映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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111 告白③

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 神奈川に以前存在した撮影所のすぐ近く、閑静な住宅街に沢本清彦の住んでいた自宅があった。
 庭木に覆われているが、ひとたび敷地内に入ると昭和モダンといった風情の洋館風の造りでとても可愛らしい。洋風な中にも鎖樋があったり、丸い飛び石には少し苔が生えている。
 家のガラスも古いものをそのまま大切に使用されているのか、透明なものであってもレンズのように屈折して見えるが、厚みも光の反射も柔らかくて美しいなと思った。
 
「遠いところへようこそ。······資料館さんからはいつか連絡が来るのではないかと祖父も申しておりましたので」
「ご多用のところお時間を作っていただき恐縮です。······祖父とおっしゃいますのは」
「ええ、沢本清彦のことです。私は孫の弓香と申します。当主の兄がおるのですが、体を悪くして入院しておりますので、代わりに私が」
「そのような時に申し訳ございません。先にお手紙でお伺いしましたとおり、沢本清彦氏が作成した富樫甲児監督のデスマスクのことについて、再調査をしておりまして······」
「もしも、資料館さんがここに来ることがあれば手渡すように言われているものがありますの。まずはそれを」

 弓香さんは簡素な茶封筒を取り出して、西村課長に渡した。

「これ、は」
「沢本の、なんと言いますか謝罪文のようなものですわね。祖父はあのデスマスクと言われるものを作るのにとても苦労したようです。製作の苦労、というより、そこに至った事情に悩み抜いた、と。
 これをお読みになれば調査は済むと思いますし、またこちらで保管していた富樫監督のデスマスクもそちらに寄贈したく思います。
 もっと早くにそうしたかったのですが、祖父の考えでこれらは離して保管しておいた方がいい、と思っていたらしいのですが、このような貴重な物は我が家でも年々保管が難しく感じるのです。ですのでどうぞお持ち下さい」
「······はい、ではそのようにさせていただきます。お手間ですが、寄贈にかかる書類は追って郵送させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします」
「分かりましたわ。ああ、肩の荷が降りました。
 私も子がいない身ですので、沢本の姓を継ぐ兄と今後のことを考えなければいけない時期と思っていたのです。これも神の思し召しですわね」

 弓香さんの晴れ晴れとした笑顔に暇を告げて、私達はミニバンに乗り込む。ブロンズの富樫監督と彼の親友・沢本清彦の謝罪文を載せて。


 
 
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