映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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016 謎の地下室に第二のコレクター②

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 由紀子夫人に連絡をして救急車を呼ぶが、すでに事切れていることは明白だった。
 生命反応というものがないからだ。

「大丈夫ですか? 大丈夫ですかー!」

 田代主任が繰り返し声がけをして、倒れた男の肩を叩くが男は蒼白なまま身動き一つしない。

「田代、もういい。この方はもう······」
「う、はい。これだけ反応ないなら意味ないですよね」

 しん、とした中で、私達は奥の作業台にもたれかかるようにして力尽き倒れている男をどうしても見てしまう。
 男は60歳くらいだと思われる。歳は行っていてもまだまだ男盛りというようなダンディーな魅力がある顔だ。平均男性より大きな体で筋肉質、髪は白くなって来ているがしっかりと整えてある。下半身――ズボンのファスナーの辺りを中心に相当量の出血があったようで、周りの床にも血だまりが出来ている。
 
「課長。俺、ちょっと外を確認してきますね」
「ああ、救急車の誘導と······不審者がいないか見てきてくれ」
「俺も行きます。手分けしましょう」

 尾崎係長と田代主任が外に出て、空気が動く感じがある。そうすると血の臭いまで動いてグラグラする。

「日比野ちゃん、上にあがっていよう。俺達に出来ることはないよ」
「はい、すみません」

 池上に付き添われて応接間に移動させてもらう。西村課長はリビングに上がって館長と佐山氏の弁護士に連絡するようだ。

 どのくらいの時間が経ったか、救急車がサイレンを鳴らさずに到着した。その少し後にパトカーもやって来た。やはり事件性ありということで呼んだのだろうか。

「倒れている男性はこちらです。声がけや肩への接触をもって意識確認を行いましたが、反応はありません。また下腹部に多量の出血があります」

 救急隊員も確認をしたが、男に反応はなく、脈も取れなかったようで、あとは警察にお任せしますとして帰ってしまった。警察の方は救急隊員と何事かを話した後一度パトカーに戻って行ったので、死亡事故、事件として対応するために応援を呼んだのだろう。

「私達は国立映画資料館の研究員で、この家の佐山氏のご家族から遺品整理を依頼されやって来ました。時間がかかるということでご家族は帰宅しておりますが、先程連絡差し上げましたので、追ってこちらに戻られるでしょう」
「分かりました。この家の主は今日病院で亡くなられた佐山義之さんですよね? こんなに早く遺品整理をする必要があったのですか?」
「私どもが答えられることは限られておりますが、故人の希望と伺っております」
「とにかく、皆さんは応接間に移動していてもらえますか? ご遺体には肩以外にも触れられましたか?」
「いいえ」
「ではこの方をご存知ですか?」
「ええ。この方は、映画チラシ、パンフレット収集家の比江島直哉さんです」
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