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幕開け
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「お~なんか、わくわくしてきたぁ!!」
「あのお菓子もおいしそうだし…。あ、あれもおいしそう!!」
「え、まっててっきり食べ物だけかと思ってたけど、服とかアクセサリーも売ってるのね!!…あ、結構お高い…。」
「さ、三人共?ちょっといったん落ち着こうか…。」
ソーン君の地元で開催される夏祭りは、「結構田舎の方であるからちょっと物足りないかもよ~…。」というソーン君の言葉とは裏腹にかなり賑わっていた。また、夏祭りに参加すること自体久しぶりなため僕たち三人は大通りを彩る様々な出店に浮足立っていた。
とはいえ、子供だけの四人で来ているわけではなく、数歩後ろには僕のお父さんお母さん、お兄ちゃんが歩いていて、両親もそれぞれ「これなんか似合うんじゃないかしら?」「これは君のために作られたといっても過言ではないね。」と言いながら歩いている。それを真隣で見ているお兄ちゃんの顔が死んでいるような気がするけど…。
「いやてっきりよ~ソーンが『夏祭りしょぼいかもよ?』って言うから、俺もそんなに期待していなかったんだけどよ。これ…めちゃくちゃすげえじゃないか!」
「そうよ!これなら小さいころに行った王都の夏祭りと何ら遜色ないわよ!!」
「いや、実は僕もこんなに盛大だとは思わなかったんだよね…。気合入っているとは聞いていたけど、まさかここまでとは…。」
ソーン君のお家にあいさつに行く道中であるにもかかわらず、その土地特有の商品や食べ物を売っている出店に僕たちは各々目を奪われ、遅々として歩みが進まない。
「それにしても夏なのに結構涼しいのね。」
リーンの言う通り、ここは真夏のしかも真昼にもかかわらず、涼しい風が吹いていた。
「うん、山の近くだしここはちょっと標高が高いからね。その代わり冬はすごく寒くなるけど。………さぁ、ようやく着いたよ。ここが僕の家。」
ソーン君が指をさした先には、赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家がたっていた。
「遠いところから来てくださってありがとうございます~。これ、ソーンからアルス様がお好きだと聞いて気合を入れて作ったものです~。よろしければどうぞ~。」ソーン君のお母さん、ルーシャさんはそう言いながら大量のクランベリー入りのスコーンを乗せた大きなお皿を持ってきていた。
「…お母さん、張り切りすぎ…。」ソーン君が少し恥ずかしそうに言う。
んんんんん!美味しそう!!…もしかして、出来立て!?
断りを入れて、さっそくスコーンを頬張る。…あぁ~幸せだなぁ~。
「そんなそんな!うちのアルがいつもお世話になっております!こちら粗品ですが…。」
「わぁ、私スイーツの中でイチゴのショートケーキが一番大好きなんですよ~。ありがとうございます~。」
ルーシャさんは、さすが親子なだけあってソーン君にとても似ていた。ただ、ソーン君よりもかなり雰囲気がふんわりしている。話し方もそうだし、身振り手振りや表情…とにかく全部がふわふわしている。なんだか、一緒にいるだけで癒されそうな人だった。
『少し大人だけで話すことがあるから、しばらく子供たち同士(もちろんお兄ちゃんの監視の下)で遊んできなさい。』と言われ、僕たちは一番賑わっているであろう中央広場へとつながる大通りを歩いている。
「なぁなぁ、この中でソーン君のおすすめの食べ物ってなんだ?」すでに両手いっぱいにを抱え込んだシンがさらなる食を求めてソーン君に聞く。
「うーん、そうだな…このなかだと~…「もしかしてソーン!?」」周囲の出店をぐるっと見渡しているソーン君に声がかかる。
「あ、もしかしてクラウス!?うわ~すごい久しぶり!!元気だった?」
「見ての通りだ!ん、そっちは…?」
「あ、こっちは僕の友達のシン=フィンオール君とリーン=アシュレさん。それと、アルス=シューベルト君とそのお兄ちゃんのアラン=シューベルトさん。」
それぞれ名前を呼ばれて「よろしく。」とか「初めまして。」とか挨拶をする。僕と目が合った瞬間クラウス君の動きが止まったような気がしたけど気のせいかな。
「クラウスは何してたの?」
「…ん?俺か、俺はその辺ぶらぶらしてたかな。ほかのやつら夕方から出るって言ってたし。」
