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第二部 名も無き島の大迷宮
第72話 お姫様の隠し子発覚!?
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わたしはレオと砂浜への道を急いでいる。
メニエに頼んだ衣装が仕上がったという連絡が来たのだ。
シン――異なる次元の世界から、この世界に落ちてきた異邦人の一人で日本人の青年――の発案で遠隔連絡に使える魔道具を開発しておいて、よかった。
でも、まだ簡単な文字を短く、伝える程度しか出来ないわ。
改良の余地ありというところかしら?
「ありがとう、レオ君」
最近のレオはわたしが何も言わなくてもエスコートするように手を繋いでくれる。
きれいな所作だから、本当に王子様みたいで胸がドキドキする。
ちょっと恥ずかしそうにする辺り、わたしを意識しているのよね?
家族や友人ではない。
もっと特別な存在として、君に見て欲しい。
そう願ったら、ダメ?
「行きましょ」
「うん」
ミスリル繊維を使ったわたしのバトルドレス一式。
それに浮遊の魔石を取り付けたケープマント。
余った繊維でレオとネズミ君のシャツとトラウザーも頼んでおいた。
防御の加護がかかった魔石を取り付けてあるから、以前、百貨店で購入した防具類と合わせれば、かなりの防御性能が期待出来るわ。
わたしが使う姫巫女の支援魔法を入れたら、噂の迷宮とはいっても余裕ではなくって?
「ねぇ、レオ君。その武器はどうなの?」
「ああ。これのこと?」
指を絡め合って、手を繋いでいると君の体温を感じられて、幸せな気分になれるから好き。
一緒に寝ているのとは違ったドキドキが味わえるんですもの。
でも、チラチラと視界に入って、気になるのが腰に佩いているちょっと変わった形状の長剣。
半円を描くような反った刀身は見たことがない。
「えっと……それ、何だったかしら? カタッーナ?」
「カッターナだよ、多分」
「そうそう、それだわ」
お舅様一行が『深淵の魔窟』から、持ち帰った戦利品の一つだった。
正直、あまり使えそうな物がないというのがわたしの判断。
それくらいのアイテムなら、収納に適当にしまっているのよりも使えそうにないと思ったわ。
その中でレオが目を輝かせて、手に取ったのがカッターナ。
ミスリル製のロングソードでもダメだったのよね。
「これ、使いやすいんだ」
「そうなの?」
「うん」
君がそう言って、白い歯を覗かせ、満面の笑みを見せてくれるだけでわたしも嬉しいわ♪
ただ、その笑顔を引き出したのが、わたしではないということが悔しいだけ……。
レオはわたしの歩調に合わせてくれる。
それとなく、こんな気遣いをしてくれるのは誰よりも優しい君だから。
それだけでなかったら、嬉しいのだけど望み過ぎはいけないわね。
今は出来るだけ、ゆっくりと二人だけの時間を楽しみたい。
それくらいは許されるはず。
ちょっと進んだら、「あの花は何?」「あの果物は食べられるの?」と聞くと丁寧に教えてくれる。
本当は説明を聞かないといけないって、分かってはいるのよ?
でも、説明よりもつい君の顔を見ることに夢中になってしまうの。
そんな穏やかで平和な一時が崩れる出来事が待っているなんて、思っていなかったんですもの。
「ママー! ニルくたます!」
門の出口にあたる砂浜に立っていた小さな女の子はわたしとレオの姿を確認すると、大きな声でそう言ったわ。
大きな背負いカバンを背負っていて、肩口できれいに切り揃えられた濡れ羽色の髪に猫の目のような大きな目には黄金色の瞳が輝いていた。
どこかで見たような……。
「何か、リーナに似てない?」
「そういえば、小さい頃のわたしって、あんな感じだったかも……」
「「えぇ!?」」
思わず、レオと顔を見合わせてしまった。
お、おかしいわ。
レオはまだ、大人になっていないでしょ?
