星の堕ちた世界で~終末世界のエルフ~

黒幸

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23 おつよろ

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「結構、倒したよね」
「うん。倒したと思う」

 ユーくんと顔を見合わせて、頷く。
 周囲には消し炭となったスライムだったモノの残骸が散乱している。
 また、犠牲になった人々や獣だったモノの骨も散乱している。
 一体、どれだけ食い散らかせば、こんなになるのかと考えると恐ろしい。

 スライムというか、ブロッブはこれでも攻撃性があまりなくて、危険度で考えれば低い部類のモンスターだとされている。
 それなのにスライム退治として、レイドの対象になっているのは事実であって。
 多分、それなりに数が集まると危険性が高まるのかもしれない。
 単体では大したことなくても集団になると危ないのかな?

「こっちも片付いたよ」

 レイさんは一人であらかた片付けたようだ。
 バルディエルに聞くと三人で合計して、かなりの数のブロッブを倒したことがポイントで分かる。
 大量発生と言ってもいい事態だろう。

 ブロッブがどういう風に増えていく種なのかは分からないけど、これだけ増えるとさすがに素人考えでもおかしいと感じる。
 増えすぎると抑制すべく、何らかの力が働くなんて話も聞く。
 それがプレイヤーによる討伐なのかと聞かれると違うとは思うんだけど……。

「それにしても……」
「おかしいよねー」
「全くですね」

 明らかにポイントがおかしなことになっている。
 コニーさんは一人で一体、何と戦っているのか。
 恐らくは「テケリ・リ」と鳴くヤバイ生き物とやり合っているので間違いないはず。

「ねえ、バルディエル。あの変な鳴き声の生き物って……」
『そうだね。しかるべき時がきたら、お教えするのもやぶさかではないとも言えなくもなく』
「もしもーし? バルディエルくん?」

 駄目だ、この垂れ耳うさちゃん、壊れてやがる!
 ユーくんに目配せするとすぐに実行に移してくれた。

「メルキセデクは分かる?」
『……ョ……スはとても楽しい生き物です。サンタクロースや妖精、ユニコーンも友達です。ぎーーがーーーぴーーー。電波が入りにくくなっております』

 ユーくんもこりゃ、あかんというジェスチャーをしている。
 何で聞こうとするとグリゴリが揃いも揃って、挙動がおかしくなるのか。
 聞いてはならないことなのか。
 それとも知ってはいけないことなのか。

 レイさんもお手上げというジェスチャーをしていた。
 どうやら、同じように質問したようだ。
 見当違いの答えを言ってきたか、はぐらかされたんだろう。

「稼げたし、コニーさんに連絡とって、そろそろお開きにしましょうか?」
「うん。分かった」

 レイさんも無言でサムズアップしているのでオーケーということで。
 ポイントは稼げているどころの騒ぎじゃない。
 ブロッブを倒した分のみを換算しても異常なくらい稼いでいる。
 ざっと一ヶ月くらいの稼ぎを一日でやってしまった感覚である

 そこにコニーさんの分が加算される。
 これがまた異常なのだ。
 一年分とは言えないまでも余裕で半年分くらいを稼いでしまった。
 当分、働かなくてもいいだろう。

『その必要はなさそうだよ、ミレイユ。コノテーションから、DM(ダイレクトメッセージ)がきたよ』
「何て、来てたの?」

 バルディエルは元がサポートのAIとは思えないほどに(うさぎなのに)表情が豊かだ。
 満面の笑みを浮かべるうさちゃんって、よく分からない図ではあるけど。

『諸君の健闘を称える。おつよろ! とのことだよ』
「おつ……よろ? お疲れ様でした! また、よろしくお願いしますを略したのかな?」
「意外なキャラだね。ぷっくくくく」

 ユーくんはお腹を抱えて、笑い転げているし、レイさんも口許を手で押さえて、笑いをこらえているみたい。
 わたしも思わず、吹き出しかけた。
 あのクールビューティーって雰囲気ましましで喋る時もどちらかと言えば、小声のコニーさんが……。
 想像しただけで笑えるのはどうにかして欲しい。

 でも、そんなキャラの人が、どう見てもやばそうなのを一人で相手しちゃった訳なんだよね。
 何だか、どっと疲れた……。
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