映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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093 雑草の中で眠る⑤

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 今朝はたしかに鍵をかけて出たし、両隣の人も出勤前におかしなところはなく、帰宅した際もドアなど開いていなかったが、池上が来る一時間ほど前に隣が騒がしいなとは思ったらしい。だから私が空き地で寝ている時に侵入されたのかもしれなかった。

 もう一度指紋を提出して調書を取ってもらい、何か盗まれた物があれば、後からでも被害届を出すように言われて終わった。
 誰かに触られた寝具や食器は使いたくないが、全て買い替えるお金なんてない。幸いにもノートパソコンやテレビなどは全く手を付けられていなくて助かった。諦めて洗えるものは全て洗って、新居に持っていくことにした。



     ◇     ◇     ◇



 日々黙々と荷物を段ボールに詰めて、夜はビジネスホテルに泊まる。管理会社からはすぐに連絡が来て、駅は変わるが似たような部屋を同じ値段で用意してもらえ、また保険適用なのか引越し費用も管理会社持ちでということで、明後日に引っ越すことになった。ホテル代も辛かったので、このスピード対応は本当にありがたい。

 池上にはLINEで報告とお礼を言った。あの時、川真田氏に誘拐されかけていたこと。タイミング的に池上さんも仲間なのかと疑ってしまったこと。空き巣の通報をしてもらって助かったこと。引っ越すのでしばらく休むこと。それだけを簡潔に書いた。

 池上からは、

〈俺は好きな子を怖がらせることはしないよ〉

 とだけ返事が来た。

 どう返事をしていいか分からなくなり、〈了解〉のスタンプだけ押してしまったが、おちゃらけていても池上は頼りになる人だったことを改めて思い出し、惑わされてばかりの自分を恥じた。

 色々なことが起こり過ぎて、疲れているのかもしれない。

 あらかた食べ終えてしまった辻堂刑事のお菓子巾着を眺めながら、ビジネスホテルのベッドに寝転がったら、そのまま深く眠ってしまったようだ。

 夜更けに着信があったことにも気づかず、深く深く。

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