなかったあの依頼が……」
部下の言葉にマッハは「ああ、あれか」と思いだすように頭を掻きならつぶやいた。
「あるんだな?」
「んー。あるにはあるがいろいろと問題があって君には無理のある依頼だぞ」
マッハがはっきりとしない態度で曖昧な返答をしてくるので「とりあえず依頼の内容を教えてくれないか?」と俺がマッハのとなりのギルド職員にうながすと彼女はちらりとマッハを見て彼がうなずくのを確認すると説明をはじめてくれた。
「――簡単に説明しますと依頼者は大手の商会ではなく個人の小規模な行商人になります。行き先は隣国のポンドール国のさらに先、広大な大森林と農地を有するマイルーン農業国になります。距離にして行商馬車で約10日ほどで、途中にあるいくつかの村や町を経由して進むことになります」
「んー? 確かにちと遠いことは遠いがそのくらいの距離ならばそれほど大変じゃない気もするが、他にもなにか問題があるのか?」
「はい。まずは護衛の期間ですがマイルーン農業国までの片道を指定しておられますのでこの街を拠点とされている方には戻る旅路にかかる金額は自らの負担となるため受ける方は現在のところ皆無となっています」
「なるほど確かに片道切符じゃあ難しいのは理解できる」
「次に報酬額についてですがマイルーン農業国の首都までの護衛代金が金貨で10枚、うちギルドへの手数料が3割なので金貨3枚。残りの金貨7枚が報酬となるのですが……」
「ん? 確かに少しばかり遠いが、かかる日数からすれば金貨7枚はそれほど少ないとは思わないが何か問題があるのか?」
「はい。普通の場合、護衛にあたるのはパーティー単位での受注となりますので例えば4人組のパーティーならば金貨7枚だと一人あたり金貨2枚にも満たないですよね? しかもこれは成功報酬扱いですので向こうに到着してから直接依頼者から支払ってもらわなければなりません」
「護衛依頼の報酬は成功報酬で問題ないんじゃないか? 逆に先払いだと途中で逃げられたらどうしようもないだろう?」
「はい。確かにそうなんですが普通は前払いで半分、完了時に残りを払うのが一般的でしかも本来ならばギルドに先払いで全てを預けるのがルールなんです。依頼人はきちんと支払えることを証明するために、引き受ける冒険者はギルドへの報告義務と依頼者からの報酬の取りはぐれのないように。そしてギルドはきちんと手数料が納められるようとの配慮からです」
「だが、今回は一方通行だからギルドに預託金を預けても依頼を受けた者への支払い方法がないということか」
「はい。そのとおりです」
「うーん。まあ、俺の場合はどうせすぐにはこっちに戻るつもりも無いし、道中の食事だけ提供してもらえれば成功報酬で構わないんだけどな」
「最後に一番の問題がありまして」
「まだあるのかよ!?」
「実はこの依頼者というのが若い女性なので護衛のメンバーの中に必ず女性がいる事が条件なんです」
「それは最初に言わなきゃ駄目なやつじゃねぇか!!」
「はうっ! ごめんなさい」
おもわず大声でツッコミをいれてしまった俺に説明をしてくれていた女性は涙目で謝ってくる。
「いや、怒鳴ってすまない。しかし、そうとなると俺は誰か一緒に行ってくれる女性のパートナーを見つけるしかないのか……うん。無理だな」
俺は出来もしないことに時間を使うほど暇ではなかったのですぐにそう判断して別の依頼はないかとマッハに話を振った。
「無いな」
取り付く島もないとはこのことかとため息をはく俺を見て先ほどから対応してくれていた女性が「ダメ元で依頼者と話されてはいかがですか?」と提案をしてくれた。
(ダメ元……ってギルド職員の言うことではない気もするが確かに他になければ話くらいは聞いても良いかもしれないな)
「ギルドがそう言うなら一応話をしてみてもいいが若い女性なんだろ? こんないい歳したおっさんが一人で護衛受けますと言ったら警戒されて終いには変態あつかいをされたりしないだろうな?」
俺が考え得る懸念を話すと横で聞いていたマッハが「まあ、そうなったらそうなった時よ」と他人事だと思って好き放題言って笑った。
「護衛依頼? しかも隣国へ向かう商隊とか、もう街を出るつもりなのか?」
「ランクアップ試験を受けさせて貰ってすぐには少しばかり気が引けるけどちょっと訳ありでね。もともと各地を旅してたから一箇所に留まるのは性に合わないんだよ」
俺は街を出る理由を旅をしていたからとでまかせを言いゴタゴタに巻き込まれる前に国から出たかったに他ならない。