それに彼と赤ちゃんが来てくれるようにって、お願いしてないもん!
どうなっているの!?
メニエに頼んだ衣装が仕上がったという連絡が来たのだ。
シン――異なる次元の世界から、この世界に落ちてきた異邦人の一人で日本人の青年――の発案で遠隔連絡に使える魔道具を開発しておいて、よかった。
でも、まだ簡単な文字を短く、伝える程度しか出来ないわ。
改良の余地ありというところかしら?
「ありがとう、レオ君」
最近のレオはわたしが何も言わなくてもエスコートするように手を繋いでくれる。
きれいな所作だから、本当に王子様みたいで胸がドキドキする。
ちょっと恥ずかしそうにする辺り、わたしを意識しているのよね?
家族や友人ではない。
もっと特別な存在として、君に見て欲しい。
そう願ったら、ダメ?
「行きましょ」
「うん」
ミスリル繊維を使ったわたしのバトルドレス一式。
それに浮遊の魔石を取り付けたケープマント。
余った繊維でレオとネズミ君のシャツとトラウザーも頼んでおいた。
防御の加護がかかった魔石を取り付けてあるから、以前、百貨店で購入した防具類と合わせれば、かなりの防御性能が期待出来るわ。
わたしが使う姫巫女の支援魔法を入れたら、噂の迷宮とはいっても余裕ではなくって?
「ねぇ、レオ君。その武器はどうなの?」
「ああ。これのこと?」
指を絡め合って、手を繋いでいると君の体温を感じられて、幸せな気分になれるから好き。
一緒に寝ているのとは違ったドキドキが味わえるんですもの。
でも、チラチラと視界に入って、気になるのが腰に佩いているちょっと変わった形状の長剣。
半円を描くような反った刀身は見たことがない。
「えっと……それ、何だったかしら? カタッーナ?」
「カッターナだよ、多分」
「そうそう、それだわ」
お舅様一行が『深淵の魔窟』から、持ち帰った戦利品の一つだった。
正直、あまり使えそうな物がないというのがわたしの判断。
それくらいのアイテムなら、収納に適当にしまっているのよりも使えそうにないと思ったわ。
その中でレオが目を輝かせて、手に取ったのがカッターナ。
ミスリル製のロングソードでもダメだったのよね。
「これ、使いやすいんだ」
「そうなの?」
「うん」
君がそう言って、白い歯を覗かせ、満面の笑みを見せてくれるだけでわたしも嬉しいわ♪
ただ、その笑顔を引き出したのが、わたしではないということが悔しいだけ……。
レオはわたしの歩調に合わせてくれる。
それとなく、こんな気遣いをしてくれるのは誰よりも優しい君だから。
それだけでなかったら、嬉しいのだけど望み過ぎはいけないわね。
今は出来るだけ、ゆっくりと二人だけの時間を楽しみたい。
それくらいは許されるはず。
ちょっと進んだら、「あの花は何?」「あの果物は食べられるの?」と聞くと丁寧に教えてくれる。
本当は説明を聞かないといけないって、分かってはいるのよ?
でも、説明よりもつい君の顔を見ることに夢中になってしまうの。
そんな穏やかで平和な一時が崩れる出来事が待っているなんて、思っていなかったんですもの。
「ママー! ニルくたます!」
門の出口にあたる砂浜に立っていた小さな女の子はわたしとレオの姿を確認すると、大きな声でそう言ったわ。
大きな背負いカバンを背負っていて、肩口できれいに切り揃えられた濡れ羽色の髪に猫の目のような大きな目には黄金色の瞳が輝いていた。
どこかで見たような……。
「何か、リーナに似てない?」
「そういえば、小さい頃のわたしって、あんな感じだったかも……」
「「えぇ!?」」
思わず、レオと顔を見合わせてしまった。
お、おかしいわ。
レオはまだ、大人になっていないでしょ?
それに彼と赤ちゃんが来てくれるようにって、お願いしてないもん!
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