公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月

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「では何故あのようなが立つようなことを?」

確かにオルフェウスの言葉は嘘ではないと感じた。

だけど、それならリリーとのはなんなのか?

アリシアは自分のことを好きだと言うのにを肯定も否定もしないオルフェウスが理解できなかった。

それもそのはず、オルフェウス自身、できることなら否定してリリーと距離をとりたいのに、父王のいろいろが邪魔をしてそれができないだけなのだから。

オルフェウスだって仮に逆の立場だったら到底理解できない。

だからなおのこと言葉が出なかった。

アリシアは苦し気に黙りを決め込むオルフェウスの胸を押してその顔を見る。

ーーもっと早くにこうしてオルフェウス様のお顔をきちんと見るべきだったわ。

いつもは恥ずかしかったり感情的になっていたりで、長いことお互いに表情を見て会話をすることがなかった二人の視線が漸く絡んだ。

そしてアリシアは気付く。

オルフェウスには自分には言えない何らかの理由があってリリーとのことを否定しないのだと。

だけどそれがどういう理由かまでは分からないし、その理由が納得できるものなのかも分からない。

だけど何かあることだけは理解できた。

アリシアは苦痛に歪むオルフェウスの頬にそっと手を添えて

「分かりました。私には言えない何か、恐らく難しい理由がおありなのですね?それは理解しました。そしてオルフェウス様の言葉に嘘がないことも」

と言い、分からないなりにその気持ちに寄り添った。

もしかしたらそるはアリシアにとって悪いことかもしれないが、それでも好きな人が目の前で苦しそうにしているのをそのままにはしておけなかったのだ。

オルフェウスはそんなアリシアに一瞬泣きそうな顔をして、頬に添えられたその手に自分の手を重ねて思った。

ーー今すぐ理由が言えたら………と。

そんなオルフェウスの葛藤する姿と、それに寄り添おうとするアリシアの姿に、使用人は思わず縋るような、護衛騎士は複雑そうな視線をフェンデル公爵に投げた。

主役の二人は気付いていないが、その二人の姿を見ながら密かに葛藤しているように見えるフェンデル公爵の姿は、何かを知っていると確信させるには十分であった。
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