映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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040 ヨシイ古書店の噂②

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 西村課長に報告をした後。報告漏れがないか気になったので、私は今日のことを備忘録としてメモに残しておこうと思った。

 井ノ口と牧田は友人、比江島が親しくしていたというヨシイ古書店店主、映画獣と言われる人々、比江島と八頭が恋人疑惑、クラファン詐欺のトラブル。他に何かあっただろうか。
 ぼんやりしていると終業時刻になってしまった。

「けいちゃん、何か考えごと?」
「あ、お疲れ様です。山森さん、今日は時短勤務じゃなかったんですね」

 山森は小さな子がいるため、いつもは早上がり制度を使っているのだ。だからこうして定刻まで一緒なのは珍しい。

「うん、今日は母の家にお泊まりの日だから、お迎えも頼んだの」
「そうでしたか。おばあちゃん家にお泊まりいいですね!」
「まあね。それでさ、こんな事あんまりないから夜ごはんとかどうかなって思って」
「えっと」

 しまった。今夜の上映作観たいんだよなあ。でもめったにないことだから断るのも申し訳ないし。
 一瞬迷いが出てしまったところで西村課長から声がかかる。

「日比野さん、ちょっといい?」
「あ、はい。······すみません、山森さん。呼ばれてしまって」
「ああ、気にしないで! 色々大変そうだし、手伝えることあったら言ってね! じゃあお疲れ様」
「はい。またの機会に。お疲れ様でした」

 若干後味悪い気持ちになりつつも、西村課長のデスクに向かう。

「ごめんね、山森さんの話に割り込んで。館長がちょっと聞きたいことがあるって」


 


「悪いね、終業時間後に」

 館長室に西村課長と入り、改めて今日のことを報告する。先程メモを作っていたのでスムーズに話すことができたと思う。

「その、比江島氏と八頭女史のことは我々も知らなかったな。あとヨシイ古書店のことね。なるほど」

 館長がわずかに困ったような顔を見せた気がしたので、少しばかりじっと見てしまっただろうか。あはは、と笑いながら話をしてくれた。

「そもそも今回のことは、秘密裏に佐山邸のお宝ゲット、みたいな話じゃない? それというのがね、実はあまり評判のよろしくなかった新興古書店で、最近やけに珍品レア物が多く出てくると話題になってるの、知ってる? 店主が変わったとも聞かないから、何か裏の手を使ってるんじゃないかって気になっていて。それもあったから佐山邸に早くに保全しに行かなきゃって思ったんだよね」
「もしかしてそれって」
「そう、ヨシイ古書店。映画関連ではすでに有名な伊織堂があるじゃない? 新興のわりにと言っては語弊があるけど、珍品レア物なんていうのはね、なかなか手に出来るものじゃないんだよ。長年の信頼と実績。培ったネットワーク。大口の買い取りなら尚の事、まずは有名どころに話が行くんだから」

 
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