月冴ゆる離宮

み馬

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第二部

花咲く果実⒀

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「うっ、……うぅっ!」

 雑念に捉われたアセビは、性行為に集中できずうめき声をあげた。無遠慮な腰つきにがることはできず、リヤンの背中へ爪を立てると、更に強く腰をふられた。

「あっ!? やっ、……やぁっ!!」

 膣内を何度も摩擦され、リヤンの熱い精子が腹底へ流れ込んでくると、アセビは絶叫した。一方的にアセビを身悶えさせるリヤンは、胸もとの鬱血痕うっけつこんに指で触れ、寵主ハイム医官、、と性交した事実を黙認した。

(か、からだじゅうが痺れるようだ……。リヤンは、怒っている? なんで……?)

 あまりにも強引な性交渉につき、アセビは涙目になっていた。夫婦のいとなみとして、寝台の上で愛情を示すつもりはないらしい。あくまで、リュンヌを妊娠させる目的を優先していると思われた。

(ひどい扱いだ……。わたしは、子作りのための道具ではないぞ!)

 リヤンの怒りが伝染したかのように、にわかに腹を立てたアセビは、射精後も腰を引き抜かない皇帝の顔をにらみつけた。

(こんな……、こんな自分勝手な男を愛せるわけがない……、愛してたまるかっ!)

「なんだ、その反抗的な目は。不満があるのならば口で云え」 

「う、うるさい! 射精が終わったのならば早く抜け!」

「品性に欠ける発言だな」

「リヤンに云われたくない。そっちこそ、わたしのことなど、まったく愛していないくせに!」

「なんだと?」

 アセビは必死に抗議したが、腰が密着しているためリヤンの顔が近い。無駄に息苦しく感じてしまい、がまんしていた涙がこぼれた。ズルッと男根を引き抜いたリヤンは、アセビの胸の上に手のひらを添えると、鬱血痕について指摘した。

「泣くほど余が嫌いなのだな。それでは、昨夜の男からは、欲しがっている愛情とやらを感じ取れたのか」

「……昨夜の男? リ、リヤンではないのか?」

 体内を圧迫するものがなくなり、自由に動けるようになったアセビは、上体を起こしてリヤンと見つめ合った。互いの汗ばんだ肌が、暗がりに浮かびあがっている。改めて皇帝の顔だちを注視したアセビは、あまりにも迂闊うかつだった。

「ま、まさか……、クオンだったのか?」

「あやつは、余の分身ぶんしんである」

 リヤンは謎めいた発言をして寝台から抜けでると、身装みなりを整えて立ち去った。


✓つづく
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