61 / 104
幕開け
58
しおりを挟む
「お~なんか、わくわくしてきたぁ!!」
「あのお菓子もおいしそうだし…。あ、あれもおいしそう!!」
「え、まっててっきり食べ物だけかと思ってたけど、服とかアクセサリーも売ってるのね!!…あ、結構お高い…。」
「さ、三人共?ちょっといったん落ち着こうか…。」
ソーン君の地元で開催される夏祭りは、「結構田舎の方であるからちょっと物足りないかもよ~…。」というソーン君の言葉とは裏腹にかなり賑わっていた。また、夏祭りに参加すること自体久しぶりなため僕たち三人は大通りを彩る様々な出店に浮足立っていた。
とはいえ、子供だけの四人で来ているわけではなく、数歩後ろには僕のお父さんお母さん、お兄ちゃんが歩いていて、両親もそれぞれ「これなんか似合うんじゃないかしら?」「これは君のために作られたといっても過言ではないね。」と言いながら歩いている。それを真隣で見ているお兄ちゃんの顔が死んでいるような気がするけど…。
「いやてっきりよ~ソーンが『夏祭りしょぼいかもよ?』って言うから、俺もそんなに期待していなかったんだけどよ。これ…めちゃくちゃすげえじゃないか!」
「そうよ!これなら小さいころに行った王都の夏祭りと何ら遜色ないわよ!!」
「いや、実は僕もこんなに盛大だとは思わなかったんだよね…。気合入っているとは聞いていたけど、まさかここまでとは…。」
ソーン君のお家にあいさつに行く道中であるにもかかわらず、その土地特有の商品や食べ物を売っている出店に僕たちは各々目を奪われ、遅々として歩みが進まない。
「それにしても夏なのに結構涼しいのね。」
リーンの言う通り、ここは真夏のしかも真昼にもかかわらず、涼しい風が吹いていた。
「うん、山の近くだしここはちょっと標高が高いからね。その代わり冬はすごく寒くなるけど。………さぁ、ようやく着いたよ。ここが僕の家。」
ソーン君が指をさした先には、赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家がたっていた。
「遠いところから来てくださってありがとうございます~。これ、ソーンからアルス様がお好きだと聞いて気合を入れて作ったものです~。よろしければどうぞ~。」ソーン君のお母さん、ルーシャさんはそう言いながら大量のクランベリー入りのスコーンを乗せた大きなお皿を持ってきていた。
「…お母さん、張り切りすぎ…。」ソーン君が少し恥ずかしそうに言う。
んんんんん!美味しそう!!…もしかして、出来立て!?
断りを入れて、さっそくスコーンを頬張る。…あぁ~幸せだなぁ~。
「そんなそんな!うちのアルがいつもお世話になっております!こちら粗品ですが…。」
「わぁ、私スイーツの中でイチゴのショートケーキが一番大好きなんですよ~。ありがとうございます~。」
ルーシャさんは、さすが親子なだけあってソーン君にとても似ていた。ただ、ソーン君よりもかなり雰囲気がふんわりしている。話し方もそうだし、身振り手振りや表情…とにかく全部がふわふわしている。なんだか、一緒にいるだけで癒されそうな人だった。
『少し大人だけで話すことがあるから、しばらく子供たち同士(もちろんお兄ちゃんの監視の下)で遊んできなさい。』と言われ、僕たちは一番賑わっているであろう中央広場へとつながる大通りを歩いている。
「なぁなぁ、この中でソーン君のおすすめの食べ物ってなんだ?」すでに両手いっぱいにを抱え込んだシンがさらなる食を求めてソーン君に聞く。
「うーん、そうだな…このなかだと~…「もしかしてソーン!?」」周囲の出店をぐるっと見渡しているソーン君に声がかかる。
「あ、もしかしてクラウス!?うわ~すごい久しぶり!!元気だった?」
「見ての通りだ!ん、そっちは…?」
「あ、こっちは僕の友達のシン=フィンオール君とリーン=アシュレさん。それと、アルス=シューベルト君とそのお兄ちゃんのアラン=シューベルトさん。」
それぞれ名前を呼ばれて「よろしく。」とか「初めまして。」とか挨拶をする。僕と目が合った瞬間クラウス君の動きが止まったような気がしたけど気のせいかな。
「クラウスは何してたの?」
「…ん?俺か、俺はその辺ぶらぶらしてたかな。ほかのやつら夕方から出るって言ってたし。」
