82 / 85
幕間 番外編
いい夫婦の日記念・お姫様の熱(三人称視点)
しおりを挟む
リリアナが気が付いた時にはレオニードの顔が目の前にあった。
二人の距離は息がかかるくらいに近付いており、少し動いただけで唇が触れ合いそうだった。
「本当だ。ちょっと熱いね。熱があるんだよ」
「う、うん」
彼女が熱を出しているかどうかは知るには手を額に当てるだけで済んだだろう。
しかし、レオニードはそうはしなかった。
顔を近づけて、自分の額で確かめようとしたのだ。
その行為はリリアナにとって不意打ちとなった。
熱があるからというだけではなく、彼女の顔が薔薇色に染まっていく。
「ねぇ、レオ君。熱は伝染したら、治るって知ってる?」
「そうなんだ?」
リリアナは熱に魘されているせいなのか、潤んだ目で哀願するように妙なことを口走る。
言った後でバツが悪そうに視線を逸らしたリリアナを見たレオニードに躊躇いは一切、ない。
「じゃあ、俺に伝染す?」という言葉を口にした彼はどこか、大人の男のようだった。
「本当に伝染してもいいの?」
「俺は頑丈だから、平気さ」
いつもは勝気で言いたいことを言っているリリアナも熱のせいか、妙に弱気になっている。
熱のせいでうまく言葉で言い表せないのだ。
代わりとでも言うようにリリアナがとった行動は意外なものだった。
軽いキスではなく、まるで噛みつくようにレオニードの唇に自らの唇を触れ合わせると互いの舌を絡ませた。
「こうやったら、伝染るでしょ?」
交換された体液が二人の間に銀色の橋を架けていた。
突然のリリアナの行動にレオニードは驚き、目を丸くする。
「そんなのでは無理じゃないかな?」
「え? ちょっとレオ君!?」
しかし、キスの余韻も冷めやらぬうちに攻守が逆転した。
リリアナが逃げることを許さないとでもいうようにしっかりと体を抱き締め、激しく唇を奪われるレオニードは既に大人の男だった。
始めこそ、抵抗するようにレオニードの背に爪を立てていたリリアナだったが、やがて、観念したのか体の力を抜いて、身を任せていた。
「激しく動いたら、治るかもよ」
「ま、待ってってばぁ」
それがいけなかったのだろう。
レオニードはキスをしている間に器用にリリアナの服を脱がしている。
負担がかからないように優しく、ベッドの上に彼女の身体を寝かせたレオニードだったが、自分の服を脱ぐのには手間取っていた。
既に生まれたままの姿になっていたリリアナは一瞬、呆れたような表情を浮かべたが、甲斐甲斐しく、レオニードの服を脱がせる。
二人が選んだ熱を解消する愛の交わりは確かに激しい運動を必要としていた。
ただし、動いているのは主にレオニードの方であり、リリアナはそれでなくても枯れていた声が余計に悪化しただけなのだが……。
その後、二人が仲良く、寝込むことになったのはまた別の話である……。
二人の距離は息がかかるくらいに近付いており、少し動いただけで唇が触れ合いそうだった。
「本当だ。ちょっと熱いね。熱があるんだよ」
「う、うん」
彼女が熱を出しているかどうかは知るには手を額に当てるだけで済んだだろう。
しかし、レオニードはそうはしなかった。
顔を近づけて、自分の額で確かめようとしたのだ。
その行為はリリアナにとって不意打ちとなった。
熱があるからというだけではなく、彼女の顔が薔薇色に染まっていく。
「ねぇ、レオ君。熱は伝染したら、治るって知ってる?」
「そうなんだ?」
リリアナは熱に魘されているせいなのか、潤んだ目で哀願するように妙なことを口走る。
言った後でバツが悪そうに視線を逸らしたリリアナを見たレオニードに躊躇いは一切、ない。
「じゃあ、俺に伝染す?」という言葉を口にした彼はどこか、大人の男のようだった。
「本当に伝染してもいいの?」
「俺は頑丈だから、平気さ」
いつもは勝気で言いたいことを言っているリリアナも熱のせいか、妙に弱気になっている。
熱のせいでうまく言葉で言い表せないのだ。
代わりとでも言うようにリリアナがとった行動は意外なものだった。
軽いキスではなく、まるで噛みつくようにレオニードの唇に自らの唇を触れ合わせると互いの舌を絡ませた。
「こうやったら、伝染るでしょ?」
交換された体液が二人の間に銀色の橋を架けていた。
突然のリリアナの行動にレオニードは驚き、目を丸くする。
「そんなのでは無理じゃないかな?」
「え? ちょっとレオ君!?」
しかし、キスの余韻も冷めやらぬうちに攻守が逆転した。
リリアナが逃げることを許さないとでもいうようにしっかりと体を抱き締め、激しく唇を奪われるレオニードは既に大人の男だった。
始めこそ、抵抗するようにレオニードの背に爪を立てていたリリアナだったが、やがて、観念したのか体の力を抜いて、身を任せていた。
「激しく動いたら、治るかもよ」
「ま、待ってってばぁ」
それがいけなかったのだろう。
レオニードはキスをしている間に器用にリリアナの服を脱がしている。
負担がかからないように優しく、ベッドの上に彼女の身体を寝かせたレオニードだったが、自分の服を脱ぐのには手間取っていた。
既に生まれたままの姿になっていたリリアナは一瞬、呆れたような表情を浮かべたが、甲斐甲斐しく、レオニードの服を脱がせる。
二人が選んだ熱を解消する愛の交わりは確かに激しい運動を必要としていた。
ただし、動いているのは主にレオニードの方であり、リリアナはそれでなくても枯れていた声が余計に悪化しただけなのだが……。
その後、二人が仲良く、寝込むことになったのはまた別の話である……。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート
猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。
彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。
地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。
そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。
そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。
他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる