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089 雑草の中で眠る①

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 家には帰れない。
 池上はうちのコーポの場所を知っているのだ。

 川真田氏の目的は、八頭家に対し自分に有利なことを言わせたいと思ったのか。あるいは別の何かがあるのか。

 池上の方の目的は見えないが、彼が門木氏ならば同じなのかもしれない。あの時何かまずいものを私が見ているから口止めをしようとしているのだとしたら、殺されるかもしれない。

 友達の家に泊めてもらおうかと思ったが、そこに行くまでに追いつかれたり、万が一友達に迷惑がかかったらどうしようと悩んでしまい、足が竦む。
 家からは遠くに行かなければと自らを奮い立たせようとすると、近くで車のヘッドライトが光る。あの車が自分を拐おうとしている川真田氏の車かもしれない。池上がまだ追いかけて来ているかもしれない。捕まったらどんな目に遭うのだろう······。
 悪い方向にばかり考えて止まらなくなり、どこに行ったらいいのか分からずに涙が出てくる。

 ついに動けなくなった私は、『都有地』という看板の立つ空き地の茂みの中に身を潜めた。



     ◇     ◇     ◇



「日比野さん、日比野さん、起きて下さい」

 肩を揺すられて、はっと目を覚ます。
 私は空き地の伸び切った雑草に隠れている内に眠ってしまったらしい。図太さに顔を赤くすると、辻堂刑事が「緊張状態が続くと寝てしまうことがあるんですよ」と言ってくれた。

 あの後。どこにも行かれないと思った私は、東原警察署の辻堂刑事に連絡した。理由は分からないが川真田氏が家の近くに来ていて無理やり車に乗せられそうになったと。
 それで今は近くの空き地で雑草に埋もれている、と説明すると、笑ってすぐ迎えに行くからと力強く答えた辻堂刑事は、女性警官を伴って現れて私を保護してくれた。




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