「そうなんだね。」
「ソーンこそ何してたんだ?出るにはまだ早くないか?ほら、夏祭りって夕方から夜にかけてが本番だろ?」
「僕たちもぶらぶらしてたんだよ。ちょっと事情があって夕方までには帰らないといけないから昼のうちから出てるんだ。」この夕方までに帰らないといけないという事情はもちろん僕のことだ。
「ということは、アルス君も夕方までに帰らないといけないの?」
「え、う、うん。」むしろ僕が一番帰らないといけないのだよ、クラウス君…。
「なら、こっち来て!みんなも!」クラウス君はしばらく何かを考えてから、僕の手を強く引いてどこかに走り出した。…この感じメルロス殿下となんだか似てるな…。
「ちょっとクラウス!急に走らないでよ!!」
「ごめんごめん!」
連れてこられたのは、どこか大きな広場のようだった。夏祭りに合わせてか至る所にかなり派手な装飾がなされている。
「ここは?」僕はきょろきょろと周りを見渡しながら言う。アップテンポな曲に合わせてみんなが思い思いに踊っていてとても楽しそうだった。
ん、もしかして、ここって…。
「中央広場だよ!ここで毎年音楽に合わせて踊ってるんだ!」
僕は家で見たパンフレットのイラストを思い浮かべる。そうか、ここだったんだ。
「なんで、僕たちをここに連れてきてくれたの?」
「なんでって…ちょっとしかここにいられないんだろ?せっかくならいい思い出を作っときたいじゃん。」
いい思い出…!!…クラウス君結構強引な感じするけど、めちゃくちゃ良い子じゃん!!やっぱりソーン君のお友達なだけあるわ…!
「ほら、アルス君も踊ろうよ!こうやって!!」そう言い、クラウス君は音楽に合わせて体を動かす。
「う、うん…。」僕は恥ずかしさも相まって、頭を左右に揺らすことしかできない。けれど、踊っていくうちにだんだんテンションが上がってきて、気が付いたらほかの人たちに負けないくらい体を大きく動かしていた。
「あのお菓子もおいしそうだし…。あ、あれもおいしそう!!」
「え、まっててっきり食べ物だけかと思ってたけど、服とかアクセサリーも売ってるのね!!…あ、結構お高い…。」
「さ、三人共?ちょっといったん落ち着こうか…。」
ソーン君の地元で開催される夏祭りは、「結構田舎の方であるからちょっと物足りないかもよ~…。」というソーン君の言葉とは裏腹にかなり賑わっていた。また、夏祭りに参加すること自体久しぶりなため僕たち三人は大通りを彩る様々な出店に浮足立っていた。
とはいえ、子供だけの四人で来ているわけではなく、数歩後ろには僕のお父さんお母さん、お兄ちゃんが歩いていて、両親もそれぞれ「これなんか似合うんじゃないかしら?」「これは君のために作られたといっても過言ではないね。」と言いながら歩いている。それを真隣で見ているお兄ちゃんの顔が死んでいるような気がするけど…。
「いやてっきりよ~ソーンが『夏祭りしょぼいかもよ?』って言うから、俺もそんなに期待していなかったんだけどよ。これ…めちゃくちゃすげえじゃないか!」
「そうよ!これなら小さいころに行った王都の夏祭りと何ら遜色ないわよ!!」
「いや、実は僕もこんなに盛大だとは思わなかったんだよね…。気合入っているとは聞いていたけど、まさかここまでとは…。」
ソーン君のお家にあいさつに行く道中であるにもかかわらず、その土地特有の商品や食べ物を売っている出店に僕たちは各々目を奪われ、遅々として歩みが進まない。
「それにしても夏なのに結構涼しいのね。」
リーンの言う通り、ここは真夏のしかも真昼にもかかわらず、涼しい風が吹いていた。
「うん、山の近くだしここはちょっと標高が高いからね。その代わり冬はすごく寒くなるけど。………さぁ、ようやく着いたよ。ここが僕の家。」
ソーン君が指をさした先には、赤い屋根が特徴的な可愛らしいお家がたっていた。
「遠いところから来てくださってありがとうございます~。これ、ソーンからアルス様がお好きだと聞いて気合を入れて作ったものです~。よろしければどうぞ~。」ソーン君のお母さん、ルーシャさんはそう言いながら大量のクランベリー入りのスコーンを乗せた大きなお皿を持ってきていた。
「…お母さん、張り切りすぎ…。」ソーン君が少し恥ずかしそうに言う。
んんんんん!美味しそう!!…もしかして、出来立て!?
