異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

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第8部

第146話

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「ごめん、ノネコさん。話の途中で、眠っちゃった」

「気にしなくていいよ。きみが今は、、8歳児ということを忘れていたよ。まわりくどい昔話など聞かせては、睡魔に襲われて当然さ」

 ノネコは、16歳になった亮介の姿を見た唯一の半獣属である。ミュオンと異なるジェミャの霊力は、意図して、亮介を本来の姿に引きもどすことができた。ノネコは、ミュオンとハイロをちらッと見たあと、小声でつぶやいた。

「リョウスケくんが幼児化した理由は、なんだろうね。わたしの記憶ちがいでなければ、かつて、この森に存在した精霊と人間の子どもは、10歳を過ぎたころ、行方知れずとなっている。もしきみの正体が、その子の生まれ変わりや、血のつながった兄弟だとしても、別世界からやってくるなんて、まるでふしぎな話だ。……だいいち、あの子、、、はまだ生きている。この森から、消えたりなどしていない」

「そうなの? あの子って、僕の夢にでてくる〈リヒト〉のこと? 見た目はふつうの男の子だけど、水の精霊ミュオンさんが産んだ子なんだ」

「……おやおや、夢だというのに、ずいぶん鮮明に覚えているね。しかし、わたしたち森の語部かたりべが異形なる者の名を呼ぶことは、禁忌タブーとされている」

「異形って、なに? リヒトは、ふつうの子どもと変わらないよ。お父さんとお母さんがいて、友だちのオオカミがいて……。それのどこがいけないの?」 

 つい、亮介はムキになって反論した。なぜか理不尽な感情にとらわれ、ノネコを追及する。新たに誕生する生命いのちは、誰かを困らせたいわけじゃない。むしろ、祝福されるべき存在でなければ、いずれ価値観に支障をきたすおそれがあった。リヒトは、自ら黒蛇の孤独と空腹を満たすかてとなり、自己犠牲のもと、いっときはかたち、、、を失っている。さいわい、完全に吸収されることはなく、身に備わった精霊(母親)の力によって、再誕の機会ときがおとずれた。それは、リヒト自身も意外な展開だと思われた。

「ノネコさんは、これからなにが起きるか知ってるの? 隠さないで、教えてほしい」

「……リョウスケくん」

 いつのまにか目を覚ましたコリスが、じっとノネコを見つめていた。気づけば、ミュオンとハイロも、少年とノネコの会話に耳をかたむけている。サァサァとふる雨は、やみそうにない。気温が下がり、ミュオンが肩をふるわせると、ハイロは半獣の姿にもどり、灰色大熊の大きなからだでミュオンと亮介を腕の内側へ抱き寄せた。

(うわ、あったかい。ハイロさんの胸毛、もふもふだぁ~)

 亮介は背中に感じる体温に身をまかせ、となりのミュオンと顔を見合わせてニコッと笑った。

「ノネコもこい」と、ハイロ。

「ノネコさん、こっちこっち」と、亮介が手招きする。

「ほえ~、なんだかまた、ひと眠りしたくなってき~た~よ~」

 ふたたびコリスはぼんやり、、、、とし、亮介が抱える荷物のうえでウトウトした。少し離れていたノネコは、いちばん低い木の枝にピョンッと軽やかに飛び乗り、亮介たちを見おろした。

「しばらく、わたしが見張り役をしよう。ハイロさんも、少し眠るといい」

 途中で離脱したキールの荷物は、ハイロが引き受けた。誰よりも体力が消耗しているため、ノネコの親切をありがたく受けとり、ハイロはミュオンと亮介(とコリス)を両腕に包みこんだまま、浅く仮眠した。

(ハイロさん、疲れてそうだな……)

 灰色大熊は、黒い鼻から寝息を吐く。亮介は、雨がやむまで静かに待った。肩が触れる距離にすわるミュオンは、ハイロの力の抜けた腕が『重い』と言って、顔をそむけた。


★つづく
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