【完結】日本で生まれたのに見た目はファンタジーな私!日本語しか喋れないんだけど、何か悪いの?~ピンク髪のヒロインはVRゲームの中で恋愛する~

黒幸

文字の大きさ
上 下
22 / 43
本編

第17話 僕が嘘をつくような顔に見えますか?

しおりを挟む
「仲が良い人と喧嘩しちゃったの」
「あぁ、それで剣を振ってたんですね。でも、ほら喧嘩する程、仲が良いって言いますよ。リナさんはその人に謝りたいんでしょ?」

 ランスさんにも嘘をついちゃったなぁ。
 ホントは喧嘩じゃないもん。
 あたしが勝手に怒ってるだけ。
 それは喧嘩じゃない。
 それに想像したくないけどあの二人、もう付き合っていて、恋人だったら、あたしがお邪魔虫なだけで……。

「うん……あたしが悪いから、謝りたいわ。彼はあたしが不機嫌になってて、困ってるかもしれないし。もしかしたら、我が儘ばっかのあたしに愛想尽かしたのかも」
「彼……ですか? 女の子同士の喧嘩かと思ったんだけど、違ったんだね」

 ランスさんの声色はなぜか、動揺を隠せてない。
 何で動揺してるのか、分かんないわね。
 バケツのせいで表情読みにくいから、余計に分かんない。

「彼って、言っても彼氏じゃないわ。幼馴染なの」
「そうなんですか。リナさん、もてそうなのでてっきり、彼氏なのかと思いましたよ。そっか、幼馴染なのか」

 ランスさんは腕組みをして、何かを考えてる素振りをしてる。
 バケツだから、分かりにくいけど多分、幼馴染が琴線に触れたとか?

「え? あたしがもてそうに見えるの? そんな要素ないってば。告白されたこともないもん」
「そうなんですか? こんなに声がかわいいのに」

 だいたい、フード被ってるから、顔が見えないのにもてそうって、思える?
 声? 声がかわいいって、そうなの?
 今まで言われたことないんだけどランスさんの言い方に迷いがないから、ホントなのかな。タケルもかわいいって、言ってくれるのかな……。

「そうなの? ホントに? そんなこと言われたことなくって」
「本当ですよ。僕が嘘をつくような顔に見えますか?」

 彼はバケツの癖にのたまいましたよ。
 バケツなんですけど?

「やだぁ、あなた顔見えてないじゃない。あはは」
「そういえば、そうでしたね、ははっ」

 気が付いたら、無意識に笑ってた。
 というより、ランスさんが落ち込んでるあたしを元気づけようとしてくれたんだ。
 ホントにいい人みたい。

「ちょっとだけ、元気が出たかも。あなたのお陰ね」
「あっ」
「どうしたの? 急に変な声出して」
「そろそろ、落ちないともう結構、いい時間みたいですよ」
「そうなの? って、夕食近いじゃない。まずいわ」

 折角、いい感じで友人くらいにはなれそうだったのにまさかの時間切れなんてね。
 あたしたちは慌てて、ギルドハウスに戻りログアウトするのでした。

 夕食の支度をしようとキッチンに行って、冷蔵庫を確認。
 案の定、何も無い。
 食材が全く無い。
 あるのはアルコール類や果汁飲料などの飲み物ばかり。
 フリーズした。

「これ、ユイナさんに怒られるやつじゃない……」

 でもなぜか、家にいたタケルに『まだ、間に合うから大丈夫だよ』と励まされて、一緒に近所のスーパーに買い物に行くことになった。
 まるで新婚夫婦みたいじゃないと思ってるのはあたしだけなんだろう。
 タケルは単なる善意で手伝ってくれてるだけだもん。

 🌃 🌃 🌃

 ――三年後
 タケルが日本からいなくなって、もう三年も経ってしまった。
 あたしはショックから、モデルとしての活動も一時期、封印して家に閉じこもった。
 カオルやスミカに支えられて、モデルとして表舞台に復帰したのはつい最近のことだ。
 モデルとして有名になれば、タケルと会えるなんて、馬鹿げた夢を見ていたのかもしれない。

『楠木選手はもはや日本代表のエースストライカーといっても過言ではありませんね』
『彼ほどの選手が高校まで無名だったのが不思議なくらいですね』

 タケルは足利さんを選んだ。あたしを捨てて。
 それは違うよね。
 あたしたちはそもそも、付き合ってすらいなかったんだ。
 好きだったのはあたしからの一方通行でタケルは迷惑に思ってたんだろう。
 だから、負けちゃったんだね、あたし。

『彼の才能を見出した足……』

 あたしはそれ以上、聞くのも見るのも嫌になって、テレビを消した。
 彼の隣にいるのはあたしだと思っていたのにそれは間違いだったのだから。
 彼の隣にふさわしかったのは足利さんだったんだ。あたしはタケルの足枷になっていただけ。
 彼が羽ばたくのを妨げる忌まわしい魔女。
 そんなあたしに生きる意味なんて、あるのかな……。

 🌃 🌃 🌃

「いやあああああああ」

 自分の悲鳴で目が覚めるなんてね。悪夢……よね?
 現実じゃないよね?
 ハァハァという自分の激しい呼吸音が寝室に響いて、うるさい。
 でも、あたしはそれでさっきのが単なる夢で現実ではないと気付いた。

「あたしはタケルの隣にいちゃ、いけないのかな」

 あたしの声に応えてくれる者なんていやしない。
 自分で決めなきゃ、いけないんだよね。
 あれ? そう言えば、あたしって、タケルに好きって言ったことあったかな。
 言わなきゃ伝わらないって、教えてもらったよね。

「うん、明日、伝えてみよう」

 そう心で密かに誓いを立てると寝ようと頑張ってみるのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...