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本編
第18話 あたしも一緒にやりたいわ
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「今日が土曜でよかったぁ……」
結局、良く寝られないまま朝を迎えてしまった。
最悪の気分。
変な夢を見ちゃうし、変な夢のせいで寝られなくなるし。
寝ぼけ眼で髪の毛もボサボサのまま、顔を洗って気合入れようと洗面所に向かうとタケルとバッタリ、出くわした。
「うわっ、アリス……今日はいつもより、そのアレだね」
「んー、ちょっと寝れなかったのよ」
タケルはいつものようにあたしに接してくれる。
今のあたしはアレでしょ。
百年の恋も冷める状態なんじゃない?
頭ボサボサだもん。
おまけに目はショボショボしてるし。
でも、今更、取り繕うような関係じゃないよね、あたしたちって。
いいところだけじゃない。
悪いところだって、全部知ってる。
そんな全部含めて、あたしはタケルが好き。
だから、好きって言うって決めたんだから。
「でも、今じゃないことは確かだわ」
「何の話?」
「な、何でもないからっ。顔洗うから、あまり見ないでよね」
「はいはい。うちのお姫様の仰せのままに」
タケルが不思議そうに首を傾げて、あたしを真っ直ぐ見つめるとなぜか、頭をポンポンと撫でてから、洗面所を出ていった。
な、何なの……今の何?
めっちゃ幸せな気分で顔が変なことになってそう。
バ、バレてないよね?
あたしは慌てて、髪を軽くまとめると洗顔フォームを顔全体に付けて、誤魔化すことにした。
👧 👧 👧
朝食も平日と同じでユイナさんはいなくって、あたしとタケルの二人きりで静かな時が過ぎていく。
「ねぇ、タケルは今日、何するの?」
「え? 今日はゆっくり、しようかなって」
「ゆっくりねぇ。ゲームするだけでしょ?」
「ははっ、バレてたのか。今、やってるゲームはネトゲなんだけど面白いんだよね」
「ふぅーん、楽しそうね?」
あたしはトーストを口に咥えたまま、頬杖をついて彼のことを上目遣いに見つめながら、睨んでみる。
こういうのに男は弱いって、雑誌に載ってたし、モデル仲間も言ってた。
ただ、タケルがこれでドキッとしてくれるって保証はないんだけど。
「う、うん? 楽しいよ」
「ホント? じゃあ、あたしも一緒にやりたいわ。いいでしょ?」
楽しいよって、笑顔だったタケルの顔が凍り付いた。
そんなにびっくりしたのかしら?
一緒にゲームやりたいって言っただけなのに。
「……それは無理かな」
「何で? あたしに見られるとまずいゲームなの?」
「そういう訳じゃないんだけど……無理なんだよね」
タケルの顔がとても困っているのが分かった。
問い詰める為に聞いたんじゃなくって、ただ、タケルが楽しく遊んでるところを見ていたいって思っただけなのに。
「見られたら困るとかじゃないんだ。ネトゲなんだよね。普通のネトゲなだけなら、アリスに見てもらいながら、遊べるんだけど」
「それが出来ないってことなの? 一体、何やってるのよ、タケル」
「うーん、言っちゃっていいのかな。バーチャルのなんだよ。VRってやつなんだけど」
タケルは言い出すのを迷ってるような複雑な表情を浮かべて、言う。
珍しいかもしれない。
タケルがこういう顔するのって、年に数回あるか、ないかだと思う。
「ふ、ふぅーん、そんなので遊んでるんだぁ」
え?
VRって、どっかで聞いたような気がするってゆーか、それ、あたしがやってるのと同じなの?
まさかねぇ、そんな訳ないよね。
それも言うのを迷うっていうのはどういうことなの?
あたしに知られちゃ、まずい理由は何なのよ?
「バーチャルのゲームだったら、あたしと一緒に遊ぶって選択肢はなかったの?」
問い詰めたくないのに問い詰めてる感じが強くて、自分でも嫌になってくる。
もう少し、言い方ってものを考えるべきよね。
でも、そう簡単にやめられないと思う。
もっと意識しないと癖は直しにくいもん。
「一緒に遊ぶ約束した人から、秘密にしておくようにって、言われてたんだ」
「何、それ。ゲームで遊ぶのに秘密って……」
めっちゃ、怪しいじゃないの。
秘密にして遊ばないといけないとか、浮気する男の言い訳みたい。
気に入らないわ。
よーし、決めた。
「まぁ、いいわ。タケルの趣味に口を出すほど、干渉する気はないもん。そんなことされたら、嫌でしょ?」
「それは……そうだけど。もしかして、怒ってる?」
「え? 怒ってないけど何で? それでね、タケル。あたし、ちょっと外に出るわね。折角の休みだし、ショッピング日和だから」
「じゃあ、僕も荷物持ちでついていこうか?」
「ううん、大丈夫。そんな買い物する予定ないから、荷物なんて出ないもん。タケルはゆっくりゲームで遊んでいいよっ」
「な、何か、おかしいなぁ……」
あたしの作戦はこうだ。外出する振りをして、こっそりと自室に戻る。
それであたしもすぐにログインすれば、確かめることが出来る。
そうと決まれば早速、実行あるのみ!
