恭介の受難と異世界の住人

み馬

文字の大きさ
上 下
205 / 364

第204話

しおりを挟む

 ゼニスはシリルの胸の上に手をおくと、息がととのうまでらしたのち、腰に手を添えて、陰部の挿入を開始する。太い先端がグチュッと入り込む瞬間、シリルは「あっ」と云って咽喉のどふるわせた。ゼニスの陰茎が根元まで埋まると、シリルの内壁はきつく圧迫されたが、深部の空洞ウロは熱い飛沫しぶきの放流を待つ。その前に、ゼニスによる上下運動がおこなわれ、シリルはまぶたをとじたままがった。

「あっ、ぁんっ、……ゼニスぅ、そこはダメぇ!」
「本当にダメなのか? そうではなく、気持ちいいのまちがいだろう。」
「やぁっ、んんっ、……あぁっ!!」

 ギシギシと寝台ベッドきしむたび、シリルは最高の快感にとらわれた。ゼニスの腰つきは次第しだいに激しくなってゆくが、シリルは従順に受け入れた。ひたいから流れる汗も、体重を乗せてくるゼニスの腰つきも、熱い吐息も、拒絶する理由がひとつも思い浮かばない。それどころか、もっと刺激が欲しいと思ってしまうシリルは、ゼニスとつながったまま夢心地となった。

「……おい、シリル。眠いのか?」
「ほえ……ぇ、……すごいよゼニスぅ。気持ちよすぎて、ぼく……何も考えられない……ぃ……、」

 性交中にもかかわらず、シリルはうっとりした表情から、とろんと半目状態になる。そのまま寝てしまいそうな雰囲気につき、ゼニスのほうがいくらか困惑した。シリルの手脚には、まったく力がはいっておらず、完全に無防備な姿をさらしている。いったん腰を引き抜くべきか判断に悩むゼニスをよそに、シリルは「えっへっへ~……」と、寝言ねごとすらつぶやいた。

「……なんの冗談だ。」

 これはゼニスにとって、予想外の展開である。互いに絶頂寸前の状態までたわむれていたが、行為の途中でシリルが寝落ねおちした。ゼニスにカラダをつらぬかれている最中のシリルは、穏やかな表情で「くぅくぅ」と安定した息を吐く。見るからに熟睡している。どうするべきかは、ゼニスの良心にゆだねられた。このまま続けるか、腰を引き抜いて手淫しゅいんで後始末をするか、どちらも勝手が許される状況である。

「……笑えんな。」

 ゼニスとしてはシリルの体内領域へ欲望の熱を放出したいところだが、相手の意識がない以上、それは卑怯な行為に該当すると判断した。仕方なく中断し、先にシリルの飽和状態となっている性器に指を絡める。軽く擦りあげると、ドピュッと宙に精液が飛び散った。シリルは「はっ……はぅん~!」と声をらし、なにやら気持ちよさそうである。続いて、ゼニスも自慰行為をして、たかぶった欲情を処理した。

「……ふぅっ」と、思わずため息がでる。久しぶりに寝台の上で眠りにつくシリルは、平和な夢をみていた。ゼニスとめぐり逢うまで獣人けひととして暮らしていた獣王子おうじだが、リゼルを出産した今、両性具有の役目は果たしたといえる。本来、ゼニスと抱き合う意味はない。だが、シリルは性愛という新たな境地にたどり着き、肉体関係は必要な行為として受けとめていた。

 シリルの寝顔を見つめるゼニスは、自然と我が子の将来について思考をめぐらせた。さいわい、リゼルは素直で健康的な成長をげている。青年期特有の自己の主体性について模索もさくしたとき、半獣はんじゅうである以上、集団生活は難しいのではないかと懸念したが、ウルの存在も排除することはできない。退屈で平凡な日常より、対抗心を持てる相手がそばにいたほうが、良い意味で社会性が構築される。また、適度な精神的緊張(ストレス)状態は、生きていく上で避けられない要因のひとつでもある。いずれにしても、リゼルとは今後について話し合う必要があった。

「……あいつらも、完全なかたちでは、この世に存在できない運命なのか。……種族など、生まれつきの個性にすぎない。あいつらこそ、自信をもって行動すべきではないのか。どうすれば、人間のかげに隠れて暮らさずにすむ? どうすれば性差せいさなく、リゼルとウルが人間社会に希望を持てるだろうか。」

 すやすやと安心して眠るシリルにとって、ゼニスの存在は非常に大きな意味をもっている。たったひとりでも理解者や協力者が近くにいるかぎり、これほど心強いことはないだろう。

「リゼル、ウル。おまえたちはどんな道を進む。おれとシリルにできることは、もう多くはないだろう。……しっかり自分の足で歩き、強く生きていけ。おまえたちの幸運を祈る。」
 
    * * * * * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

捜査員は柱の中央で絶頂を強制される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...