断りを入れて、さっそくスコーンを頬張る。…あぁ~幸せだなぁ~。
「そんなそんな!うちのアルがいつもお世話になっております!こちら粗品ですが…。」
「わぁ、私スイーツの中でイチゴのショートケーキが一番大好きなんですよ~。ありがとうございます~。」
ルーシャさんは、さすが親子なだけあってソーン君にとても似ていた。ただ、ソーン君よりもかなり雰囲気がふんわりしている。話し方もそうだし、身振り手振りや表情…とにかく全部がふわふわしている。なんだか、一緒にいるだけで癒されそうな人だった。
『少し大人だけで話すことがあるから、しばらく子供たち同士(もちろんお兄ちゃんの監視の下)で遊んできなさい。』と言われ、僕たちは一番賑わっているであろう中央広場へとつながる大通りを歩いている。
「なぁなぁ、この中でソーン君のおすすめの食べ物ってなんだ?」すでに両手いっぱいにを抱え込んだシンがさらなる食を求めてソーン君に聞く。
「うーん、そうだな…このなかだと~…「もしかしてソーン!?」」周囲の出店をぐるっと見渡しているソーン君に声がかかる。
「あ、もしかしてクラウス!?うわ~すごい久しぶり!!元気だった?」
「見ての通りだ!ん、そっちは…?」
「あ、こっちは僕の友達のシン=フィンオール君とリーン=アシュレさん。それと、アルス=シューベルト君とそのお兄ちゃんのアラン=シューベルトさん。」
それぞれ名前を呼ばれて「よろしく。」とか「初めまして。」とか挨拶をする。僕と目が合った瞬間クラウス君の動きが止まったような気がしたけど気のせいかな。
「クラウスは何してたの?」
「…ん?俺か、俺はその辺ぶらぶらしてたかな。ほかのやつら夕方から出るって言ってたし。」
「そうなんだね。」
「ソーンこそ何してたんだ?出るにはまだ早くないか?ほら、夏祭りって夕方から夜にかけてが本番だろ?」
「僕たちもぶらぶらしてたんだよ。ちょっと事情があって夕方までには帰らないといけないから昼のうちから出てるんだ。」この夕方までに帰らないといけないという事情はもちろん僕のことだ。
「ということは、アルス君も夕方までに帰らないといけないの?」
「え、う、うん。」むしろ僕が一番帰らないといけないのだよ、クラウス君…。
「なら、こっち来て!みんなも!」クラウス君はしばらく何かを考えてから、僕の手を強く引いてどこかに走り出した。…この感じメルロス殿下となんだか似てるな…。
「ちょっとクラウス!急に走らないでよ!!」
「ごめんごめん!」
連れてこられたのは、どこか大きな広場のようだった。夏祭りに合わせてか至る所にかなり派手な装飾がなされている。
「ここは?」僕はきょろきょろと周りを見渡しながら言う。アップテンポな曲に合わせてみんなが思い思いに踊っていてとても楽しそうだった。
ん、もしかして、ここって…。
「中央広場だよ!ここで毎年音楽に合わせて踊ってるんだ!」
僕は家で見たパンフレットのイラストを思い浮かべる。そうか、ここだったんだ。
「なんで、僕たちをここに連れてきてくれたの?」
「なんでって…ちょっとしかここにいられないんだろ?せっかくならいい思い出を作っときたいじゃん。」
いい思い出…!!…クラウス君結構強引な感じするけど、めちゃくちゃ良い子じゃん!!やっぱりソーン君のお友達なだけあるわ…!
「ほら、アルス君も踊ろうよ!こうやって!!」そう言い、クラウス君は音楽に合わせて体を動かす。
「う、うん…。」僕は恥ずかしさも相まって、頭を左右に揺らすことしかできない。けれど、踊っていくうちにだんだんテンションが上がってきて、気が付いたらほかの人たちに負けないくらい体を大きく動かしていた。
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる