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056 美術セットは悪魔の祭壇①
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警察署に西村課長と池上が迎えに来てくれた。
私からカレーの返事がないと思っていたら、西村課長から連絡が来て、私が通用口近くで八頭女史の車に乗せられて行ったことを知り、慌てて探そうとしてくれたらしい。
夜遅いのに二人には本当に迷惑をかけて申し訳ない。
「日比野さん、大丈夫?」
「······はい」
「辻堂刑事、お世話になりました。我々はもう帰っても平気ですか? お話ならまた翌日以降に」
「そうですね。明日には八頭さんの事件のことと、比江島さんの事件のこともあわせてニュースに載ると思います。佐山さん宅で起きた事件でもありますから、そこはもう隠し切れるものではありませんからね。ただ、そろそろ佐山宅の検分が終わりますから、ご家族の許可があれば地下室にもお入りになれるようになると思いますよ」
「了解しました。では今日のところはこれで」
西村課長達とともに頭を下げて警察署を後にする。西村課長の家の車に乗るのは初めてだ。
「家まで送るよ。それとも一人になるのが不安だったらホテルに泊まるとか、僕の家でもいいよ」
「課長! 課長の家なんてダメですよ!」
「いや、たしかに家は小さい子多いからうるさいかもだけど、······そんなにダメな発言だった?」
池上はぷりぷりと怒っているが、こんな遅い時間に小さなお子さんの居るお宅にお邪魔なんて出来ない。
「課長、お気遣い感謝します。でも家で休みたいと思いますので、自宅へ送ってもらえませんか?」
「それならいいが、本当に無理はするなよ?」
「はい」
「今回は遅いから自宅まで送る。明日は出勤しなくていいから少し休みなさい」
「······すみません」
自宅のコーポ前で車が停まると、池上が真剣な眼差しを向けてきた。
「今日は大変だったね。気持ち悪いかもしれないけど、ここから日比野ちゃんが部屋に入るところを見てるから、もし怖く思ったらすぐ戻って来てね。やっぱりホテルとか人目のあるところに行きたくなるかもしれないから」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ、私」
「······あとこれ」
ガサガサとコンビニの袋を差し出された。
「俺のおすすめのお菓子とかパンとかなんだけど、小腹が空いたら食べて! 感想はいつでもいいよ」
二階の自宅ドアの前から何度も頭を下げて車が立ち去るのを見送って、私は家の鍵を締めてベッドに倒れ込んだ。悪夢を見るような気がして、眠る前に汗を取り去りたかったが、とにかく体を横たえたくてたまらなかった。
私からカレーの返事がないと思っていたら、西村課長から連絡が来て、私が通用口近くで八頭女史の車に乗せられて行ったことを知り、慌てて探そうとしてくれたらしい。
夜遅いのに二人には本当に迷惑をかけて申し訳ない。
「日比野さん、大丈夫?」
「······はい」
「辻堂刑事、お世話になりました。我々はもう帰っても平気ですか? お話ならまた翌日以降に」
「そうですね。明日には八頭さんの事件のことと、比江島さんの事件のこともあわせてニュースに載ると思います。佐山さん宅で起きた事件でもありますから、そこはもう隠し切れるものではありませんからね。ただ、そろそろ佐山宅の検分が終わりますから、ご家族の許可があれば地下室にもお入りになれるようになると思いますよ」
「了解しました。では今日のところはこれで」
西村課長達とともに頭を下げて警察署を後にする。西村課長の家の車に乗るのは初めてだ。
「家まで送るよ。それとも一人になるのが不安だったらホテルに泊まるとか、僕の家でもいいよ」
「課長! 課長の家なんてダメですよ!」
「いや、たしかに家は小さい子多いからうるさいかもだけど、······そんなにダメな発言だった?」
池上はぷりぷりと怒っているが、こんな遅い時間に小さなお子さんの居るお宅にお邪魔なんて出来ない。
「課長、お気遣い感謝します。でも家で休みたいと思いますので、自宅へ送ってもらえませんか?」
「それならいいが、本当に無理はするなよ?」
「はい」
「今回は遅いから自宅まで送る。明日は出勤しなくていいから少し休みなさい」
「······すみません」
自宅のコーポ前で車が停まると、池上が真剣な眼差しを向けてきた。
「今日は大変だったね。気持ち悪いかもしれないけど、ここから日比野ちゃんが部屋に入るところを見てるから、もし怖く思ったらすぐ戻って来てね。やっぱりホテルとか人目のあるところに行きたくなるかもしれないから」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ、私」
「······あとこれ」
ガサガサとコンビニの袋を差し出された。
「俺のおすすめのお菓子とかパンとかなんだけど、小腹が空いたら食べて! 感想はいつでもいいよ」
二階の自宅ドアの前から何度も頭を下げて車が立ち去るのを見送って、私は家の鍵を締めてベッドに倒れ込んだ。悪夢を見るような気がして、眠る前に汗を取り去りたかったが、とにかく体を横たえたくてたまらなかった。
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