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第6部
第115話
しおりを挟む「ミュオンが妊娠したって!?」
「うん。ジェミャさんが、そう言ってた」
「あの、全裸の精霊か。姿が見えねえな。どこ行ったんだ?」
「ちょっと出てくるって、南のほうに飛んでいったよ」
ミュオンとハイロを寝室に残し、庭へもどってきた亮介は、なるべく慎重に状況を説明した。
「だからね、キール。ミュオンさんは、これからが大事なんだ。安心して赤ちゃんを産めるように、みんなで仲良く協力していこうよ」
「あん? なんでおいらだけ名指しなんだよ。むしろ、キツネのヤロウのほうが、あやしいもんだぜ」
仔熊とキツネの顔をにらみつけるキールを見て、亮介とノネコは小さくため息を吐いた。いきなりわだかまりを捨てるほうが無理な話につき、キールが臍を曲げるのは、しかたのないことである。とくに、キツネによって外的に傷を負わされたコリスも、割り切れない感情を苦心して抑えているようで、二匹とは距離を保っている。亮介が思い描く平和的な関係を築くには、まだまだ時間が必要だった。
「けっ、オレサマだってなあ、きさまらと仲良くなんて、反吐が出らあ。兄者の姿を変えたあの精霊さえどうにかできれば、こんな丸太小屋に用はねぇんだよ!」
「ちょ、ちょっと待って、キツネさん。ジェミャさんは、そんなに悪い精霊じゃないと思う。だから、今後のことは、おちついて話し合おうよ」
「人間なんかに、オレサマの気持ちがわかってたまるか。いつまでそいつらと仲良しごっこするつもりか知らねぇが、人間が半獣属をこの森に閉じこめた以上、オレサマにとっては永遠に許せない敵なんだよ」
「……それ、どういうこと?」
予期せぬことばを耳にした亮介は、思わずノネコをふり向いた。森の記憶を語り継ぐ彼ならば、遠い過去になにがあったのか、真実を伝え聞いているはずだ。さきほどから、キールの表情も険しい。亮介には、知らないことが多すぎた。
「もしかして、僕になにか隠してる? ねえ、キール、ノネコさん、コリスくん。教えてほしい。みんなが知っていることを……」
いつのまにか、半獣たちは亮介を取り囲むように立っている。ずっと胸に秘めていた過去を打ち明けるときがきたとばかり、ノネコは神妙な顔で少年を見つめた。
「ああ、そのとおりさ。いつかは話そうと思っていたけれど、今はまだ、役者がそろっていないのだよ、リョウスケくん」
★つづく
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