映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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121 獣の捕獲、ヨシイ古書店の供述(前)①

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 井ノ口とヨシイ古書店は、聖マリアンヌ教会の納骨堂に入ったところで辻堂刑事ら警察に逮捕された。

 私につけられていた盗聴器で、警察は迅速に動いてくれたし、犯行をほぼほぼ自供したようなものだった『シナリオ』音声を聞かされて、二人ともあっさり陥落したらしい。

 また池上も自発的にスマホの位置情報を警察に提供していた。井ノ口との関係を辻堂刑事に告白してから、私に危害が加えられないようにしたいと申し出てくれていたらしい。

 そもそも池上は井ノ口に脅されていた。館蔵のとある貴重な資料を破損させてしまい、言わないでおくから言うことを聞け、と言われ、入職したばかりで仕事を辞めさせられたくなかった池上はその要求を飲んてしまったのだという。
 そして時間を見ては古書店などを回り、その資料を探していた。ヨシイ古書店にも足繁く通って探していたらしい。
 でも井ノ口がその資料が手に入ったら必ず自分に先に一報入れてくれと全国の古書店に通知していたため、池上のところには連絡は入らなかった。ここら辺は、皆同じ職場だからいいだろうと思っていた節もあるのだろう。
 老舗の伊織堂だけは誠実に協力してくれていたが、この頃古書店界隈でもおかしなことが起きていると池上に告げていた。どうもお宅の井ノ口とヨシイ古書店とが何かしてるんじゃないのかと。

 それを聞いて池上は個人的に調べ出した。その中で分かった事が、井ノ口は計算して牧田を佐山氏のところに入れて、自分と同じように何かで弱みを掴んで追い詰め、佐山の情報を得るためのコマにしようとしたのではないかと言うことだ。

 池上は、井ノ口とヨシイ古書店の変名であるニッコー門木氏の振込口座を開設させられたりと、多くの要求に応じさせられていた。この事件が起きてからは、やたらと巻きこまれている私を彼らが邪魔に思うようになっていたので、自分が犯人と誤解されている内なら彼らも油断するし、私も安全だろうと思っていたそうだ。




 
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