「そうなんだね。」
「ソーンこそ何してたんだ?出るにはまだ早くないか?ほら、夏祭りって夕方から夜にかけてが本番だろ?」
「僕たちもぶらぶらしてたんだよ。ちょっと事情があって夕方までには帰らないといけないから昼のうちから出てるんだ。」この夕方までに帰らないといけないという事情はもちろん僕のことだ。
「ということは、アルス君も夕方までに帰らないといけないの?」
「え、う、うん。」むしろ僕が一番帰らないといけないのだよ、クラウス君…。
「なら、こっち来て!みんなも!」クラウス君はしばらく何かを考えてから、僕の手を強く引いてどこかに走り出した。…この感じメルロス殿下となんだか似てるな…。
「ちょっとクラウス!急に走らないでよ!!」
「ごめんごめん!」
連れてこられたのは、どこか大きな広場のようだった。夏祭りに合わせてか至る所にかなり派手な装飾がなされている。
「ここは?」僕はきょろきょろと周りを見渡しながら言う。アップテンポな曲に合わせてみんなが思い思いに踊っていてとても楽しそうだった。
ん、もしかして、ここって…。
「中央広場だよ!ここで毎年音楽に合わせて踊ってるんだ!」
僕は家で見たパンフレットのイラストを思い浮かべる。そうか、ここだったんだ。
「なんで、僕たちをここに連れてきてくれたの?」
「なんでって…ちょっとしかここにいられないんだろ?せっかくならいい思い出を作っときたいじゃん。」
いい思い出…!!…クラウス君結構強引な感じするけど、めちゃくちゃ良い子じゃん!!やっぱりソーン君のお友達なだけあるわ…!
「ほら、アルス君も踊ろうよ!こうやって!!」そう言い、クラウス君は音楽に合わせて体を動かす。
「う、うん…。」僕は恥ずかしさも相まって、頭を左右に揺らすことしかできない。けれど、踊っていくうちにだんだんテンションが上がってきて、気が付いたらほかの人たちに負けないくらい体を大きく動かしていた。
「あのお菓子もおいしそうだし…。あ、あれもおいしそう!!」
「え、まっててっきり食べ物だけかと思ってたけど、服とかアクセサリーも売ってるのね!!…あ、結構お高い…。」
「さ、三人共?ちょっといったん落ち着こうか…。」
ソーン君の地元で開催される夏祭りは、「結構田舎の方であるからちょっと物足りないかもよ~…。」というソーン君の言葉とは裏腹にかなり賑わっていた。また、夏祭りに参加すること自体久しぶりなため僕たち三人は大通りを彩る様々な出店に浮足立っていた。
とはいえ、子供だけの四人で来ているわけではなく、数歩後ろには僕のお父さんお母さん、お兄ちゃんが歩いていて、両親もそれぞれ「これなんか似合うんじゃないかしら?」「これは君のために作られたといっても過言ではないね。」と言いながら歩いている。それを真隣で見ているお兄ちゃんの顔が死んでいるような気がするけど…。
「いやてっきりよ~ソーンが『夏祭りしょぼいかもよ?』って言うから、俺もそんなに期待していなかったんだけどよ。これ…めちゃくちゃすげえじゃないか!」
「そうよ!これなら小さいころに行った王都の夏祭りと何ら遜色ないわよ!!」
「いや、実は僕もこんなに盛大だとは思わなかったんだよね…。気合入っているとは聞いていたけど、まさかここまでとは…。」
ソーン君のお家にあいさつに行く道中であるにもかかわらず、その土地特有の商品や食べ物を売っている出店に僕たちは各々目を奪われ、遅々として歩みが進まない。
「それにしても夏なのに結構涼しいのね。」
リーンの言う通り、ここは真夏のしかも真昼にもかかわらず、涼しい風が吹いていた。
「うん、山の近くだしここはちょっと標高が高いからね。その代わり冬はすごく寒くなるけど。………さぁ、ようやく着いたよ。ここが僕の家。」
ソーン君が指をさした先には、赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家がたっていた。
「遠いところから来てくださってありがとうございます~。これ、ソーンからアルス様がお好きだと聞いて気合を入れて作ったものです~。よろしければどうぞ~。」ソーン君のお母さん、ルーシャさんはそう言いながら大量のクランベリー入りのスコーンを乗せた大きなお皿を持ってきていた。
「…お母さん、張り切りすぎ…。」ソーン君が少し恥ずかしそうに言う。
んんんんん!美味しそう!!…もしかして、出来立て!?