「むう、そうか。確かに今は魔王軍との戦いに勝利して冒険者の仕事、特に討伐依頼が減っているからな。しかし他国への護衛か……あったか? そんな依頼」
マッハは横にいた部下にそう聞いてみるとあっさりと答えが返ってきた。
「ちょうど良いのがあるではないですか。条件が厳しくてとても受けてくれる人なんて居ないと説得しても取り下げなかったあの依頼が……」
部下の言葉にマッハは「ああ、あれか」と思いだすように頭を掻きならつぶやいた。
「あるんだな?」
「んー。あるにはあるがいろいろと問題があって君には無理のある依頼だぞ」
マッハがはっきりとしない態度で曖昧な返答をしてくるので「とりあえず依頼の内容を教えてくれないか?」と俺がマッハのとなりのギルド職員にうながすと彼女はちらりとマッハを見て彼がうなずくのを確認すると説明をはじめてくれた。
「――簡単に説明しますと依頼者は大手の商会ではなく個人の小規模な行商人になります。行き先は隣国のポンドール国のさらに先、広大な大森林と農地を有するマイルーン農業国になります。距離にして行商馬車で約10日ほどで、途中にあるいくつかの村や町を経由して進むことになります」
「んー? 確かにちと遠いことは遠いがそのくらいの距離ならばそれほど大変じゃない気もするが、他にもなにか問題があるのか?」
「はい。まずは護衛の期間ですがマイルーン農業国までの片道を指定しておられますのでこの街を拠点とされている方には戻る旅路にかかる金額は自らの負担となるため受ける方は現在のところ皆無となっています」
「なるほど確かに片道切符じゃあ難しいのは理解できる」
「次に報酬額についてですがマイルーン農業国の首都までの護衛代金が金貨で10枚、うちギルドへの手数料が3割なので金貨3枚。残りの金貨7枚が報酬となるのですが……」
「ん? 確かに少しばかり遠いが、かかる日数からすれば金貨7枚はそれほど少ないとは思わないが何か問題があるのか?」
「はい。普通の場合、護衛にあたるのはパーティー単位での受注となりますので例えば4人組のパーティーならば金貨7枚だと一人あたり金貨2枚にも満たないですよね? しかもこれは成功報酬扱いですので向こうに到着してから直接依頼者から支払ってもらわなければなりません」
「護衛依頼の報酬は成功報酬で問題ないんじゃないか? 逆に先払いだと途中で逃げられたらどうしようもないだろう?」
「はい。確かにそうなんですが普通は前払いで半分、完了時に残りを払うのが一般的でしかも本来ならばギルドに先払いで全てを預けるのがルールなんです。依頼人はきちんと支払えることを証明するために、引き受ける冒険者はギルドへの報告義務と依頼者からの報酬の取りはぐれのないように。そしてギルドはきちんと手数料が納められるようとの配慮からです」
「だが、今回は一方通行だからギルドに預託金を預けても依頼を受けた者への支払い方法がないということか」
「はい。そのとおりです」
「うーん。まあ、俺の場合はどうせすぐにはこっちに戻るつもりも無いし、道中の食事だけ提供してもらえれば成功報酬で構わないんだけどな」
「最後に一番の問題がありまして」
「まだあるのかよ!?」
「実はこの依頼者というのが若い女性なので護衛のメンバーの中に必ず女性がいる事が条件なんです」
「それは最初に言わなきゃ駄目なやつじゃねぇか!!」
「はうっ! ごめんなさい」
おもわず大声でツッコミをいれてしまった俺に説明をしてくれていた女性は涙目で謝ってくる。
「いや、怒鳴ってすまない。しかし、そうとなると俺は誰か一緒に行ってくれる女性のパートナーを見つけるしかないのか……うん。無理だな」
俺は出来もしないことに時間を使うほど暇ではなかったのですぐにそう判断して別の依頼はないかとマッハに話を振った。
「無いな」
取り付く島もないとはこのことかとため息をはく俺を見て先ほどから対応してくれていた女性が「ダメ元で依頼者と話されてはいかがですか?」と提案をしてくれた。
(ダメ元……ってギルド職員の言うことではない気もするが確かに他になければ話くらいは聞いても良いかもしれないな)
「ギルドがそう言うなら一応話をしてみてもいいが若い女性なんだろ? こんないい歳したおっさんが一人で護衛受けますと言ったら警戒されて終いには変態あつかいをされたりしないだろうな?」
俺が考え得る懸念を話すと横で聞いていたマッハが「まあ、そうなったらそうなった時よ」と他人事だと思って好き放題言って笑った。
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