映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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001 映画コレクター佐山氏亡くなる①

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 どんなジャンルでもそうなのかもしれないが、映画コレクターとして名を馳せる幾人かには、おいそれと人に言えないようなルートで物を収集している方がいる。らしい。

 そんな噂を聞いたのは、私――日比野恵ひびのめぐみがここ国立映画資料館で勤め出してからだ。

「えっと、それはこの本に載っている方もそうだと言いたいのですか?」

 私はこの頃、多くのダンボールに囲まれながら仕事をしている。1920~30年代頃の映画館で配布されていたチラシ『館プロ』と呼ばれる映画館が独自に作っていたパンフレットの前身のようなプログラムを地域ごとに分類し、さらに劇場ごとに分類、その後ここに掲載されている作品が本当に公開されていたのかを当時の映画雑誌を当たって調べているところだった。
 最後に作品タイトルに変更がなかったを確認してから中性紙に挟んで保存。併せてデータベースに入力していくという作業の中で、ふとこの間調べても分からなかった女優さんのブロマイドと類似した写真がチラシに載っていたため、他の資料からも確認が取れないか年代を頼りに図書室まで探しに来ていた。

 そんな私に、当館図書室の司書・井ノ口豊いのくちゆたかが、他にも参考になりそうな資料を探してくれながら、最前のような雑談を仕掛けてきたのだ。

「うーんどうだろう。彼は有名な映画資料コレクターの方だ。私家本でこの資料本を出されたけど、実際に価値の高いレア物はここには掲載しなかった、という話だからね」
「それは何故ですか?」
「決まってるじゃない、それを持っていることがバレたら何されるか分からないからだよ」

 何されるか分からない、というのを聞いて、私は口を噤んでしまった。

「色々とね、表立って口に出来ないルートで手に入れてるんじゃないかな」
「······犯罪行為とか?」
「いや、あくまで噂だよ。今、日本には五名の有名なコレクターの方々がいるけど、それぞれ収集ジャンルは違えど、お互いに本当のお宝は家族にも口にしていないらしいよ」

 私は高名コレクターさんの一人――佐山義之さやまよしゆき氏の映画資料本をパラパラと眺めた。佐山氏は当館の図書室にもよく来館されるが、大変穏やかな紳士だ。また佐山氏は紙資料をメインに収集されていて、私が現在調べている映画館チラシも館名ごとに注釈を入れながらいくつか掲載しておられ、この本にはいつも大変お世話になっている。
 チラシに記載された映画館はすでに無いものも多く、また調べる足がかりとなる地名もすでに統廃合で変更されていたりもするので、ようやく判明したものをデータベースに入力しながら、どの地域に何年頃映画館が多く存在したという参考資料を作ろうと思ったのだが軽く考えてはいけなかった。その道のりはなかなかに険しそうで、手を出したことを後悔しそうだ。
 
 それでも始めてしまったのだ。私は紙魚やチャタテムシ、シバンムシと戦いながら白い手袋を汚して作業を続けていた。

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