断りを入れて、さっそくスコーンを頬張る。…あぁ~幸せだなぁ~。
「そんなそんな!うちのアルがいつもお世話になっております!こちら粗品ですが…。」
「わぁ、私スイーツの中でイチゴのショートケーキが一番大好きなんですよ~。ありがとうございます~。」
ルーシャさんは、さすが親子なだけあってソーン君にとても似ていた。ただ、ソーン君よりもかなり雰囲気がふんわりしている。話し方もそうだし、身振り手振りや表情…とにかく全部がふわふわしている。なんだか、一緒にいるだけで癒されそうな人だった。
『少し大人だけで話すことがあるから、しばらく子供たち同士(もちろんお兄ちゃんの監視の下)で遊んできなさい。』と言われ、僕たちは一番賑わっているであろう中央広場へとつながる大通りを歩いている。
「なぁなぁ、この中でソーン君のおすすめの食べ物ってなんだ?」すでに両手いっぱいにを抱え込んだシンがさらなる食を求めてソーン君に聞く。
「うーん、そうだな…このなかだと~…「もしかしてソーン!?」」周囲の出店をぐるっと見渡しているソーン君に声がかかる。
「あ、もしかしてクラウス!?うわ~すごい久しぶり!!元気だった?」
「見ての通りだ!ん、そっちは…?」
「あ、こっちは僕の友達のシン=フィンオール君とリーン=アシュレさん。それと、アルス=シューベルト君とそのお兄ちゃんのアラン=シューベルトさん。」
それぞれ名前を呼ばれて「よろしく。」とか「初めまして。」とか挨拶をする。僕と目が合った瞬間クラウス君の動きが止まったような気がしたけど気のせいかな。
「クラウスは何してたの?」
「…ん?俺か、俺はその辺ぶらぶらしてたかな。ほかのやつら夕方から出るって言ってたし。」
「そうなんだね。」
「ソーンこそ何してたんだ?出るにはまだ早くないか?ほら、夏祭りって夕方から夜にかけてが本番だろ?」
「僕たちもぶらぶらしてたんだよ。ちょっと事情があって夕方までには帰らないといけないから昼のうちから出てるんだ。」この夕方までに帰らないといけないという事情はもちろん僕のことだ。
「ということは、アルス君も夕方までに帰らないといけないの?」
「え、う、うん。」むしろ僕が一番帰らないといけないのだよ、クラウス君…。
「なら、こっち来て!みんなも!」クラウス君はしばらく何かを考えてから、僕の手を強く引いてどこかに走り出した。…この感じメルロス殿下となんだか似てるな…。
「ちょっとクラウス!急に走らないでよ!!」
「ごめんごめん!」
連れてこられたのは、どこか大きな広場のようだった。夏祭りに合わせてか至る所にかなり派手な装飾がなされている。
「ここは?」僕はきょろきょろと周りを見渡しながら言う。アップテンポな曲に合わせてみんなが思い思いに踊っていてとても楽しそうだった。
ん、もしかして、ここって…。
「中央広場だよ!ここで毎年音楽に合わせて踊ってるんだ!」
僕は家で見たパンフレットのイラストを思い浮かべる。そうか、ここだったんだ。
「なんで、僕たちをここに連れてきてくれたの?」
「なんでって…ちょっとしかここにいられないんだろ?せっかくならいい思い出を作っときたいじゃん。」
いい思い出…!!…クラウス君結構強引な感じするけど、めちゃくちゃ良い子じゃん!!やっぱりソーン君のお友達なだけあるわ…!
「ほら、アルス君も踊ろうよ!こうやって!!」そう言い、クラウス君は音楽に合わせて体を動かす。
「う、うん…。」僕は恥ずかしさも相まって、頭を左右に揺らすことしかできない。けれど、踊っていくうちにだんだんテンションが上がってきて、気が付いたらほかの人たちに負けないくらい体を大きく動かしていた。
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