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第204話
しおりを挟むゼニスはシリルの胸の上に手をおくと、息が整うまで焦らした後、腰に手を添えて、陰部の挿入を開始する。太い先端がグチュッと入り込む瞬間、シリルは「あっ」と云って咽喉を慄わせた。ゼニスの陰茎が根元まで埋まると、シリルの内壁はきつく圧迫されたが、深部の空洞は熱い飛沫の放流を待つ。その前に、ゼニスによる上下運動が行われ、シリルは瞼をとじたまま悦がった。
「あっ、ぁんっ、……ゼニスぅ、そこはダメぇ!」
「本当にダメなのか? そうではなく、気持ちいいのまちがいだろう。」
「やぁっ、んんっ、……あぁっ!!」
ギシギシと寝台が軋むたび、シリルは最高の快感に捉われた。ゼニスの腰つきは次第に激しくなってゆくが、シリルは従順に受け入れた。額から流れる汗も、体重を乗せてくるゼニスの腰つきも、熱い吐息も、拒絶する理由がひとつも思い浮かばない。それどころか、もっと刺激が欲しいと思ってしまうシリルは、ゼニスとつながったまま夢心地となった。
「……おい、シリル。眠いのか?」
「ほえ……ぇ、……すごいよゼニスぅ。気持ちよすぎて、ぼく……何も考えられない……ぃ……、」
性交中にも係わらず、シリルはうっとりした表情から、とろんと半目状態になる。そのまま寝てしまいそうな雰囲気につき、ゼニスのほうがいくらか困惑した。シリルの手脚には、まったく力がはいっておらず、完全に無防備な姿を晒している。いったん腰を引き抜くべきか判断に悩むゼニスをよそに、シリルは「えっへっへ~……」と、寝言すらつぶやいた。
「……なんの冗談だ。」
これはゼニスにとって、予想外の展開である。互いに絶頂寸前の状態まで戯れていたが、行為の途中でシリルが寝落ちした。ゼニスにカラダを貫かれている最中のシリルは、穏やかな表情で「くぅくぅ」と安定した息を吐く。見るからに熟睡している。どうするべきかは、ゼニスの良心に委ねられた。このまま続けるか、腰を引き抜いて手淫で後始末をするか、どちらも勝手が許される状況である。
「……笑えんな。」
ゼニスとしてはシリルの体内領域へ欲望の熱を放出したいところだが、相手の意識がない以上、それは卑怯な行為に該当すると判断した。仕方なく中断し、先にシリルの飽和状態となっている性器に指を絡める。軽く擦りあげると、ドピュッと宙に精液が飛び散った。シリルは「はっ……はぅん~!」と声を洩らし、なにやら気持ちよさそうである。続いて、ゼニスも自慰行為をして、昂ぶった欲情を処理した。
「……ふぅっ」と、思わずため息がでる。久しぶりに寝台の上で眠りにつくシリルは、平和な夢をみていた。ゼニスとめぐり逢うまで獣人として暮らしていた獣王子だが、リゼルを出産した今、両性具有の役目は果たしたといえる。本来、ゼニスと抱き合う意味はない。だが、シリルは性愛という新たな境地にたどり着き、肉体関係は必要な行為として受けとめていた。
シリルの寝顔を見つめるゼニスは、自然と我が子の将来について思考をめぐらせた。さいわい、リゼルは素直で健康的な成長を遂げている。青年期特有の自己の主体性について模索したとき、半獣である以上、集団生活は難しいのではないかと懸念したが、ウルの存在も排除することはできない。退屈で平凡な日常より、対抗心を持てる相手がそばにいたほうが、良い意味で社会性が構築される。また、適度な精神的緊張(ストレス)状態は、生きていく上で避けられない要因のひとつでもある。いずれにしても、リゼルとは今後について話し合う必要があった。
「……あいつらも、完全なかたちでは、この世に存在できない運命なのか。……種族など、生まれつきの個性にすぎない。あいつらこそ、自信をもって行動すべきではないのか。どうすれば、人間のかげに隠れて暮らさずにすむ? どうすれば性差なく、リゼルとウルが人間社会に希望を持てるだろうか。」
すやすやと安心して眠るシリルにとって、ゼニスの存在は非常に大きな意味をもっている。たったひとりでも理解者や協力者が近くにいるかぎり、これほど心強いことはないだろう。
「リゼル、ウル。おまえたちはどんな道を進む。おれとシリルにできることは、もう多くはないだろう。……しっかり自分の足で歩き、強く生きていけ。おまえたちの幸運を祈る。」
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