君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
60 / 99
幕開け

57

しおりを挟む
「おかえりー。」テストが終わって戻ると、待っていたのはお兄ちゃんではなくメルロス殿下であった。
「殿下!?何でここに?」
「当たり前だろ、俺も闘技会出るんだから。」あ、そうか。隣を見るとカルロ殿下が立っていた。こうやって二人並ぶと似てるな…。ん、待てよ…、ということはやっぱり、カルロ殿下も出られるのかな…。

「それで?テストはどうだった?」
「あ、それが…。実は、何も覚えてなくて…。」

 リュークさんと会った後、かろうじてお兄ちゃんに出会えたのは覚えているんだけど、以降の記憶がないんだよね…。なんていうか、いつの間にか終了の合図がかかっていた感じ?


「緊張してたのか?まぁ、悪くはなかったと思うがな。ていうか、お前あんなに魔術使えたんだな。てっきり全く使えないのかと思ってたわ。」
「そうですね…。って、僕魔術使ってたんですか!?」
「そこも、覚えてないのかよ。どんだけ緊張してたんだよ。」笑いながら僕の肩をたたいてくる殿下。

 魔術は全く使えないわけではない。ただ、本当に少ししか使えないし、使ったところで僕の魔力量では役に立たないから今まで生きてきてほとんど使ったことがない。でも、測定テストで使えていたのか…。不思議だな…。

 そんなことをしていると、131番の出場者、つまりはお兄ちゃんを呼ぶアナウンスが流れる。

「お、そろそろアランの番か…。お前も見に行くだろ、急ごうぜ。」と、メルロス殿下に手を引かれ、僕たちは観客席へと急いだ。


「俺、アランの戦うところ初めて見るかもな…。」
「僕もです。」
「僕は何回か見たことあるけどね。」いつの間にか隣に立っていたカルロ殿下が言う。

 いつものごとく審査員が旗を揚げてテストが始まる。


「…すごいや…。」

 お兄ちゃんは、試合開始の合図とともに光属性の魔術を使い剣を作り上げ、それを使って人形の攻撃をかわしつつ反撃をしていた。その身のこなしはもちろん剣さばきもすごく僕はしばらくお兄ちゃんに見とれていた。

「すごいな…。俺、初めて魔剣ってやつを見たぞ…。さすがルーナ=シューベルトの生まれ変わりと言われているだけあるな…。」
 メルロス殿下の言う通り、光る剣を使いながら戦うお兄ちゃんの姿はさながら伝説や昔話で出てくる大おばあ様のようだった。
「まぁ、僕は見慣れているけどね。それにしてもあいつ、弟いるからって、気合入りすぎでしょ…。」


 テストが終わったお兄ちゃんと合流をし、カルロ殿下とメルロス殿下に別れを告げ、再度受付に向かう。
「本日はお疲れさまでした。どの部門に分けられるかは後日お知らせいたします。その際闘技会に必要な書類をいくつか共に送付するので大会までに目を通しておいてください。それでは、良い一日を~。」そう言って、これからの予定が書かれた紙をもらい、ぼくたちは会場を出る。

 が、出ようとした瞬間、誰かが僕の目の間に立ちはだかる。顔はすごくかっこよくて、さわやかを体現しているようなんだけど、いかんせん無表情でこちらを見下ろしているからとても怖い。ていうか、この人どこかで見たことあるような…?
 そんなことを考えている、お兄ちゃんが間に入る。

「またフライングですか、リリーシュ殿下…。」……リリーシュ殿下…。リリーシュ殿下!?リリーシュってあの!?この国の第一王子じゃないか!…いわれてみればどことなくカルロ殿下とかメルロス殿下に似ているような…?
「………今回は、偶々だ……。」
「…そうですか…。忘れないでくださいね、あなたのために時間を作ったんです。くれぐれも約束を破らないように…。」
 え、待ってお兄ちゃん今、この国の王子、しかも王位継承権第一位の人と喋ってるんだよね…。なんで、こんなに強気にいってるの…?しかもなんでちょっと上から…?

「それでは、失礼します。」
「あ、ちょっと…。」
混乱している僕をよそにお兄ちゃんは僕の手を引っ張りその場を離れる。最後リリーシュ殿下に呼び止められた気がしたが、すでに遠く離れてしまっていた。
 



 いろいろと聞きたいことはあったが、どうやらそれを聞けるような雰囲気ではなかったため僕はおとなしく馬車に乗り込む。…一体、リリーシュ殿下はお兄ちゃんに何をしたんだろう…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...