89 / 131
089 雑草の中で眠る①
しおりを挟む
家には帰れない。
池上はうちのコーポの場所を知っているのだ。
川真田氏の目的は、八頭家に対し自分に有利なことを言わせたいと思ったのか。あるいは別の何かがあるのか。
池上の方の目的は見えないが、彼が門木氏ならば同じなのかもしれない。あの時何かまずいものを私が見ているから口止めをしようとしているのだとしたら、殺されるかもしれない。
友達の家に泊めてもらおうかと思ったが、そこに行くまでに追いつかれたり、万が一友達に迷惑がかかったらどうしようと悩んでしまい、足が竦む。
家からは遠くに行かなければと自らを奮い立たせようとすると、近くで車のヘッドライトが光る。あの車が自分を拐おうとしている川真田氏の車かもしれない。池上がまだ追いかけて来ているかもしれない。捕まったらどんな目に遭うのだろう······。
悪い方向にばかり考えて止まらなくなり、どこに行ったらいいのか分からずに涙が出てくる。
ついに動けなくなった私は、『都有地』という看板の立つ空き地の茂みの中に身を潜めた。
◇ ◇ ◇
「日比野さん、日比野さん、起きて下さい」
肩を揺すられて、はっと目を覚ます。
私は空き地の伸び切った雑草に隠れている内に眠ってしまったらしい。図太さに顔を赤くすると、辻堂刑事が「緊張状態が続くと寝てしまうことがあるんですよ」と言ってくれた。
あの後。どこにも行かれないと思った私は、東原警察署の辻堂刑事に連絡した。理由は分からないが川真田氏が家の近くに来ていて無理やり車に乗せられそうになったと。
それで今は近くの空き地で雑草に埋もれている、と説明すると、笑ってすぐ迎えに行くからと力強く答えた辻堂刑事は、女性警官を伴って現れて私を保護してくれた。
池上はうちのコーポの場所を知っているのだ。
川真田氏の目的は、八頭家に対し自分に有利なことを言わせたいと思ったのか。あるいは別の何かがあるのか。
池上の方の目的は見えないが、彼が門木氏ならば同じなのかもしれない。あの時何かまずいものを私が見ているから口止めをしようとしているのだとしたら、殺されるかもしれない。
友達の家に泊めてもらおうかと思ったが、そこに行くまでに追いつかれたり、万が一友達に迷惑がかかったらどうしようと悩んでしまい、足が竦む。
家からは遠くに行かなければと自らを奮い立たせようとすると、近くで車のヘッドライトが光る。あの車が自分を拐おうとしている川真田氏の車かもしれない。池上がまだ追いかけて来ているかもしれない。捕まったらどんな目に遭うのだろう······。
悪い方向にばかり考えて止まらなくなり、どこに行ったらいいのか分からずに涙が出てくる。
ついに動けなくなった私は、『都有地』という看板の立つ空き地の茂みの中に身を潜めた。
◇ ◇ ◇
「日比野さん、日比野さん、起きて下さい」
肩を揺すられて、はっと目を覚ます。
私は空き地の伸び切った雑草に隠れている内に眠ってしまったらしい。図太さに顔を赤くすると、辻堂刑事が「緊張状態が続くと寝てしまうことがあるんですよ」と言ってくれた。
あの後。どこにも行かれないと思った私は、東原警察署の辻堂刑事に連絡した。理由は分からないが川真田氏が家の近くに来ていて無理やり車に乗せられそうになったと。
それで今は近くの空き地で雑草に埋もれている、と説明すると、笑ってすぐ迎えに行くからと力強く答えた辻堂刑事は、女性警官を伴って現れて私を保護してくれた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
紙の本のカバーをめくりたい話
みぅら
ミステリー
紙の本のカバーをめくろうとしたら、見ず知らずの人に「その本、カバーをめくらない方がいいですよ」と制止されて、モヤモヤしながら本を読む話。
男性向けでも女性向けでもありません。
カテゴリにその他がなかったのでミステリーにしていますが、全然ミステリーではありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる