映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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122 獣の捕獲、ヨシイ古書店の供述(前)②

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 二人を取り押さえてから、別動隊が急いで牧田氏の様子を見に行った。
 あの後、牧田氏は体調が良くないと言って先に帰ったのだが、自宅には戻っていなかった。警察が捜索し、佐山邸で彼が毒物自殺を図ったらしいという一報が入った時、誰よりも泣いたのは美千代さんだったのだという。

「美千代さんは気が強かったが、美千代さんなりに牧田さんを愛していた。だけど、本来牧田さんは流されやすい性格で、佐山さんの言うなりに美千代さんと結婚したが、本当は華子さんのようなおっとりした華やかな人が好きなんだ。それを見抜かれた華子さんに弄ばれるように不貞をしていた。美千代さんが知ってるなど気付きもしないでね。
 山森さんとのことはよく分からないが、こちらも流されて付き合って、佐山さんの口利きに流されて別れた。
 佐山さんは牧田さんの手綱を握るために、『不貞の証拠は他所に預けてある』と言ってたんだ。本当は私家本の時のMOディスクにこっそり追加で入っていたんだけどね。佐山さんもよく考えたよね、出版し終わったデータの入った古い型のディスクなんて見返さないもの」

 発見された牧田氏は、リシンを飲み込んだものの、相当量を嘔吐してしまったために今のところ命に別条はないとのことだった。

「美千代さんが言うには、牧田さんは小心者なんだそうだ。華子さんに言い寄られて遊ばれてるのは分かっていたけど、それでも大それたことはしないだろうってね。それが裏切られたわけだから、あの夫婦も今後どうなるのか」
「そうですか。でもどうでもいいことですね」
「おや、池上さん。ご自身が牧田さんに騙されて井ノ口達に引き渡されたというのに、もうどうでもいいんですか?」
「日比野ちゃんが害された、という嘘の方がむかつきましたが、報いは受けてますからね」



 
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