あたしは部屋へ戻ると出かけもしないのによそ行きのブラウスとロングスカートを着込み、バッチリとメイクまでした。
『じゃあ、行ってくるねっ』とタケルにわざわざ言ってから、玄関を出る。
彼が部屋に入って、ログインが終わったくらいのタイミングを見計らって、そっと、足音を忍ばせ部屋に戻った。
「あたしの考えてる通りなら、彼がタケルなのよね」
彼にどうやって話を切り出せばいいのかと悩みつつ、アースガルドの世界にログインするのだった。
結局、良く寝られないまま朝を迎えてしまった。
最悪の気分。
変な夢を見ちゃうし、変な夢のせいで寝られなくなるし。
寝ぼけ眼で髪の毛もボサボサのまま、顔を洗って気合入れようと洗面所に向かうとタケルとバッタリ、出くわした。
「うわっ、アリス……今日はいつもより、そのアレだね」
「んー、ちょっと寝れなかったのよ」
タケルはいつものようにあたしに接してくれる。
今のあたしはアレでしょ。
百年の恋も冷める状態なんじゃない?
頭ボサボサだもん。
おまけに目はショボショボしてるし。
でも、今更、取り繕うような関係じゃないよね、あたしたちって。
いいところだけじゃない。
悪いところだって、全部知ってる。
そんな全部含めて、あたしはタケルが好き。
だから、好きって言うって決めたんだから。
「でも、今じゃないことは確かだわ」
「何の話?」
「な、何でもないからっ。顔洗うから、あまり見ないでよね」
「はいはい。うちのお姫様の仰せのままに」
タケルが不思議そうに首を傾げて、あたしを真っ直ぐ見つめるとなぜか、頭をポンポンと撫でてから、洗面所を出ていった。
な、何なの……今の何?
めっちゃ幸せな気分で顔が変なことになってそう。
バ、バレてないよね?
あたしは慌てて、髪を軽くまとめると洗顔フォームを顔全体に付けて、誤魔化すことにした。
👧 👧 👧
朝食も平日と同じでユイナさんはいなくって、あたしとタケルの二人きりで静かな時が過ぎていく。
「ねぇ、タケルは今日、何するの?」
「え? 今日はゆっくり、しようかなって」
「ゆっくりねぇ。ゲームするだけでしょ?」
「ははっ、バレてたのか。今、やってるゲームはネトゲなんだけど面白いんだよね」
「ふぅーん、楽しそうね?」
あたしはトーストを口に咥えたまま、頬杖をついて彼のことを上目遣いに見つめながら、睨んでみる。
こういうのに男は弱いって、雑誌に載ってたし、モデル仲間も言ってた。
ただ、タケルがこれでドキッとしてくれるって保証はないんだけど。
「う、うん? 楽しいよ」
「ホント? じゃあ、あたしも一緒にやりたいわ。いいでしょ?」
楽しいよって、笑顔だったタケルの顔が凍り付いた。
そんなにびっくりしたのかしら?
一緒にゲームやりたいって言っただけなのに。
「……それは無理かな」
「何で? あたしに見られるとまずいゲームなの?」
「そういう訳じゃないんだけど……無理なんだよね」
タケルの顔がとても困っているのが分かった。
問い詰める為に聞いたんじゃなくって、ただ、タケルが楽しく遊んでるところを見ていたいって思っただけなのに。
「見られたら困るとかじゃないんだ。ネトゲなんだよね。普通のネトゲなだけなら、アリスに見てもらいながら、遊べるんだけど」
「それが出来ないってことなの? 一体、何やってるのよ、タケル」
「うーん、言っちゃっていいのかな。バーチャルのなんだよ。VRってやつなんだけど」
タケルは言い出すのを迷ってるような複雑な表情を浮かべて、言う。
珍しいかもしれない。
タケルがこういう顔するのって、年に数回あるか、ないかだと思う。
「ふ、ふぅーん、そんなので遊んでるんだぁ」
え?
VRって、どっかで聞いたような気がするってゆーか、それ、あたしがやってるのと同じなの?
まさかねぇ、そんな訳ないよね。
それも言うのを迷うっていうのはどういうことなの?
あたしに知られちゃ、まずい理由は何なのよ?
「バーチャルのゲームだったら、あたしと一緒に遊ぶって選択肢はなかったの?」
問い詰めたくないのに問い詰めてる感じが強くて、自分でも嫌になってくる。
もう少し、言い方ってものを考えるべきよね。
でも、そう簡単にやめられないと思う。
もっと意識しないと癖は直しにくいもん。
「一緒に遊ぶ約束した人から、秘密にしておくようにって、言われてたんだ」
「何、それ。ゲームで遊ぶのに秘密って……」
めっちゃ、怪しいじゃないの。
秘密にして遊ばないといけないとか、浮気する男の言い訳みたい。
気に入らないわ。
よーし、決めた。
「まぁ、いいわ。タケルの趣味に口を出すほど、干渉する気はないもん。そんなことされたら、嫌でしょ?」
「それは……そうだけど。もしかして、怒ってる?」
「え? 怒ってないけど何で? それでね、タケル。あたし、ちょっと外に出るわね。折角の休みだし、ショッピング日和だから」
「じゃあ、僕も荷物持ちでついていこうか?」
「ううん、大丈夫。そんな買い物する予定ないから、荷物なんて出ないもん。タケルはゆっくりゲームで遊んでいいよっ」
「な、何か、おかしいなぁ……」
あたしの作戦はこうだ。外出する振りをして、こっそりと自室に戻る。
それであたしもすぐにログインすれば、確かめることが出来る。
そうと決まれば早速、実行あるのみ!
あたしは部屋へ戻ると出かけもしないのによそ行きのブラウスとロングスカートを着込み、バッチリとメイクまでした。
『じゃあ、行ってくるねっ』とタケルにわざわざ言ってから、玄関を出る。
彼が部屋に入って、ログインが終わったくらいのタイミングを見計らって、そっと、足音を忍ばせ部屋に戻った。
「あたしの考えてる通りなら、彼がタケルなのよね」
彼にどうやって話を切り出せばいいのかと悩みつつ、アースガルドの世界にログインするのだった。
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