恭介の受難と異世界の住人

み馬

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第203話

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「ゼニス、ゼニス!」 
「シリル、無事か。」
「それはこっちの科白セリフだよ。どこもけがはしてない?」
「ああ。」
「ぼくによく見せて。ここ、切れてる。」
「問題ない。少しかすっただけだ。」

 ゼニスと合流したシリルは、血のにおいに敏感に反応した。ゼニスの右腕を両手で持ちあげると、人差し指にり傷を発見し、パクッとくわえた。獣人じゅうじんなりの治療方法だが、人間には必要ない処置だった。だが、ゼニスはシリルの自由にさせてやり、傷口の血を舐めさせた。それなりに痛みはあったが、口にださずがまんした。
 ゼニスはシリルのカラダへ視線を落とし、変わったところがないか確認する。獣人とはいえ、野生の熊が興奮してシリルを襲う可能性を懸念けねんしたが、作戦はうまくいったようだ。

 以前、リゼルと城下町へ足を運んだ時は、なりゆきで人助けをしたゼニスだが、今回はシリルの願いを聞き入れて密猟者につるぎを振りおろすことになった。いつだって、人間の敵は人間であることが多い。ゼニスは傷口を舐めるシリルを見おろして、自嘲気味じちょうぎみに笑った。

「……おれが獣王子おまえとめぐり逢うことは、決まっていたのかもしれん。」
「なにか云った? ゼニス、」
「おまえが人間だったら、こうは、、、ならなかったと云った。」
「ほえ? ぼくは獣人けひとだよ。」
「だからだよ。おれは人間を見ていると虫酸むしずが走る。……おまえが獣人でなければ、手をだす気になれなかっただろう。」
「手をだすって、どこに?」

 シリルがキョトンとするため、ゼニスは「ここにだ」と云って、わかりやすくワンピースの上から急所をつかんだ。その行動に驚いたシリルは目を丸くした。

「キャウッ!! ゼ、ゼニス?」
「どうした? シリル。やけにかたくなってるぞ。」
「……うっ、だって、それは、」
「それは?」
「ゼニスとしたい、、、な~って、思ってたから……、」
「おれもだ。」
「えっ? ゼニスも性交セックスしたくなったの?」
「ああ。」
「……じゃ、じゃあ、し、しようか?」
「町に着いたらな。たまには宿屋やど寝台ベッドでするのもいいだろう。」
「う、うん。わかった。……なんだか、きょうのゼニス、いつもよりエッチだけどかっこいい!」
「なんだそりゃ。」
「えへへ! 大好きって意味だよ!」

 シリルの笑顔を見て、いとおしく思えるゼニスは、自分もまた、強欲ごうよくな人間のひとりであることを認めた。その証拠に、城下町へ到着したゼニスは、真っ先に宿屋へ向かうと、シリルをみだらにあえがせた。

「あっ、ぁんっ、……ゼニスぅ! おっぱいと下、同時なんて……いやぁ……っ!」

 部屋にはいるなり、裸身はだかになったふたりは夢中で抱き合った。シリルの乳首を吸いながら、獣人の生殖器をりあげるゼニスは、加減を忘れそうになった。シリルの呼吸はハァハァと乱れ、ビクビクと腰をふるわせている。ゼニスに執拗なほど胸の突起を刺激されたシリルの下半身は、すでに濡れていた。

「ゼ……ニスぅ、さわってばっかりいないで、れてよぅ……。ぼく、ゼニスが欲しい……、」
「そうはやるなよ。」
「もっと……、深くで感じたいから……。」

 恥じらいながら大きく股をひろげるシリルは、ゼニスとひとつになる前から興奮がおさえ切れず、奥まった部位はヒクヒクと痙攣けいれんしていた。

「……まったくおまえは、魔性だな。」

 シリルは、その瞬間が待ち遠しくてならない。ゼニスから与えられる苦痛は、さらなる幸福の時間へとつながってゆくのだから。

     * * * * * *
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